「円形脱毛症は命に関わる病気ではないが、人生が変わってしまう病気である」アメリカの円形脱毛症の患者の会が発行したパンフレットの表紙に書かれている文章です。

自分の頭に円形脱毛症があるのを発見したとき、衝撃を受けて今後の人間関係や生活に影響があるのではないかと心配するかもしれません。ショックで不安な気持ちでいるのであれば、一人で抱え込まないで早めに医師に相談しましょう。今回は、円形脱毛症の治療法についてご説明します。

目次

円形脱毛症は治る?

脱毛の箇所が少ない場合は、治療しなくても自然に治ることが多くあります。しかし毛が広く抜けている場合ほど、脱毛状態が長引く傾向にあるようです。

また、頭の全部の髪の毛が抜けてしまったり、頭だけではなく身体の毛も抜けている場合は、数年以上続くこともあります。

しかしたとえ何年脱毛が続いても、毛を作る細胞は残っているので、治療が効けば毛が生え戻ってくると考えられています。

円形脱毛症の治療方法とは?

待合室

脱毛の原因を「毛を作る組織(毛包組織)を攻撃してしまうリンパ球の異常な働き」と考えて、治療を行います。脱毛の状態や経過を考慮して、医師と本人で話し合いながらどんな治療をするのか選択します。

外用療法

副腎皮質ホルモン(ステロイド)

リンパ球の異常な働きをおさえるために、免疫機能を抑える働きをするステロイド剤を治療に使います。脱毛を発症している患部に直接塗ります。

塩化カルプロニウム

脱毛部分の血流を増加して発毛を促します。副作用によって一時的な発汗作用、かゆみがみられることもあります。

局所療法

ステロイドの局所注射

狭い範囲でも経過が長引くようなら、局所注射としてステロイド剤を使います。
痛みを伴ったり注射した部分がへこんでしまうという副作用があります。

局所免疫療法

毛包周辺で攻撃をしているリンパ球を抑えるために別のリンパ球を集める方法です。かぶれを起こす特殊な薬品を脱毛箇所に塗って、弱いかぶれの皮膚炎を繰り返し起こし、円形脱毛を引き起こすリンパ球を減らし、発毛を促進させます。

使う薬品は健康保険では認められていない研究試薬のため、専門医とよく相談して行う治療です。

雪状炭酸圧抵療法

ドライアイスを脱毛が起きている箇所に当てて軽く冷却して、脱毛範囲の縮小を目指します。

光線療法

リンパ球が毛包を攻撃する働きを抑えるために、紫外線を照射して自己免疫に影響を与えて発毛を促します。

内服療法

ステロイド療法

脱毛の症状が急に拡大する場合は、ステロイドを内服して治療を行います。効果がある半面、長期間内服をすると、糖尿病や消化器症状などの副作用が起きるので十分に注意しながら行います。成長障害を起こす恐れがあるので、子どもには使えません

グリチルリチン

炎症を抑える働きや免疫を調節する働きがあります。

セファランチン

アレルギー反応を抑制したり、血流を促進させる働きがあります。

日常生活の注意点は?

治療と並行して、自宅では発毛を促すために健やかな身体作りを行いましょう。

栄養バランスを考えて食事を採る

私たちの身体は食べたものから作られます。食生活の乱れは症状改善の遅れにつながるので、健やかな髪を生やすために、バランスの取れた食事をすることが大切です。

ストレスを溜めない

円形脱毛症はリンパ球の異常な働きが原因ですが、ストレスがきっかけになることもあります。生活環境や人間関係を一度見直してみましょう。日常的にストレスを感じていることがあれば、なるべく溜めこまないで解消していきましょう。

ストレスを緩和する方法として、一番手軽なことは、入浴です。お湯の温度は40度ほどにして、10~15分ゆっくりつかりましょう。お好みの入浴剤などを使えば、よりリラックスすることができます。また、ジョギングや水泳などの軽い運動もストレス解消には効果的です。

ストレス解消については、以前の記事「ストレスたまっていませんか?ストレスの3つのサインと解消法」「メンタルヘルスケアが必要な7つの症状と8つの対策」もご覧ください。

精神面のケアが大切

サポート

円形脱毛症は、一般的に正確な知識が広まっていないため、誤解や偏見のために心ない言葉を向けられることもあるかもしれません。特に若くして発症すると、外見の変化に驚き精神的にダメージを受けることも多いでしょう。

円形脱毛症は命には別条がない病気ですが、患っている人の抱えるストレスが多いのが特色です。心の苦しみと生活の質を改善させるために、周りの人の理解が必要な病気です。

まとめ

円形脱毛症は、患部の症状によって外用療法、局所療法、内服療法などを組み合わせて治療を行います。バランスの良い食事を取ったり、ストレスを溜めないなど、毎日の生活の中で工夫できることも行いましょう。

円形脱毛症は患者の抱えるストレスが多いので、周りの人は病気について理解を深めることが大切です。