日和見感染症とは、健康な人であれば感染症を発症しない常在菌や弱毒菌によって感染を起こす病気です。病気で免疫力が低下した人や、高齢者に発症しやすく、また、菌によっては健康な人が一時的に体調を崩し、体力が低下した場合にも起こりうるものです。こうした日和見感染症を予防するには、どのようにしたらよいのでしょうか?日和見感染症の予防法について詳しく解説します。

目次

健康な人には発症しない日和見感染症

人の身体や自然界に存在する菌は有害なものばかりではありません。常在菌や弱毒菌と呼ばれるものは、毒性が低く、人の身体の免疫細胞の働きによって防御されるため感染症を発症することはありません。しかし、何らかの原因で免疫細胞の働きが弱まった場合には、これらの菌によって肺炎や尿路感染症、皮膚炎などの感染症を発症することがあります。

日和見感染の症状は、肺炎であれば、発熱や、胸の痛み、皮膚炎であれば皮膚の化膿など、普通の感染症と異なるところはありませんが、普通は病気の原因とならない菌によって感染症を起こしてしまうところが、普通の感染とは異なり、そのために注意を必要とします。詳しくはこちらの記事「日和見感染症と普通の感染症は何が違う?」をご参照ください。

日和見感染に注意が必要な人とは?

1.病気によって免疫力が低下している人

白血病HIVウイルス感染症(AIDS)などは、病気そのものが血液の免疫細胞の働きを弱めるため、著しい免疫力の低下が起こります。また、末期がんでも免疫力が低下するため、日和見感染が生じる場合があります。

また糖尿病腎臓病などの病気によっても免疫力が低下します。

2.ステロイド薬、免疫抑制剤抗がん剤を服用している人

関節リウマチや膠原病などの病気の治療として、長期にわたってステロイド薬を服用することがあります。ステロイド薬には免疫力を低下させる副作用があるため、日和見感染には注意が必要です。

加えて、抗がん剤や、膠原病などで体内の異常な免疫反応を抑えるために服用する免疫抑制剤も日和見感染を起こしやすくする原因となります。

3.高齢者や乳幼児

高齢女性

健康な人でも加齢によって免疫細胞の働きは低下していきます。高齢者は若い人に比べて様々な感染を起こしやすくなっています。特に寝たきりの人は褥瘡を作ると、そこから感染を起こしやすくなるため注意が必要です。また、新生児や乳幼児も免疫力が発達途上にあり、充分ではありません。

日和見感染を予防する6つのポイント

日和見感染症の予防には、感染のリスクを減らすことと体力をつけることが必要です。自身で予防や対策を行えない場合は、家族や介護者による援助が必要です。

1.生活環境を清潔にする

日和見感染症の原因となる菌は生活空間の中に普通に存在し、これを完全に除去することはできません。しかし少しでもそのリスクを減らすために、生活環境を清潔に整えましょう。特に高齢者は生活環境を整えることができにくくなっています。ご家族や介護者で注意しましょう。

緑膿菌やセラチア菌は水回りに発生

手洗い場や洗面所などの水回りは菌が発生しやすい場所です。 洗ってぬめりをとり、乾燥しておくようにしましょう。また、湿ったまま放置された衣類やタオル、おしぼりなども菌が発生しやすいところです。歯ブラシも使用後はきちんと洗って乾燥するようにしましょう。

エアコンの吹き出し口にはアスペルギルス

アスペルギルスとは換気口やエアコンの吹き出し口などのほこりの中に存在する真菌(カビ)です。これらの場所はほこりが溜まらないように定期的に清掃しましょう。また、観葉植物や水が入ったままの花瓶や花器も菌の温床となります。免疫力が低下している人の療養環境にこれらを置く場合は、常に清潔を心がけておきましょう。

2.身体や口腔内を清潔にする

手洗い

人の身体にも常に菌は存在しますが、これらは除菌するのではなく、異常に繁殖させないことが必要です。特に口腔内陰部は不潔になりやすく、カンジダ菌が繁殖しやすくなっています特に女性の場合は、健康な人であっても体調不良やストレスによって免疫力が低下し、性カンジダ症を起こしたり、大腸菌による膀胱炎を起こしたりします。不潔になりやすい部分は特に、清潔の保持に気をつけましょう。

しかし、清潔にしようと、こすりすぎたり、洗浄力の強い石鹸を使ったりすることは逆効果です。皮膚に細かい傷ができ、正常なバリア機能が失われ、そこから感染しやすくなります。

また、家族や介護者などの健康な人が媒介となって菌を伝搬してしまうことにも注意が必要です。免疫力が低下している人と接するときは、マスクを着用し、きちんと手洗いをしましょう。自身がケガなどで手指に絆創膏を貼っているときには、手袋も着用しましょう。

3.栄養状態を整える

免疫力の強化には良質のたんぱく質ビタミンミネラルなどが豊富なバランスが取れた食事が必要です。病気療養中の人や寝たきりの高齢者には、治療や病状、体調に応じた食事が必要ですが、そうでない人も暴飲暴食や偏食を控え、健康的な食生活を心がけましょう。

4.質の良い睡眠をとる

睡眠は身体や脳の疲労をとり、健康維持に必要なホルモンの産出に深く関わっています。睡眠時間が短いことや、途中で目が覚めてしまう浅い眠り、日によって異なる不規則な睡眠時間睡眠時無呼吸症候群などは、免疫力の低下に繋がります。これらの睡眠の問題を見直し、できるだけ規則正しく質の良い睡眠をとるよう心掛けましょう。

5.日光浴

日光を浴びることで、ビタミンDが活性化し、骨や筋肉を強化し免疫力の向上に繋がります。屋内にこもりがちな高齢者や寝たきりの人であっても、日の当たる場所に出ることでこの効果は得られ、良い気分転換にもなります。

6.処方薬や市販の抗生物質や抗菌剤は正しく使用する

黄色ブドウ球菌という細菌には、もともと「メチシリン」という抗生物質が有効です。しかし、このメチシリンが効かなくなってしまった黄色ブドウ球菌のことを「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」といいます。MRSAは消毒剤や抗生物質への抵抗性が強いため、医療現場では治療の難しい菌といわれます(ただし健康な人の場合は基本的に、感染しても無害です)。

抗生物質は、医師が「治療上必要」と判断して処方するものです。症状が軽くなったからと自己判断で服用を中止すると、このように耐性菌が生じる原因となることがあります。高齢者や乳幼児、病気療養中の人は、病院で処方された薬を正しく服用することを基本とし、健康な人も一時的に市販薬を服用する場合は、説明書をきちんと読み正しく服用しましょう。

まとめ

日和見感染症は免疫力が低下している人に起こりやすい感染症で、その予防には感染のリスクを減らすことと、免疫力を高めることが重要です。高齢者や病気で免疫力が低下している人やその家族はもちろん、普段健康な人であっても、一時的な体調不良やストレスによって免疫力が低下することがあります。思いもよらぬ発熱や皮膚炎などを起こした場合は、免疫力が低下している兆候かもしれません。悪化する前に医療機関を受診し、正しい治療を受けましょう。