ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)とは、何らかの原因で下肢の静脈に形成された血栓下肢静脈血栓)が血流に乗って肺に到達し、肺に詰まる(肺塞栓)を引き起こす病気です。この病気の症状やメカニズムについては「飛行機以外でも要注意!エコノミークラス症候群ってどんな病気?」をご参照ください。

エコノミークラス症候群は、飛行機に乗っているときに起こりやすいことで知られていますが、実は飛行機以外の日常生活の中にも原因となるものが潜んでいます。また、災害時等に車中泊をされている方も注意が必要な病気といえます。今回はそのエコノミークラス症候群の予防方法をご紹介します。

目次

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下肢静脈血栓ができる原因

エコノミークラス症候群は、下肢の静脈にできた血栓が肺の血管に詰まり肺塞栓を起こす病気です。ですから、この病気の予防には下肢静脈血栓を作らないようにすることが第一となります。

高血圧症や糖尿病脂質異常症(高脂血症)などの病気は、動脈硬化をはじめ、あらゆる血管を劣化させます。そのため、血流障害や血栓を起こしやすくなります。また、妊娠や出産、または経口避妊薬の服用などがもたらすホルモンの変化によっても、血栓ができやすくなります。

こうした全身的な身体の状態に加え、長時間足を動かさないことや、足の血流が滞ることによって血栓ができやすくなるのです。

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下肢静脈血栓を予防する方法

静脈は、心臓に戻る血液が流れる血管です。立位や座位などの姿勢では下肢は心臓よりも低い位置にあるため、心臓に血液を送るためにはふくらはぎの筋肉が充分に収縮し、ポンプの働きをする必要があります。足は第二の心臓と呼ばれるのはこうした働きを表したもので、この静脈の働きを静脈還流と言います。

また静脈の内腔には末梢から心臓への一方弁である静脈弁があり、心臓への静脈還流をサポートしています。

このような静脈の働きを正常にすることが血栓の予防になります。

1.ふくらはぎの運動を行う

下肢静脈血栓の予防には、長時間の立位や座位によって血流が滞ることを避けることが必要です。

立位の場合は、その場で足踏みをしたり、つま先立ち運動を数回行うだけでも血流を改善する効果があります。座位の場合も、足首や膝関節をできるだけ動かすようにしましょう。

さらに日頃から、ふくらはぎのポンプ作用がしっかりと機能するようにウォーキングなどで筋肉を維持しておくとよいでしょう。

カーフレイズ

ふくらはぎの筋肉トレーニングとして代表的なものですが、血流の改善や筋肉の疲労回復にも効果があります。

階段や段差を利用し、足先を乗せ、かかとを宙に浮かせて体重の加重でかかとをゆっくり下し、しばらくその状態を維持し、ゆっくりをかかとを上げることを繰り返します。スピードをつけて回数を多くすると腱を痛めることもあるため、注意が必要です。

2.弾性ソックスを着用する

下肢の浮腫み防止として使用される弾性ソックスやストッキングは、適度な圧力を加えることで静脈還流をサポートしています。

比較的圧力の強い医療用のものや、膝下までのソックスタイプから腰までのストッキングタイプなど種類も様々ありますが、ねじれやよれなどがあると適切に圧が加わらず、血流を阻害する原因にもなります。必ずサイズが合ったものを正しく着用しましょう。

3.マッサージを行う

下肢のマッサージ器具は家庭用としても多くの種類があります。パッドを貼る低周波治療器や、ふくらはぎや足裏をローラーでマッサージするもの、下肢全体やふくらはぎをエアポンプで加圧するものなどがあり、いずれも下肢の血流改善に効果があるとされています。

こうした器具がない時には、手で揉みほぐすだけでも効果的です。しかし、既に血栓ができている場合は、血栓が血管から剥がれやすくなるため、逆に危険な行為になります。注意が必要です。

4.水分補給を心掛ける

エコノミークラス症候群の原因の一つは、極度の乾燥がもたらす脱水です。トイレへ行くことを回避しようと水分摂取を控えてしまうことが原因の一つで、飛行機の中や車中泊の時に特に起こりやすいといえます。

しかし、上記以外でも同じような状況が起こりえます。デスクワークなど身体を動かさない場合は喉の渇きを感じにくくなりがちです。冷暖房が効いた室内では水分補給を心掛けてください。また、アルコールは利尿作用がありますので、控え目にするか、水分を一緒に摂る方がよいでしょう。

5.冷えを予防する

膝下や足先の冷えは下肢の血流が悪くなっているサインです。ひざ掛けの使用や服装を調整し、足元の保温に注意しましょう。

6.禁煙

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ血流を阻害するほか、血管の炎症を引き起こすことからも血栓を作りやすくします。

また、たばこによるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が合併していると、肺塞栓が発症した際に治療がますます困難になります。健康のためには禁煙をしましょう。

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まとめ

飛行機だけではなく日常生活の中でも起こりうるエコノミークラス症候群(ロングフライト血栓症)。その予防には下肢静脈血栓を作らないようにすることが必要です。今回ご紹介した運動マッサージのほか、糖尿病や高血圧症などの血管を劣化させる病気や、血栓ができやすくなる妊娠・出産や喫煙、経口避妊薬の服用など全身の健康管理においても注意が必要です

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