AGA(androgenetic alopecia)とは男性型脱毛症のことで日本に1000万人以上の患者さんがいると言われています。
治療は基本的には早期からの内服もしくは外用薬の内科的治療が有効ですが進行しきった場合には植毛などの外科的治療もおこなわれます。
詳細は前回のコラム、「フィナステリドにミノキシジル…AGAの治療薬と手術法を医師が説明!」で説明しています。
今回は自宅でできるAGA対策についてということなので、薬や手術など病院でおこなうもの以外について書こうと思います。
シャンプーや食事などについて世の中には多くの商品や情報があふれています。
一つ一つを検証するのは無理なのである程度ひとくくりにして説明していこうと思います。
シャンプー

よく頭皮の脂が毛根に詰まっているような画像を見せて、脂を取り除くことでAGAが改善するような話があります。
頭皮をきれいに保つことに反対はしませんし、AGAに対して悪い影響があるとも思いません。
しかしAGAを改善させたり進行を食い止めるほどの効果が得られるかと聞かれれば明確な医学的根拠は見当たりません。
例外的にはケトコナゾールを含んだシャンプーがAGAに対して有効であったという報告はあります。
ケトコナゾールは真菌(カビのこと)を抑える作用を持つ抗真菌薬です。
AGAにカビはあまり関係ありませんがケトコナゾールには抗炎症作用や抗アンドロゲン(男性ホルモン)作用があり、それがAGAに対して効果を発揮すると考えられています。
ケトコナゾール(もしくは同じ抗真菌薬のミコナゾール)を含むシャンプーも発売されているようですので、シャンプー選びの参考にしてみても良いかもしれません。
市販のシャンプーはAGAに対して有効かわかりませんが病院に行かなくても手に入れられるという点では便利だと思います。
食事
まず結論から言ってしまうとそれだけでAGAを改善させるという食品はありません。
しかし理論的に考えると有効と思われるものもありますので紹介します。
タンパク質
髪はタンパク質から作られるので肉や魚、納豆、卵などは適量摂取することは有効かもしれません。
個人的にはタンパク質がいいのならプロテインを摂取するのが一番だと思います。ただし、筋トレ後のプロテイン摂取は間違いなく筋肉を太くしますが、AGAにおいて髪を太くするという論文は見受けられません。
亜鉛
亜鉛は細胞分裂に携わる物質です。毛根は細胞分裂が活発な部位なので理論的には亜鉛不足はAGAに悪影響を及ぼしそうです。
牡蠣、ゴマ、ワカメ、昆布などに亜鉛は多く含まれています。しかしながら、ワカメや牡蠣だけを食べて発毛することはないようです。
ビタミン類
ビタミンCは抗酸化作用があります。パプリカ、ピーマン、レモン、キウイフルーツなどはビタミンCを多く含んでいます。
その他、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンEなども頭皮環境を整えるのに理論上は有効と言われていますが、実際にどの程度の効果があるかは不明です。
タバコ
タバコはAGAに対して悪影響を及ぼします。
以前の記事でも触れましたが、タバコがAGAのリスクを高める原因としてはいくつか考えられています。
頭皮の血流が下がる、直接の毒性、ホルモン産生バランスを崩す、酸化ストレス(体の中が酸化反応側に傾き、細胞などが障害される)などが挙げられます。
禁煙は自宅にいても取り組むことが可能ですので、気になる方はさっそく禁煙してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は薬などではなく食事やシャンプーなど自宅でできるAGA対策を考えてみました。
いろいろな情報があふれている中で何を信用して良いかわからなくなっている方も多いと思います。
できるだけ医学的根拠のあるものを考えてみましたが、残念ながら食事、シャンプーなどによる頭皮ケアだけでAGAが劇的に改善することはなさそうです。
禁煙は病院に行かずにできる数すくないAGA対策だと思いますが、サプリメントや食事療法、シャンプーなどだけでAGAの進行を食い止めるのは難しいと思います。
AGAはやはりフィナステリドやミノキシジルなどの薬による治療が基本になると思います。
しかし、バランスのとれた食生活や頭皮環境を清潔に保つことはAGA治療に対してネガティブに働くことはありません。
また、健康的な生活を心がけることはAGAのみならず他の病気を予防することにもつながります。
いずれにしろ、AGAが進行しすぎると薬による治療も効き目が薄くなりますので自宅でのAGA対策にこだわりすぎることなく早めに医師に相談することをお勧めします。