普段、意思とは無関係に自分の手足が動き出す、ひきつけを起こすことはありますか?あるいは、皆さんの周りに突然ひきつけを経験した方はいらっしゃいますか?ひきつけは突然起こりますが、短時間で治まることもあるため、病院へ行かずに放っておいてしまう方も少なくありません。しかし、ひきつけを引き起こす原因には恐ろしい病気が隠されていることがあります。そこで、この記事では「ひきつけ」の裏に隠された病気を説明します。

目次

ひきつけとは

「ひきつけ」とは、自分の意思と無関係に、突然手や足が突っ張り、全身を硬直させる状態のことを指します。脳の神経細胞が異常に興奮した場合や、脳になんらかの異常がある場合などに、ひきつけが起こると考えられています。そして、最もひきつけを起こしやすい時期は脳が未発達な乳幼児期であり、これもひきつけの原因が脳にあることを示唆しています。

ひきつけの原因となる疾患

レントゲン

ひきつけは38度以上の高熱や脱水といった日常生活に起因することもありますが、何らかの病気に起因することもあります。そこで、ここからはひきつけの原因となる5つの疾患について説明します。

なお、ひきつけはけいれん(痙攣)と同じ意味で使われることが多いですが、用語としては別物です。小児のけいれんを一般的に「ひきつけ」と呼ぶことが多く、臨床での説明では「けいれん」と説明されることが多いでしょう。

1.熱性けいれん

熱が上がり始めるときや、体温が39~40℃に達するときに起こるひきつけを熱性けいれんと言います。乳幼児は脳が未熟であるため、発熱が誘因刺激となることがあります。両手足が突っ張り、全身の筋肉が硬直して、手足がガクガクと震え、顔が青くなり、白目をむくこともあります。しかし、この発作は数十秒から5分程度で治まります。また、生後6カ月から6歳までに発症することがほとんどで、年齢とともに起こらなくなることが多いです。

熱性けいれんについて詳しくは、「子供に見られる熱性けいれんってどんな症状?」をご参照ください。

2.片側顔面けいれん

片側顔面けいれんは一方の目の周り、頬や口もとなど、顔面の一部がけいれんする疾患です。目の下側から始まることが多く、進行すると一定時間目をつぶってしまったり、顔が引きつって歪んでしまったりすることもあります。顔の動きをつかさどる顔面神経が、主に動脈硬化によって蛇行した脳の血管によって圧迫されることで起こると考えられています。

3.てんかん

てんかんは繰り返しひきつけを起こす疾患です。脳の神経細胞が何らかの刺激で興奮することによって起こります。突然、意識がなくなって、全身の筋肉が硬直して棒のようになり、白目をむいて体が大きく震えたり、口をもごもごさせたりすることがあります。このような大発作は数分で治まり、その後、睡眠状態になります。この他、急に動作が止まり、数秒間、ボーッとするような発作や、うなずくような動きをくり返す発作が起こる場合もあります。

4.脳炎

脳炎は脳細胞に、はしかやインフルエンザなどのウイルスや細菌が感染したり、寄生虫などが寄生したりすることで起こります。その症状はひきつけや手足の麻痺、錯乱や妄想などの精神症状を起こし、進行すると昏睡に陥ることもあります。脳炎はひきつけの原因にもなる髄膜炎よりも症状が重いことに加え、髄膜炎を合併することも少なくありません。

5.髄膜炎

病院

髄膜炎は脳と脊髄を包む脳脊髄という膜に細菌やウイルス、真菌などが感染して起こる疾患です。髄膜炎は脳にかかる圧力が増すため、急に高熱を発し、強い頭痛や嘔吐、首の筋が張るなどの症状のほか、悪化するとひきつけや意識障害、昏睡を起こすことがあります。また、先ほども述べたように、髄膜炎は脳炎を合併することがあるため、髄膜炎だけでなく、脳炎の治療も並行して行う必要があります

まとめ

ひきつけの原因は一つではなく、またここで紹介した原因が全てではありません。ただ一ついえることは、「ひきつけの原因には髄膜炎や脳炎などがあり、適切な治療をしなければ、最後は昏睡状態に陥る病気が隠れている恐れがある」ということです。もし自分や自分の周りの人にひきつけが見られたら、できるだけ早く病院を受診してください。