2003年頃、ドリエルという睡眠導入薬が登場して人気になりました。普通の睡眠薬と比べて安全に使えるという点が特に好評だったということもありますが、それだけ睡眠に悩んでいる方が多かったともいえます。

今回はOTC、つまり薬局で買える睡眠薬について、漢方も交えながら紹介したいと思います。

目次

花粉症薬系の睡眠導入薬

OTCで購入できる睡眠薬は、睡眠導入薬と言われます。普通の睡眠薬とは効き方がまったくことなるためです。

さて、多くのOTC睡眠導入薬は、薬学領域では抗ヒスタミン薬と呼ばれるものです。ヒスタミンという物質については、多少耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

ヒスタミンは体のあちこちにあり、脳の中にもあります。もちろんいい働きもあるのですが、多くの方にとっては悩みの種である、アレルギー症状を起こします。そこで薬の開発者達はヒスタミンを抑える薬、抗ヒスタミン薬を作りだしました。アレロックやアレグラ、ポララミンなどの花粉症薬には、春になるとお世話になっている方もいるでしょう。

ところで、春眠暁を覚えずと言えども、花粉症の薬を飲んだ後、強烈な眠気に襲われたことはないでしょうか? これは別に春だからというわけではなく、抗ヒスタミン薬の副作用になります。先ほど、ヒスタミンは脳の中にも存在すると書きました。脳の中でヒスタミンは、どちらかというと覚醒、活動の方向に作用します。つまり、ヒスタミンの働きを抑えてしまえば、催眠・鎮静の方向に動くのです。

花粉症の薬としては、眠くなるというのはマズイことでした。でも、眠れない人にとっては、この副作用が好都合になります。ハルシオンやレンドルミンといったベンゾジアゼピン系の薬よりも安全に眠気を得ることができるからです。

ほとんどの睡眠導入薬はこの抗ヒスタミン薬です。寝る30分前くらいに飲み、その後は静かに過ごします。このとき副作用として喉の渇きがでるので、枕元にペットボトルの水など、水分を用意しておくことをお勧めします。また、飲んだ後は車の運転などは絶対に避けてください。

なお、花粉症に使われる抗ヒスタミン薬は、最近眠気がほとんどでない物も登場しています。脳に薬が届かないようにして、脳内のヒスタミンを抑えることを避けているのです。

ポイントは酸棗仁、漢方薬

漢方

次は漢方についてです。催眠作用のある漢方薬はいろいろ紹介されますが、チェックするのは一つだけで十分です。それは酸棗仁(さんそうにん)が入っているかどうかです。酸棗仁が入っていればその漢方薬は催眠作用があります。逆に言えば、酸棗仁が入っていなければ、ただ心を落ち着けるだけのタイプの漢方になります。

酸棗仁は、サネブトナツメと呼ばれるナツメの仁という部分です。仁は種の中の部分にあり、中華料理の定番である杏仁豆腐にはアンズの仁が使われています。

この酸棗仁だけは、昔からある本草書にもきちんと催眠作用があると記録されています。単純に酸棗仁湯というものもありますし、比較的よく使われる漢方には加味帰脾湯(かみきひとう)というものがあります。これは酸棗仁に加えて、他の生薬もブレンドして不安や緊張を和らげる効果があります。重鎮作用(心を落ち着ける作用)などが加わってより効果的に睡眠につながることもありますが、他の生薬が入っている方が催眠作用が強くなるとは言い切れません。

なお、酸棗仁は甘草(かんぞう)と相互作用を起こすことがあります。漢方を好む方の場合、必ず薬剤師などに、併用が問題ないかを確認するようにしてください。

まとめ

OTCの睡眠薬は、日本人の国民病ともいえる睡眠障害に対する強い味方です。自分の睡眠に合ったお薬を見つけて、質の良い睡眠を得るようにしましょう。

なお、今回説明した抗ヒスタミン系と酸棗仁の睡眠薬には依存性はありません。安心して利用してください。