手は毎日様々な刺激物に触れています。健康な皮膚は外からの刺激に対しても防御する機能がありますが、そのバリア機能が弱まったときや、アレルギー物質に触れたときなどに、手湿疹と呼ばれる炎症を起こすことがあります。放っておくと重症化する可能性があるので、早めの対処が大切です。今回は手の湿疹に対する治療や日常生活で行える対処法について説明します。

目次

手の湿疹を治療せずに放っておくと…

手湿疹の主な症状は、皮膚のかゆみ、赤み、ぶつぶつ、水ぶくれ、などですが、ただの手荒れと思って、治療をしないでいると悪化する恐れがあります。次のような症状がある場合には、早めに皮膚科を受診しましょう。

  • かゆくて夜に眠れなくなる
  • 症状の範囲が広がる
  • 細菌感染して化膿する
  • 物に触れるだけで手が痛い
  • 症状が治まっても跡が残ってしまう

皮膚科で行われる検査

手湿疹が疑われるようであれば、すぐに皮膚科を受診して専門医に相談をしましょう。日常的に手の観察をして、何をしているときに症状が酷くなったかを伝えます。

原因となる物質(金属、化粧品、ゴム製品、化学薬品など)が思い当たる場合は検査が可能です。検査は、パッチテストによってかぶれの原因物質を調べます。炎症の原因になる可能性がある物質を溶液や軟膏のかたちでパッチテスト専用のシールにしみこませて、2日程度皮膚に貼ります。皮膚の赤みや水ぶくれが誘発されるか確認をします。

医療機関で行う治療

飲み薬

外用剤

ステロイド外用剤

湿疹の炎症を抑えるためにステロイド外用剤が処方されます。完治させるには原因となる刺激を除去する必要があるためステロイド外用剤は手荒れを完治させる薬ではありませんが、症状を治すのに必要な対症療法です。

保湿剤

乾燥した皮膚の表面を保護して、肌の状態を回復させるために保湿剤が処方されます。1日にこまめに何回も塗りなおすことが治療の基本となります。

内服薬

抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤

かゆみを止めるためと飲み続けていくことでかゆみを出しにくくするために処方されます。

日常生活での注意

うなぎ

手湿疹の治療は長期にわたる可能性があります。薬での治療を続けながら、手湿疹を悪化させないように、毎日の生活の中で工夫できることを始めましょう。

刺激を避ける

身体の皮脂はお湯で溶けだして乾燥を招くので、水やお湯を使いすぎないことを意識して生活しましょう。綿の手袋を常に着けていると、手の皮膚を保護することができます。綿100%の生地は肌の組成に近いので、肌にも低刺激です。

水仕事のときは、ゴム手袋や使い捨てのビニール手袋の下に薄手の綿手袋をつけると効果が高まります。ゴムやポリエチレンなどが肌に直接触れるとかぶれの原因となることがあるので、避けた方が無難です。

また、紫外線も手の刺激になりやすいので、特に3月からの紫外線が多くなる時期は、外出の際にUV加工をした手袋や日傘を使いましょう。

掻かない

かゆみがあるとついつい掻いてしまいますよね。しかし掻いてしまうとさらにかゆみが増して、湿疹も悪化することが分かっています。

かゆいときは冷やして、かゆみを紛らわせましょう。また体が温まって血流がよくなるとかゆみが増すので、かゆみがあるときは飲酒や運動、サウナ、長風呂などは避けるようにしましょう。

保湿をする

手の皮膚が乾燥してひび割れているなど症状が強いときは、病院から処方された保湿剤をしっかりと使います。ひび割れは手の皮膚が傷だらけになっている状態です。保湿剤を1日5~6回以上、こまめに塗るのが理想的です。手あらい、水仕事の度に塗りなおしましょう。

また、水仕事の後だけでなく前にもよく擦り込んでおくと、皮膚に保護膜ができるので刺激から守ってくれます。保湿剤がべとつく場合は、手にすりこんで5分程度おいて馴染んだら、ティッシュなどで余分な軟膏をふき取るようにしましょう。

皮膚の再生を促す

炎症を起こしている皮膚には、外側からの治療と併せて内側からのケアも欠かせません。肌のために良い栄養素を積極的に取り皮膚の再生を促しましょう。

1.「ビタミンA」で肌の潤いを保つ

レバー、うなぎ、モロヘイヤ、しそなどに多く含まれます。

2.「αリノレン酸」で炎症の起こりにくい身体にする

えごま、くるみ、なたね油、大豆などに多く含まれます。

3.「DHA」で身体の中の新陳代謝を円滑に行う

イワシ、サバなどの青魚、ウナギなどに多く含まれます。

健康な身体と肌を作るためには、食生活全体の見直しも必要です。肉類よりも魚類を選び、野菜がメインの和食メニューに切り替えてみましょう。

ドレッシングたっぷりのサラダを野菜のおひたしに、ステーキを焼き魚や煮魚に、お肉の好きな人は網焼きや蒸し鶏など和風の調理法にするなどして、毎日の食事を工夫すると、炎症に負けない肌が作られ、身体を健やかに保つのに役立ちます。

さらに、肌は夜の睡眠中に再生されるので、質の良い睡眠を心がけることも大切です。

まとめ

手湿疹は放置していると、重症化する可能性があり強いかゆみや痛みが広がって毎日の生活が困難になることもあります。ただの手荒れと思って油断せず、悪化する前に皮膚科で治療をしてもらいましょう。どのようなときに手がかゆくなるのか観察をして、原因物質が分かれば刺激となっているものを避け、保湿剤をしっかり使い、手を少しずつ良い状態にしていくことが大切です。同時に炎症に負けない皮膚を作るために、肌を作る栄養を意識した食事をして質の良い睡眠を取るようにしましょう。