眼の不調で眼科にかかり、「結膜炎ですね」といわれた方は多いと思います。ただ大まかなカテゴリーでは「結膜炎」でも、原因は実はいろいろあります。タイプによって症状の特徴が違う場合があります。今回は結膜炎の種類とそれぞれの症状について紹介します。

目次

結膜炎とは?なぜ炎症がおきるの?

体に細菌やウイルスなど、ヒトに害をなす異物が入ってきたときに、退治したり排出したりするため、人間にはいろいろと免疫機能があります。

例えば風邪をひいたとき。喉が痛い、鼻が詰まって鼻水がとまらない、熱が出る。これらは体内の白血球が異物と戦い、排出するときにでる症状です。

結膜は白目とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜です。眼を開けている間は常に外部とさらされ、涙で濡れています。

眼に異物が入ってきたときに、まずは涙が異物を洗い流し、涙に入っている酵素が、病原体を殺したり、毒素を弱めたりする役目をし、結膜に多く存在する粘液が異物にへばり付いて涙で洗い流そうとします。病原体はその関門をかいくぐって、更に奥に入り込もうとします。

結膜には免疫担当細胞はたくさん存在しています。従って、結膜はすぐに炎症を起こして、異物を殺し排出しようとします。反対に角膜は免疫担当細胞が少ないため防御に特化しています。よほどの傷がなければ角膜に感染は起こしませんが、一旦炎症を起こすと結膜よりも強い反応を起こし、重篤化しやすい傾向があります。

結膜炎は結膜が何らかの異物と戦い、炎症を起こしている状態です。

結膜炎の症状と種類

代表的な症状は充血や目やに、かゆみ、異物感などです。

結膜炎は大きく感染性結膜炎非感染性結膜炎の2つに、さらに原因によってより細かく分類できます。感染性結膜炎の中からウイルス性結膜炎、クラミジア結膜炎細菌性結膜炎非感染性結膜炎ではアレルギー性結膜炎について紹介します。

ウイルス性結膜炎

通常、ウイルスのほうが細菌よりも炎症が強く出ます。強い充血・目やに・異物感のほか、ずっと涙っぽくウルウルする、瞼が腫れるなどの症状もあります。感染力が強く、家庭内、職場内、保育園、学校、合宿など人が集まるところで集団発生することがあります。

ウイルスによって様々なタイプの結膜炎があります。主なものを列挙します。

流行性角結膜炎

流行しやすいため、「はやり目」とも呼ばれます。最初はごろごろ感や痛痒さですが、日に日に酷くなるのが特徴的です。目やにが大量に増えるため、朝にはくっついた目やにが乾いて眼が開かなかったり、日中は涙混じりで少し糸を引く目やにがだらだら流れたりします。耳の前のリンパ節が腫れることも特徴です。

潜伏期間が1-2週間あり、片眼ずつ時間差で症状が出ることが珍しくありません。

感染しているヒトの涙や、目やにがついた指で自分の眼を擦などにウイルスが自分の眼に入ると感染します。

多くはアデノウイルス8型が原因で起こりますが、アデノウイルスは型が多く存在し、型によっては非常に炎症が強くでるもの、弱くでるものがあります。また、2000年頃には今まで見つかっていなかった新しい型(53.54.56型)が見つかり、今の流行性角結膜炎の30%程度が新しい型のアデノウイルスという報告もあります。

通常は2週間程度で治り、視力にも影響がないですが、炎症が強いと免疫反応が働き、一旦結膜の炎症が治まったあとに、角膜に濁りを生じ視力が下がることがあります。

一度はやり目にかかると、免疫反応が起こるため、免疫が維持されている間は再度同じ型には感染しません。しかし、前述したように、アデノウイルスには多くの型が存在するため、違う型のアデノウイルスだとまた感染することがあります。

咽頭結膜熱

夏に多く、プールやタオル共有でうつることが多いため、別名「プール熱」といい、流行性角結膜炎とは異なるアデノウイルス3型が主な原因で起こります。主に子供に発症しやすい傾向があります。高熱が5日程度続きます。頭痛、喉の痛みとともに、目やに、涙っぽさ、眼が痛い、などの訴えがでます。

潜伏期間は5-7日程度。厚労省のデータでは、昨年、一昨年と増加傾向がみられます。以前は夏がほとんどでしたが、ここ10年間は冬にも流行が確認されています。稀に肺炎などを起こす7型に感染すると、症状が酷くなります。

急性出血性結膜炎

エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが原因で起こります。潜伏期が1日と非常に短いだけで無く感染力が強いので、ひとたび起こると急激に感染者は増えますし、誰から移ったかすぐにわかってしまうこともあります。充血や目やに、眼の痛みのほか、白目に出血が起こることが多いのでこの名があります。発生は流行性角結膜炎に比べると稀です。

通常は1週間程度で治りますが、まれに、半年から一年後に手や足に力が入らない、などの症状を来すことがあるため、変化があればすぐに内科受診が必要です。最近では2002年に小規模の流行が起こった後は、あまり大量発生していないようです。

クラミジア結膜炎

はやり目といわれて、3-4週間たっても治らないときは別の感染症かもしれません。

どんどん下の白目がぼこぼこしてきて、充血は治らず、べたっとした目やにが続く場合は、クラミジア結膜炎かもしれません。細胞内で増える微生物であり、性行為感染症として現れることがあります。内服や抗菌薬、眼軟膏などを使用し、通常治癒まで2ヶ月程度かかります。

以前は、感染した性器を触った手で、眼を不用意に触ることによって感染するといわれていましたが、喉の奥にクラミジアが感染している人とキスをしてもクラミジアに感染することがあるため、涙液、唾液などが眼に入ると感染しやすいといえます。性的活動が旺盛な時期では、どのようなタイミングでクラミジアに感染し、いつクラミジア感染症を発症してもおかしくないと考えるべきです。

もし排尿痛や膿がでる、などの症状があり、眼もゴロゴロする、どんどんひどくなる、などの症状があれば、パートナーと一緒に泌尿器科と眼科に受診してください。女性はクラミジアに感染しても、症状が軽く気付かないことが多いですが、クラミジアによる性器の炎症のため不妊になったり、出産の時に産道感染で子供にうつったりするので、将来の家族のためにも、しっかりと診断、治療を受けてください。

細菌性結膜炎

細菌性結膜炎は、普段から私達の周りにいる身近な細菌(黄色ブドウ球菌や肺炎球菌・インフルエンザ菌)が原因で起こります。基本、他の人には感染しませんが、新生児はまだ免疫が発達しておらず涙も少ないので、お母さんが感染していると、出産時に感染しやすくなります。

細菌性結膜炎の場合は、黄色、稀に緑色の目やにが多くみられます。充血、ゴロゴロ感、瞼の腫れなどが起こります。

アレルギー性結膜炎

アレルギー反応を起こす原因物質が結膜に付着することで起こる結膜炎です。他人に感染することはありません(非感染性)。花粉やハウスダスト・ダニなどが原因となることが多いですが、最近はpm2.5や排気ガスが付着することで、更にアレルギー反応が強く、長期間にわたって発症する傾向がみられます。また、コンタクトレンズの汚れや装用時間の多さに起因するアレルギーも増えています。

特徴的な症状はかゆみや異物感、ねばねばした透明の目やにがでます。特にかゆみに関しては擦ると更に痒くなり、白目が腫れてぶよぶよになる、などがあります。

花粉に対するアレルギーでは朝起きたときや外出時、ハウスダストやダニなどでは家の中、職場などで酷くなりやすく、コンタクトレンズでは外した後特に痒さを感じる傾向があります。

まとめ

結膜炎はごくありふれた病気ですが、原因によって治療法も経過も異なります。放っておけば治るだろうと軽く考えていると、症状がひどくなったり、他人にうつしてしまったりすることも考えられます。結膜炎が疑われる症状が表れた場合は早めに眼科を受診するようにしましょう。