何度も繰り返す咳発作を主な症状とする百日咳は、その原因が明らかになっています。そのため、予防法や治療法は確立されたものがあります。

この記事では百日咳の“適切な”予防方法と、その治療方法について詳しく説明します。詳しい百日咳の原因や症状については、「子供の繰り返す咳…それは百日咳かもしれません」を併せてお読みください。

目次

百日咳とは

百日咳は子供に発症しやすい感染症で、原因となるのはBordetella pertussis(百日咳菌)という細菌です。

百日咳の主な症状は、咳を数回から数十回繰り返す「レプリーゼ」です。ただ、レプリーゼが出るのは痙咳(けいがい)期といい、感染後しばらく経った時期になります。

それまでの期間(潜伏期やカタル期)には症状がなかったり、鼻水など風邪に似た症状だったりするため、他の病気と区別することは難しいかもしれません。百日咳は、未然に防ぐことが何より大切なのです。

百日咳の“適切な”予防方法

感染症である百日咳は、下記のような予防策を講じることができます。

1.百日咳の予防接種を受ける

百日咳の予防において、最も有効なのは予防接種を受けることです。

百日咳ワクチンは、四種混合(DPT-IPV)ワクチンに含まれています。これは予防接種法に定められた定期接種の一つで、生後3ヶ月以降に3~8週間隔で3回、3回目のおよそ1年後に4回目を接種します。

生まれてすぐの赤ちゃんは、お母さんから病気に対しての免疫を受け継いでいます。しかし、百日咳に対する免疫は、生まれてすぐの時期に失われてしまうことが分かっています。そのため、生後3ヶ月になったらなるべく早く、ワクチンを接種することをおすすめします。

※予防接種は、個人と社会の両方を守るものです!

予防接種を受けることで、百日咳に対して免疫をつけることができます。すると百日咳菌に感染したとしても、発症を防ぐことができたり、重症化を防ぐことができたりします。

一方、多くの人が予防接種をきちんと受けることで、集団の中に感染者が出たときに流行を防ぐ効果(集団免疫効果)もみられます。つまり予防接種は、受けた本人を守るだけでなく、社会全体を守る役割も担っているのです。

2.手洗い、うがい、マスクをする

家族や友達など、周りに百日咳の感染者が出た場合の対策として、手洗い・うがいやマスクの着用が有効です。

百日咳は、患者さんの咳やくしゃみなどのしぶきを介して感染します。ですから、手や口の中にいる百日咳菌を落とす手洗い・うがいが効果を発揮するといえます。加えて、しぶきに含まれた細菌を吸わないために、マスクをすると良いでしょう。

百日咳の治療方法

百日咳菌は、他の感染症に有効なペニシリンなどの抗菌薬が有効ではありません。そこで、百日咳菌に対しては、エリスロマイシンやクラリスロマイシンといったマクロライド系の抗菌薬が使われます。また、百日咳に特徴的なレプリーゼに対しては咳止めの薬や、気管を広げる薬などを使うこともあります。

以上の治療を適切な時期に行うことができれば、百日咳の重症化や流行を防ぐことができます。しかし、顔を赤くする咳き込みやレプリーゼなどの症状が出てしまった後では、重症化を防ぐことは難しいことが分かっています。できるだけ早めに診断を受け、治療を開始することが重要です。

現在、百日咳の早期診断にむけて、診断基準の改訂や新しい検査方法の導入などが進んでいます。詳しくは、「百日咳の診療の変化:子供から大人まで、新しい検査が変えた診断基準とは」をお読みください。

まとめ

百日咳はその初期症状が風邪と似ており、風邪薬のみで対応してしまう場合も少なくありません。しかし、百日咳に対する予防方法や治療方法は確立されています。

適切な予防を行えば、百日咳にかかるリスクは減ります。また、百日咳になっても、早期に治療すれば重症になる確率は減ります。適切な予防方法と治療方法をしっかり理解していただければと思います。