どこかが痛くなったり熱が出たり…、人間の身体の不調を示すサインはいろいろなところにあらわれます。尿もその一つで、色や量など目で見てわかるものから、病院で検査をすることでわかるものまで、健康状態を判断するうえでとても貴重なものです。

たとえば尿が泡立つという症状は何かの病気のサインなのでしょうか?尿と健康状態の関係を詳しく解説します。

目次

尿の成分と尿の役割

血液が腎臓でろ過、再吸収され、老廃物や不要物を含む液体となったものが尿です。尿は腎臓で生成され、尿管から膀胱を経て尿道口から体外に排出されます。

尿の成分のほとんど(98%)はで、このほかに尿素や尿酸、ナトリウムやカリウムなどが含まれています。身体に必要なタンパク質や糖、血球などの成分は正常の尿中には排出されない、または排出されてもごく微量です。

1日の尿量の正常範囲は500~2000mlです。コーヒーや緑茶などの利尿作用の高い飲み物を多く飲むと尿量は増え、夏場や激しい運動時に多量の汗をかいたときは尿量が少なくなることがあります。尿は身体で不要になった老廃物を排出する重要な役割があり、また尿を排出することによって体に必要な水分量を調節しています。

尿と健康状態の関連

小便用トイレ

平均的な1日の尿の回数は5~6回と言われていますが、個人差もあり、習慣的に多い人や少ない人もいます。

回数が少なくても1回量が多く、1日の平均尿量を満たしている場合は問題はありませんが、量も回数も少ない場合は何らかの異常が生じている場合があります。

腎臓そのものの働きが低下している病気のほか、心臓の病気や感染症、脱水などによって腎臓が充分に機能しなくなり、尿量が少なくなります。一方、尿量が多い場合には、身体の水分保持機能が低下して起こる尿崩症の可能性があり、ホルモンや脳神経の異常に関連した病気です。また糖尿病の場合も、血糖値が高くなると口が乾き、これを補うために水分を多量に摂取するようになり、この結果尿量が増える症状が表れます。

また、腎臓の機能が低下した場合には尿濃縮力障害が起こります。通常、腎臓は体内の水分量によって尿を濃くしたり薄くしたりと調整を行っているのですが、腎臓の働きが低下してくるとこのはたらきがうまくいかなくなってしまい、夜中に起きてトイレに行くこと(夜間排尿)が増える傾向があります。これは、目立った症状が出にくい慢性腎臓病などにおいて、サインとなり得る症状です。

正常な尿はにごりのない薄黄色です。激しい運動をしたり多量に汗をかいたりした場合は、尿が濃縮されて濃い黄色や茶色っぽくなることがあります。

また食べ物や薬の影響も受けやすく、ビタミン剤の服用時には濃い黄色となったり、ブルーベリーなどの赤い色素を持つ食品を多く摂取したときは、尿が赤みを帯びたりすることがあります。

病気によっても尿の色が変化する場合があり、尿管や膀胱で出血が起こっている場合は、赤みを帯びた色となったり、肝臓に障害がある場合は濃い褐色~茶色の尿になったりします。さらに、透明性がなく濁っている場合膀胱炎などの尿路感染症の疑いがあります。

尿が泡立つ

正常な尿の場合でも、尿が出る勢いが強くトイレにたまる水や尿に空気が多く含まれ、尿が泡立つことがあります。この場合は時間がたつと泡は消えてなくなり、健康上も問題はありません。

一方、時間が経ってもなかなか消えない泡の場合は、尿にタンパク質が出ている可能性があります。一時的には激しい運動や、過労発熱時などに腎臓のろ過機能が低下し、タンパク質がろ過されて尿中に排出されることがありますが、慢性的に腎臓機能が低下して起こる場合もあります。

臭い

尿はもともくさいもの、と思いがちですが、臭いも健康状態と関連があります。

尿の臭いの原因は尿の中の尿素が空気中の細菌に反応してアンモニアに分解されることによるものです。排尿直後から強いアンモニア臭があるときは細菌感染を起こしている場合があります。また、糖尿病で血糖値が高くなるとアセトン体という物質が尿に排出され、これによって甘酸っぱい臭いを感じることがあります。

こうした病気による変化のほか、ニンニクやニラなどの臭いの強いものを食べた後や、運動や疲労により尿が濃縮されている場合は、尿の臭いが強くなりますが、これらは異常ではありません。

ウソ?ホント?尿にまつわる迷信、言い伝え

人の健康にとって重要なサインとなる尿には、いろいろな言い伝えがあります。これらは本当なのでしょうか?

尿に蟻がよってくるのは糖尿病のサイン?

糖尿病はとても古くからある病気で、古代の医学書にも「糖尿病患者の尿が密のように甘く、蟻が好んでよってくる」と書かれているそうです。糖尿病と名がついた由来もこのことにあるようで、この説はあながちウソではないようです。

しかし、現在糖尿病の人の尿に必ず蟻がよってくるものでもなく、糖尿病は尿に糖が出るだけでなく、血液中の糖が高くなることで引き起こされる動脈硬化などの合併症が問題となる病気です。

尿に蟻がよって来ないから糖尿病ではないとはいえません

ミミズに尿をかけるとおチンチンが腫れる?

子供のころによく言われませんでしたか?

ミミズは外敵に対して毒ガスを吐くため、低い位置から排尿する子供の陰茎の皮膚に炎症が起こるのでは?という説もありますが、根拠はなくどうやら単なる迷信のようです。ミミズがいるような場所で泥遊びした子供が、汚れた手で陰茎を触ることによって細菌感染をおこすという説が正しいようです。

ミミズや泥を直接触っていなくても幼児期には自分の陰茎を触って遊ぶ傾向が強くなります。「ミミズに尿をかけるとおチンチンが腫れる」は、遊んだあとはきちんと手を洗いましょう、という教えですね。

蜂に刺されたときは尿をかけると良い?

これも昔言われたことはありませんか? アンモニアが蜂の毒を中和すると考えられており、アンモニアを含む尿でもその効果があるというものです。

しかし、蜂の毒は蜂の種類によっても様々ですが、蜂に刺された時の痛みの原因はタンパク質であり、アンモニアで中和する効果はありません。また、人の尿にアンモニアが含まれるという考えも間違いで、人の尿に含まれているのはアンモニアが分解されてできた尿素です。

蜂に刺された時の応急処置として尿をかけるのは、無意味などころか、雑菌による感染を起こす可能性がありますので絶対にやめましょう。

まとめ

尿は身体の状態と密接に関係しており、様々なサインを出しています。

しかし一つ一つの異常だけでは病気と判断することは難しく、身体のほかの症状や血液検査、画像検査などによって診断されます。気になる症状がある場合は、一度医療機関を受診し、検査を受けてみましょう。

また、身体の異常にいちはやく気付くために欠かせないのが、定期的な健康診断の受診です。最近健康診断を受けていないという方は、この機会に人間ドックを予約してみてはいかがでしょうか(人間ドックのここカラダに遷移します)。