腎臓は、大量の血液を受け入れる非常に大切な臓器です。この腎臓の血管に起こる病気の代表選手が、腎臓の動脈がつまってしまうことで起こる腎梗塞です。ここでは、腎梗塞の主な症状とその治療法について解説します。

目次

梗塞ってどんな状態?

梗塞という言葉を聞いたことがあるでしょうか?梗塞とは血管に起こる異常のことで、何らかの要因で動脈が詰まってしまった状態のことをいいます。動脈が詰まってしまうと、その部分から先には栄養分や酸素が行き届かず臓器の一部が壊死してしまうことがあるのです。

梗塞は、動脈が他の血管と網の目状につながっておらず、それぞれの動脈が独立している場合に起こります。このような血管は全身の中でも腎臓・心臓・脳に顕著にみられ、他の臓器では血管が目詰まりすることで内臓が死んでしまうトラブルはあまり起こりません。

梗塞が起こると急激に組織が壊死してしまうので、脳や心臓や腎臓など、栄養分を大量に必要とする臓器は特に注意が必要なのです。

腎梗塞の原因は?

腎臓は、大動脈(心臓から直接出ている一番太い血管)のお腹の部分から直接栄養をもらっています。この腎臓の動脈は前4本、後ろ1本に枝分かれしながら腎臓に血液を送り込みます。腎臓内は、血液の流れによって5箇所の区分に分けられているのです。

この5箇所の区分は互いに血管のつながりをつくっていないため、一つの区分に血液の流れの不調が起こると、その先の部分の血流がすべて遮断されてしまいます。

腎臓の血管が詰まる原因として最も多いのは、心臓のトラブルによる血栓(血液の流れを遮断するもの)です。心房細動感染性心内膜炎という心臓の病気では、心臓の内部で細かい血の塊ができることがあります。この血の塊が血栓となって血管に目詰まりを起こすことにより、腎臓の組織が壊死を起こしてしまうのです。

腎臓の血管は、入り口部分ではある程度の太さがあります。しかし枝分かれした後には非常に細いため、血の塊や空気、脂肪分などが簡単に詰まってしまう構造をしています。このため、血栓によって腎梗塞が起こりやすいのです。

腎梗塞の症状と検査法

腎梗塞の代表的な症状は、突然に起こる脇腹や背中の激しい痛みです。腎臓は背中のちょうど真ん中くらいにあるため、梗塞が起こった途端、急に背中に激しい痛みが起こります。また、吐き気や嘔吐、血尿、発熱が起こることもあります。

腎梗塞が起こった場合には、血液検査・血圧検査・尿検査MRIなどを行います。血液検査では、白血球の数の増加や、細胞の壊死にともない血中にLDHやASTといった酵素が漏れ出てくる所見を確認し、尿検査によって顕微鏡レベルの微小な出血の有無を確認します。また、MRIでは血液の流れが途絶した部分だけ色が変化していることが確認できます。これらの結果をもとに、総合的に検査を行います。

腎梗塞とよく似た症状をきたす病気に、尿路結石があります。尿路結石も発症直後に背中に痛みが走り、吐き気が起こるのですが、エコーという超音波を使った検査によって簡単に区別がつきます。そのため、先にエコーで尿路結石かどうかを鑑別してから治療に移行します。

腎梗塞の治療は血栓を溶かすことが第一!

薬-写真

腎梗塞になった場合の治療としては、血栓を溶かすことが第一です。腎臓の血管に詰まった血栓を薬で溶かして血流を回復させる血栓溶解療法や、薬で血液をサラサラにして血栓を作らないようにする抗凝固療法といった治療がおこなわれます。

また、選択的動脈内線溶療法をおこなうこともあります。この治療では、まずカテーテルという細い中腔の管を血管内に挿入し、その管より造影剤を注射して血管を造影することにより血栓の位置を同定します。続いて血栓の近くにカテーテルの先端を持っていき、血栓溶解剤を直接血栓にふりかけることにより血流の再開を試みます。

このように、薬によって血栓を溶かし、その後の血液の流れを再開させる治療を保存的治療といいます。保存的治療を行っても腎梗塞が改善に向かわない場合、外科的な治療を行う場合があります。

外科的な治療では血行再建術によって血栓を除去するか、すでに壊死してしまっている場合はその部分を切除し、腎臓が再度機能を取り戻せるように形を直します。腎臓の壊死した部分は色がくっきりと変化しているので、この変化した色の部分だけを切除することで、腎臓に壊死した部分を残さず治療を終えることができるのです。

まとめ

腎梗塞は、発症からいかに短時間で治療を終えるかが鍵となる病気です。時間の経過とともに腎臓の組織は壊死を始め、やがて血流が再開しても元には戻らなくなってしまうのです。手術をできるだけ避け、元の生活に早く戻るためにも、突然背中に激しい痛みが襲ってきた時には無理をせずすぐに病院に行くように心がけましょう。