薬を飲んだら、発疹が出た…こんな話を聞いたことありませんか?「薬疹」は、どんな薬でも、誰にでも起こり得る症状です。本記事では、薬疹の症状や特徴について解説します。もしもの時に備えて、知っておいてください。

目次

薬疹とは?

薬を服用(内服、注射など)すると、本来の治療効果以外の望ましくない作用が表れることがあり、これを副作用といいます。薬疹は、薬の副作用によって生じる発疹のことです。病院で処方される医療用医薬品や薬局で購入する市販薬だけでなく、漢方薬や健康食品でも生じることがあります。

薬疹は多くの場合、身体がその薬に対してアレルギー反応を起こすようになってしまっている場合に生じます。そのため、初めて服用する薬で薬疹が生じることはありません。多くの場合、一定期間にわたって使用し続けた薬によって起こります。

薬を飲んでからどのくらいで起こる?

薬の服用を始めてしばらくすると、身体の中にその物質に対する免疫が生じます。この免疫が働くまでには1~2週間程かかります。薬疹は、免疫が働くようになって初めて生じるのです。ただし後述する薬剤性過敏症症候群では、薬の服用を始めて1か月~1年後に初めて薬疹が生じることもあります。

前述の通り、一度も服用したことのない薬によってすぐに薬疹が起こることはありません。薬を服用する患者さんの多くは何らかの病気、特にウイルスなどに感染した状態ですので、服用後すぐに発疹が出た場合は、ウイルス感染などが原因として疑われます。

薬疹の特徴や、診断の方法は?

手をかく男性

薬疹でみられる発疹は、多種多様です。特定の部位に発症するケースもあれば、全身に発疹が起こるケースもあります。「このような発疹が見られたら薬疹である」というような特徴は、比較的少ないため、薬疹の診断はとても難しいのです。

薬疹を疑って受診した場合、以下のようなことを尋ねられます。

  • どんな薬をいつから服用していたか
  • 発疹はいつ出たか
  • 今まで、薬を飲んで発疹が出たことはあるか

その上で、パッチテスト、スクラッチテスト、皮内テスト内服誘発試験などが行われます。パッチテストでは、薄めた薬剤を背中に貼り付け、剥がした後に症状が出るかを確認します。皮内テストは、テスト用のアレルゲンを真皮内に注射し、その部位の反応を見る検査です。内服誘発試験では、10分の1~1000分の1程度の量の薬を再度内服し、原因となった薬を調べます。

これらの検査は、皮疹が全て消退した後で、医師の観察のもと、慎重に行います。内服試験は入院のうえ行いますが、原因となった薬を再び服用しなければならないため、患者さんにとっては不安の大きい検査かもしれません。薬疹の原因となった薬を調べておくことは、その後絶対にその薬を内服しないようにするために大切なことではありますが、全身症状がさらに重篤化する懸念もあるため、総合的な判断が必要です。

「薬疹を起こさない薬」はないため、予防は困難

薬疹を起こさない薬は、残念ながら存在しません。稀ではありますが、ビタミン剤や漢方薬でも薬疹を起こすことがあるのです。何度も服用している薬であっても、今後もずっと薬疹を起こさないという保証はありません。

また、一度薬疹を起こした場合、その薬に対してのアレルギー反応は一生続くと考えてください。薬疹を起こした薬の名前を把握し、薬を処方されるときには必ずそれを提示することでその薬を避けてもらう必要があります。

薬疹の種類:重症化すると、命に関わることも

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とくに重症の薬疹とされているものに、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TENがあります。どちらも、全身の皮膚や粘膜に発疹や水疱があらわれる病気です。また、近年はウイルスが関与する薬剤性過敏症症候群という病態も明らかになっています。

上記の重症薬疹は、原因となった薬の服用を止めるだけでは回復せず、どんどん悪化する場合があります。早急な対応が必要です。

中毒性表皮壊死症(TEN)スティーブンスジョンソン症候群(SJS)

どちらの病気でも、熱や頭痛、咽頭痛、身体の痛み、粘膜の発疹、眼球充血といった症状がでます。その後、平らで赤い発疹が顔および胴体に生じ、全身に不規則に広がります。

表皮の壊死がおこり、皮膚が剥れてしまった面積により、どちらの病気と診断されるかが変わります。

  • 10%以下:スティーブンス・ジョンソン症候群
  • 10~30:中毒性表皮壊死症とスティーブンス・ジョンソン症候群のオーバーラップ
  • 30%以上:中毒性表皮壊死症

粘膜に水疱が生じると、部位によって様々な障害が起こります。例えば口の粘膜に水疱が生じると、食事を取りづらくなります。目の粘膜に症状が出た場合、目がうまく開けられなくなったり、角膜に傷がついたりすることがあります。

中毒性表皮壊死症で皮膚が剥がれる症状は、重症の火傷と似ています。広い範囲で皮膚が損傷を受けると、臓器不全や感染症が起こりやすくなり、最悪の場合は死に至るのです。一刻も早い治療を必要とします。

薬剤性過敏症症候群

薬剤性過敏症症候群は、薬だけでなくウイルスが関係する病気です。主に抗けいれん薬などが原因となって起こります。

原因となる薬を服用した後、すぐには発症しません。多くの場合、発症までには2~6週間を要します。長いものでは、服用から数年以上経って発症することもあります。また、服用中止後も何週間にも渡って悪化することがあります。

38℃以上の高熱全身の赤い斑点全身のリンパ節の腫れ(首や脇の下など)、血液検査値の異常などが生じます。

「光線過敏症」も薬疹?

光線過敏症は、日光にあたった時に皮膚が赤くなったりかゆくなったりする症状です。この光線過敏症のうち、薬が原因で起こる薬剤性光線過敏症は薬疹の一種と考えます。

外用剤の場合は患部に、内服の場合は全身の日光にあたった部位に症状が表れます。ニューキノロン系抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬などが原因として多くみられます。

薬疹を疑ったら、どうすればいい?

薬疹は、症状の軽いうちに薬疹を疑い、原因薬剤をできるだけ早くみつけて中止することが最も重要です。場合によっては重症化することがあり、命にかかわる場合もあります。

薬疹の診断と治療は、皮膚科が専門としています。薬を服用しているときに皮膚に異常がみられたら、速やかに皮膚科を受診してください。「おくすり手帳」などを持っていくと、スムーズに診察を受けることができます。

まとめ

薬疹は、100%予防することはできません。しかし、もしも症状が出た場合、発疹で終わることもあれば、まれに死に至るケースもあります。

すべての薬は、人体にとっては異物になります。「薬疹が出ない薬はない」という意識を持ち、自分の使った薬についてはしっかりと記録するようにしてください。また、服用中に異常がみられた場合には、すぐに皮膚科を受診しましょう。