「もやもや病」という病名を聞いたことがありますか?脳の毛細血管が異常に発達してしまう病気で、インパクトのある名前なので聞き覚えのある方もいらっしゃるかもしれませんね。

今回は、この「もやもや病」という病気について解説します。記事内の図解は、クリックまたはタップで拡大してご覧ください。

目次

もやもや病とは

どんな病気?

もやもや病のメカニズム-図解
もやもや病は、日本で発見された原因不明の脳の病気です。厚生労働省により、難病に指定されています。以前は「ウィリス動脈輪閉塞症」という名称で呼ばれていましたが、現在は「もやもや病」が正式な疾患名です。

人間の頭の中には、大脳の大部分に血液を送る左右の内頸動脈と、小脳・脳幹・大脳の後方部に血液を送る左右の脳底動脈の4本の太い血管があり、この4本の血管が脳に栄養を送っています。これらの血管は、脳の底部で繋がり、互いに輪を作っています(これをウィリス動脈輪と呼びます)。

もやもや病は、このウィリス動脈輪が閉塞していく病気です。ウィリス動脈輪が閉塞すると、脳の血流が悪くなります(脳虚血)。すると不足した血液を補おうとして、脳の底部にある毛細血管が発達し、本来は存在しないはずの血管網を作ります。脳の血管撮影を行った時、この血管網がもやもやと立ちのぼる煙のように見えるため「もやもや病」という名前で呼ばれるのです。

起こりやすい人はいるの?

もやもや病が起こりやすい人_図解もやもや病はアジア系の人々に多い病気です。アメリカやヨーロッパと比較すると、アジアでは10倍ほどの頻度でみられます(鹿児島大学大学院より)。日本での患者数も多く、平成25年の調査では1万6086人の患者さんがいるとされています(難病情報センターより)。

男女比では女性の方が多いです。年齢別にみると10歳以下の子供で最も多く、次いで30~40代の成人に多くみられます。

もやもや病の症状って?

 

もやもや病の発症の仕方にはいくつかのタイプがありますが、代表的なのは虚血型出血型の2種類です。子供の場合は虚血型がほとんどですが、成人の場合は虚血型と出血型が同じくらいの頻度でみられます

この他、自覚症状を伴わないケースも増加しています。

虚血型

脳の血の巡りが悪くなって起こります。典型的な症状としては、以下のようなものがあります(脳虚血発作)。

  • 脱力発作(身体に力が入らなくなる)
  • 片麻痺(身体の左右どちらかに麻痺がおこる)
  • 不随意運動(自分の意思と関係なく身体が動く)
  • けいれん

これらの症状は特に子供に多くみられ、熱いものを冷まそうとフーフーする・管楽器を吹く・激しく泣くなど、大きな息を短時間に繰り返したときに生じます(過呼吸)。症状が数分でおさまる一過性脳虚血発作と、症状が残る脳梗塞とがあります。

出血型

もやもや病で異常発達した血管網はとても脆弱なので、脳出血を起こしやすいです。くも膜下出血などを起こす場合もあります。自覚症状としては、突然の頭痛・意識障害・片麻痺などがあります。

もやもや病を疑ったら

上記の症状に当てはまり、「自分はもやもや病かもしれない」と思ったら、脳神経外科を受診して検査を受けます。

突然起こる出血はCTで、太い動脈の詰まりともやもやとした血管部分はMRIで撮影し、画像診断を行います。また、治療方針を決めるために脳血管撮影(脳の血管を直接レントゲンで撮影する)などを行う場合もあります。

もやもや病の治療の流れ

頭痛や軽いけいれんなどがみられる場合および出血の急性期では、薬による治療を行います。血圧や脳圧を調整するための薬が処方されます。

脳虚血発作に対しては、手術による治療を行うことが多いです。手術には直接血行再建術間接血行再建術の2種類と、その両方を行う複合血行再建術があります。

  • 直接血行再建術:血の巡りが悪い頭蓋内血管と、十分に血が巡っている頭蓋外血管を直接縫い合わせます(バイパスする)。成人の場合、関節血行再建術では効果があまり見られないため、こちらの手術を実施します。
  • 間接血行再建術:十分に血が巡っている頭蓋外の組織を血の巡りが悪い脳の表面と接触させ、新しい血管が自然に生えるのを待つ方法です。主に小児に対して行われます。新たな血管のネットワークができるまで、数週間から数ヶ月を要します。

一過性脳虚血発作で発症し、適切な手術を受けた場合のもやもや病の予後は良好です。

しかし、一旦大きな脳梗塞や脳出血が生じてしまうと、症状の進行を防ぐことはできても、起こってしまった症状を改善させることはできません。

さいごに

「もやもや病」という名前は知っていても、どのような病気なのか正しく理解していた方は少ないのではないのでしょうか。本記事が、もやもや病について知るための一助となっていれば幸いです。

もやもや病については未だに分かっていないことが多く、原因や治療法についての研究が進められています。診断された場合、早めに適切な治療を受けることが大切です。もしも気になる症状がある場合、早めに医師に相談してくださいね。