水疱瘡(みずぼうそう)は、医学用語では水痘といわれ、赤ちゃんやお子さんがかかりやすい病気です。水疱瘡にかかるとどんな症状が起こるのでしょうか。いざという時に慌てないように、知識を持っておきましょう。

目次

水疱瘡とはどんな病気?

水疱瘡は、水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる病気です。感染力が強く、空気感染、くしゃみやで飛んだ唾液などから感染する飛沫感染や、皮膚が触れ合うことによってウイルスがうつる接触感染を経て発症します。

この中でも他の感染症と異なり重要なのは、空気感染をすることです。そのため、水疱瘡に罹っている方と同じ空間にいるだけで感染が拡大してしまう可能性があります。潜伏期間(ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間)は2週間程度です。一度かかると身体の中にウイルスに対抗する免疫ができるので、基本的には二度同じウイルスにかからないようになります。しかし、後述するように生涯ウイルスが体内に潜むことになり、折に触れて症状が再燃することがあります。

水痘帯状疱疹ウイルスにはどんな特徴がある?

地球には、約160種のヘルペスウイルスがあります。そのうち、ヒトに感染するものは8種類に分類されています。水痘帯状疱疹ウイルスはこのうちの一つです。初めて感染したときは水疱瘡を発症しますが、水疱瘡が治癒した後もウイルスは体の中の神経節に潜みます。加齢や疲れ、ストレスなどによってウイルスが再度活動を始めると、今度は水疱瘡ではなく帯状疱疹として発症することがあります。

  • 初感染の後に、身体の中で潜伏する
  • 再活性化することがある
  • 感染力が強く、周囲の人へ感染が拡大しやすい
  • 妊婦さんが感染した場合、胎児に感染する場合がある
  • 免疫が正常に働かないときは、重症化することがある

水疱瘡はどんなメカニズムで起こる?

赤ちゃんの手

口や鼻から入ってきた水痘帯状疱疹ウイルスは、のどの周りの粘膜やリンパ節(リンパ管の所々にある節で、リンパ液の中に入ってくる異物をろ過する役割がある)で増えて、リンパ球(身体に入った異物を攻撃する免疫細胞の一つ)に感染します。その後、ウイルスは感染したリンパ球と共に血液を介して全身に広がり、全身性の発疹となって現れるのです。

どんな症状が出る?

  • 熱が出る
  • 下記の発疹が混在してみられる
    •   ・皮膚の表面が赤くなる(紅斑)
    •   ・水疱(水ぶくれ)ができる
    •   ・膿疱(液体を含んだ水ぶくれ)ができる
    •   ・痂皮(かさぶた)ができる
  • のどが痛くなる
  • 全身がだるくなる

水疱瘡の初期では、だるさや37度程度の微熱といった症状が生じます。1~2日すると虫さされのような赤くて小さい発疹が頭や顔・おなかなどに現れ、半日ほどで全身にみられるようになります。半日から2日程度で全身に広がった発疹は、強いかゆみの伴う水ぶくれ(水疱)に変わり、1~2週間ほどでかさぶたになってはがれおちて治ります。上にも書きましたが、水疱瘡では、これらの紅斑・水疱・かさぶたなどが混在するのが特徴です。

皮疹のみで症状が治まることが多い水疱瘡ですが、まれに水痘脳炎ライ症候群という合併症が起こることがあります。これらは命に関わるので、けいれんが見られたり、意識がなくなったりしたらすぐに小児科を受診しましょう。

水疱瘡にかかりやすい年齢は?

厚生労働省によると、日本では、年間100万人程度が水疱瘡にかかっています。子供が多くかかり、水痘の90%の症例が9歳以下であるといわれています。成人でもたまに水疱瘡にかかりますが、高熱が出たり、肺炎や脳炎を起こしたりするなど重症化するリスクが高いといわれています。

妊婦さんは要注意!

特に注意が必要なのは、妊娠している女性です。妊娠中の女性が水疱瘡に初めて感染した場合は特に、胎児に影響が出る可能性があります。お腹の中の赤ちゃんに重い障害が生じるケースや、赤ちゃんが生後すぐに水疱瘡を発症して死に至るケースもあるため、妊娠中の方は水疱瘡に対して特に注意を配る必要があります。また、妊娠を考えていらっしゃる場合にはワクチンを接種したり感染歴をチェックしたりといった方法を講じることも大切です。

水ぼうそうはワクチンで予防できる!

診察を受ける子ども

水疱瘡に有効なワクチンは、乾燥弱毒生水痘ワクチンといわれるものです。水痘帯状疱疹ウイルスの病原性を弱めたものを接種します。このワクチンを1回接種することによって重症の水疱瘡を予防でき、2回の接種によって軽症も含めた発症を予防できると考えられています。1回のみの接種だと、15~20%ほどの方は水疱瘡を発症するといいますが(阪大微生物研究会より)、それでも多くの場合はより軽症で済むようになります。

なお、水疱瘡の予防接種は大人になってからも受けることができます。一度もワクチンを受けたことがなかったり、水疱瘡にかかったことがなかったりする方は、お近くの医療機関に相談してみてください。ただし、妊娠の可能性がある方は接種できないことにご注意ください(接種前1ヶ月・接種後2ヶ月間の避妊が必要となります)。

水疱瘡の予防接種はいつ受ける?

水疱瘡のワクチンは2014年10月から、費用が公費でまかなわれる「定期接種」になりました。水疱瘡の定期接種は2回行われ、1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までのお子さんを対象としています。

2回目の接種は、1回目の接種後3か月以上経ってから行います(標準では、1回目接種後、半年から1年まで経過した時期に行います)。該当する年齢でまだ水疱瘡にかかったことがない赤ちゃんの場合、お近くの医療機関で予防接種を受けておくようにしましょう。その際は、母子手帳を忘れずに持っていってくださいね。

まとめ

水疱瘡は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染して起こる病気です。子供が多くかかり、かゆみの伴う発疹ができて、水ぶくれになりかさぶたとなって治癒します。一部お子さんでは重症化することもありますし、妊婦さんが罹患した場合には赤ちゃんにも悪影響が及ぶこともあり得ます。そのためワクチンによる予防は非常に重要な意味を持っています。ワクチンを接種することで発症をおさえることができますが、もしも感染してしまった場合の対処法は、次の記事をご参照ください。