血液検査は健康状態を知るうえで欠かせない検査のひとつです。検査の種類も数多くありますが、健康診断などで行われる一般的な血液検査は、大きな異常がないかをはかる大切な検査です。

もし、健康診断の血液検査で異常が見つかったらどのような病気が疑われるのでしょうか?

血液検査で分かる病気について詳しく解説します。

目次

血液検査の項目と基準値について

特定健診や職場で行われる健康診断(労働衛生基準法に基づいて行われる健康診断)は、病気の早期発見だけでなく、生活習慣病の予防を目的に行われています。

これらの健康診断の血液検査では、

  1. 脂質検査
  2. 肝機能検査
  3. 血糖検査
  4. 貧血検査

が行われます。

また、体調が悪く病院を受診した場合には、これよりもさらに多くの検査を行い、病気の診断や健康状態の把握に役立てられています。

血液検査の項目や結果の見方については、記事「血液検査の結果はどう見る?それぞれの数値は何を表すの?」をご参照ください。

基準値とは

血液検査の結果には、基準値が併記されています。

この基準値とは、健康な多くの人たちの検査データをもとに統計学的に求められた数値で、95%の人が該当する範囲を示しています。健康な人でも5%の人は基準値を外れることになり、基準値を外れていることが必ずしも病気や異常を示しているわけではありません

検査の結果と病気の診断については、必ず医師に相談したうえで理解しましょう。

健康診断の血液検査で疑われる病気とは

血液検査

1.脂質検査で疑われる病気

脂質検査には、中性脂肪(TG)、HDL-C(善玉コレステロール)、LDL-C(悪玉コレステロール)の検査があります。

中性脂肪LDL-C(悪玉コレステロール)は、増えすぎると脂質異常症(高脂血症)となり、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞の危険性も高まります。

脂質異常症にはほとんど自覚症状はなく、検査に異常値があっても軽視してしまいがちです。

脂っこい食事を好む人や肥満傾向の人、運動不足、喫煙者などは、知らず知らずのうちに動脈硬化を進行している可能性があります。

脂質異常症についてはこちらの記事「放っておくと危ない?脂質異常症が心臓病や脳卒中を引き起こす!」をご参照ください。

また中性脂肪やLDL-Cが低すぎる場合にも問題があります。

中性脂肪やLDL-Cが低い場合には、体内のエネルギー不足が疑われ、極端なダイエットや偏食による栄養不足、また代謝を亢進する甲状腺機能亢進症が潜んでいる可能性もあります。

低いと危険なHDL-C、高い分には問題ない?

一方、血管に付着したコレステロールを取り除く働きのHDL-C(善玉コレステロール)ですが、これは少なすぎると動脈硬化が進行し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクになるものです。

かつてはHDL-Cは高くても問題はないと考えられてきましたが、アルコールの多飲によって起こることや、近年では先天性の遺伝子異常(CETP欠損症)による高HDL-コレステロール血症の存在が明らかになってきました。このCETP欠損症がのちのち動脈硬化を伴いやすいことも分かっていますが、根本的な治療法は確立されていません。

2.肝機能検査で疑われる病気

肝機能検査にはAST(以前のGOT)、 ALT(以前のGPT)、γ-GTPがあります。

これらは通常は肝臓や心臓、骨格筋に存在している酵素ですが、これらの臓器が障害されて細胞が破壊されると、血管内に放出され、結果血中の値が高くなります。

これらの数値が高くなる原因として、最も多いものは肝臓の障害です。

肝炎の急性期や病気の活動性の高い時期には著しく高くなり、倦怠感や発熱、腹痛などの自覚症状を伴います。脂肪肝など緩徐に経過している場合は数値の上昇も軽度で、自覚症状がない場合もあります。

またγ-GTPアルコールに反応する酵素で、γ-GTPが高い場合はアルコール性肝炎の可能性があります。

なお、肝機能検査は数値が高いことが問題となり、低い場合に問題はありません

3.血糖検査で疑われる病気

血糖検査には血液中のブドウ糖の濃度を見る血糖値(血糖検査)と、ヘモグロビンに結合した状態のHbA1cがあります。

血糖値は直近の食事に影響され、その時点での状態しか分かりませんが、HbA1cは約3か月さかのぼった平均の血糖の状態を知ることができる検査です。

血糖値やHbA1cの上昇は糖尿病の疑いを示しますが、軽度の上昇の場合は、境界型糖尿病または糖尿病予備軍として、食事や生活習慣の改善で糖尿病への移行を防ぐことができる状態です。糖尿病について詳しくはこちらの記事「糖尿病ってどんな病気?専門医が語る、放っておいてはいけない理由とは」をご参照ください。

また、HbA1cが高値の場合、すい臓がんがみつかることもあります。

一方、血糖値が低い低血糖の場合の多くは、絶食時間が長いことや、空腹でアルコールのみを摂取した場合など、一時的な変化です。なかにはインスリノーマ(インスリンを過剰産生する膵臓腫瘍の一種)や平滑筋肉腫(悪性腫瘍の一種)などの稀な病気の可能性もあります。

4.貧血検査で疑われる病気

貧血の検査には、赤血球血色素(ヘモグロビン)ヘマトクリットがあります。これらの数値が低いと貧血の可能性があります。

女性に多い鉄欠乏性貧血は、慢性的に貧血の状態にあることがあり、「疲れやすい」「顔色が優れない」といった症状にも慣れてしまっている場合があります。

「要再検査」「要精密検査」の場合は必ず医療機関の受診を

待合室で緊張した男性

健康診断は血液検査だけでなく、身長や体重、腹囲などの身体計測データや自覚症状を記す問診票、心電図検査やレントゲン検査、検尿検査など、ほかの所見と総合して、再検査または精密検査が必要かどうかの判定がなされます。

要再検査

今回の検査結果が一時的な変化か病気によるものか判断できない場合、もう一度同じ検査を必要とします。

要精密検査

検査結果により病気の疑いがある場合は、さらに詳しい検査が必要となります。

いずれの場合も必ず医療機関を受診し、検査を受けるようにしましょう。

検査は血液検査のほか、画像検査なども行われます。朝食を控えて受診しましょう。

また健康診断は健康保険の適応外のため私費(または一部公費補助や会社負担の場合もあります)で行いますが、再検査や精密検査は保険適応となります。医療機関を受診する場合は健康保険証と健診の検査結果を持参しましょう。

まとめ

血液検査からは多くのことが分かりますが、特に生活習慣病につながるものは自覚症状のないうちから数値に変化が起こっている場合があります

健康診断は病気の早期発見と生活習慣病予防の重要な機会となります。健康診断は「少しでも怪しい場合にはひっかける」という方針で行われていますので、再検査や精密検査となっても慌てず、必ず受診してください。