麻疹に感染すると、発熱と全身の発疹が生じ、普通の風邪とは違うつらい症状が一定の期間続いてしまいます。また、麻疹には合併症もあり、ケースによっては命の危険もあるため、可能ならば感染を予防したい感染症です。小さいお子さんから大人まで感染する恐れがある麻疹の予防法について解説します。

麻疹がどのような病気かについては「麻疹(はしか)ってどんな病気?原因となるウイルスや症状を解説します」を、近年の流行状況などについては「感染の広がる麻疹(はしか)~忍び寄る輸入感染症、その予防や合併症」ご覧ください。

目次

麻疹の治療と予防

薬瓶

麻疹の治療では、諸症状を緩和するための対症療法が主となります。麻疹自体を治療する薬はいまだに存在しません。

感染症対策といえば手洗い・うがい、マスク着用を基本としますが、麻疹ウイルスの直径は100~250nm(ナノメートル)ととても小さいものであり、空気中に漂うウイルスを吸い込むことでも感染しますので、手洗い・うがい、マスク着用を行ったからといって予防ができるわけではありません。

麻疹の唯一の予防法は、ワクチン接種によって麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことです。

麻疹の予防接種は、予防接種法に基づいて定期的に行われています。(国立感染症研究所による日本における予防接種スケジュール表)。

麻疹の予防接種は「2回」が基本

麻疹のワクチンは、2回接種が世界標準です。2回の接種を行うことで、1回目の接種で免疫を獲得できなかった人にも確実に免疫が獲得されるしくみです。

日本では2006年4月から、MR(麻疹・風疹混合)ワクチンの2回の接種を行う制度が設けられています。1回目が1歳以上2歳未満、2回目が小学校入学前1年の幼児に接種することになっています。

この制度が開始されるまで、定期接種は1回のワクチン接種のみでした。現在も麻疹にかかったことがなく、受けた予防接種が1回目のみである場合、2回目のワクチン接種について医師にご相談ください。特に以下の方は要注意です。

  • 医療従事者や学校関係者・保育福祉関係者など、麻疹にかかる可能性がある方
  • 麻疹にかかることで周りへの影響が大きい方
  • 麻疹の流行国(途上国など)に渡航する予定のある方

また、麻疹にかかったこともなく、一度もワクチンを受けたことない方も、ワクチン接種についてかかりつけ医に相談すると良いでしょう。

麻疹ワクチンは安全?副反応は?

ワクチンには、生きた細菌やウイルスの毒性を弱めた生ワクチンと、細菌やウイルスの病原性をなくした不活化ワクチンの2種類があります。このうち、麻疹ワクチンは生ワクチンです。

生ワクチンは、接種することによってその病気にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)をつけようとするものです。つまり、接種すると弱毒化された麻疹ウイルスが身体の中で徐々に増えます。そのため、接種後5~14日ほど経つと、自然に罹患した時と同じような症状が軽く出ることがあります。

1回目の接種後に多くみられるのが発熱で、約13%の人にみられます(厚生労働省より)。その他に、発疹蕁麻疹発熱に伴うけいれんなどがありますが、まれです。すべて一過性のものです。また、2回目の接種では副反応が起こる可能性は極めて低いです。稀な副反応として、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されています(厚生労働省より)。

重度のアレルギー(既往にアナフィラキシー反応がある人など)のある人は、ワクチンに含まれる成分によるアレルギー反応が起こる可能性もあるので医師に相談してください。

予防接種をしていても麻疹になる?!

男の子

特殊な麻疹の例として、修飾麻疹というものがあります。

過去のワクチン接種の効果が弱まった場合など、麻疹に対する免疫は持っているけれども不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合、通常の麻疹とは異なる軽い症状になることがあります。例えば潜伏期が延長する、高熱が出ない、発熱期間が短いなどです。このような場合を修飾麻疹と呼んでいます。

修飾麻疹は、感染力は弱いものの、周囲の人への感染源になるので注意が必要です。通常合併症は少なく、経過も短いため、精密検査を行わないと風疹など他の発疹性疾患と誤診されることもあります。高熱が出ない場合もありますので、学校への登校や会社への出勤のタイミングについては医師の指示に従いましょう。

まとめ

今まで麻疹にかかったことが確実にある場合は、免疫をもっていると考えられることから、予防接種を受ける必要はありません。しかし、麻疹かどうか明らかでない場合は、感染予防に2回接種が必要となるため、医師に相談しましょう。

また、自然に麻疹にかかることでも免疫はできますが、その症状はつらく、合併症により生命の危険の可能性もあります。そして、何より気づかないうちに周囲の人にも麻疹の感染を拡大させてしまいます。

予防接種の徹底により、麻疹の撲滅に成功している国もあります。麻疹はワクチンにより撲滅できる感染症ですので、一人一人がしっかりと知識を持って予防接種を受け、麻疹を予防していきましょう。