ときどき耳にする「咳喘息」という病気は、実は診断が難しい疾患です。風邪、慢性の鼻炎やタバコの影響などの関係が否定されて、「喘息特有のゼーゼーという音が聞こえず咳をしている」「出だすと止まらない激しい咳」「会話で咳、冷気で咳、エアコンで咳、湯気で咳、香水や線香で咳など軽度の刺激で激しく咳込む」「気管支が過敏になっている」などの特徴があるときに、診断されることがあります。もし咳喘息だったら、早めに治療を行うことで重症化を防ぎましょう。今回は、咳喘息の治療とセルフケアについてご紹介します。

目次

咳にはどんな種類がある?

  • 風邪に伴う咳
  • ダニや花粉などが呼吸器を刺激して起こる咳
  • 鼻炎や副鼻腔炎の咳
  • 喘息の咳
  • 逆流性食道炎に伴う咳

の原因は様々あり、ときにはこれらが合わさってしつこい咳を起こすことがあります。長引く咳の原因を知るためには、呼吸器内科、アレルギー科、耳鼻咽喉科などを受診するようにしましょう。

咳喘息はどうやって診断されるの?

  • 胸部レントゲン写真撮影
  • 肺機能検査
  • 血液検査
  • 呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)

通常は、レントゲン撮影で異常が確認できませんが、肺機能検査では息が吐き出しにくくなる気流制限が分かることがあります。血液検査でアレルギー反応が出る場合もあります。

気管支喘息や咳喘息では、好酸球というアレルギーに関与する白血球によって、気導炎症が生じます。好酸球によるアレルギー性気道炎症が生じると、呼気中の一酸化窒素濃度が上昇することが知られております。呼気中の一酸化窒素濃度は簡便に測定でき、保険適応にもなりました。咳喘息でも呼気中の一酸化窒素濃度が上昇することがあり、診断に役立ちます。

咳喘息の症状については、「咳喘息~メカニズムと早期発見のポイントとは?~」をご覧になってください。

医療機関で行う治療

薬3

咳喘息の治療は基本的には喘息の治療と同じで、気管支の炎症を抑えるために薬物治療が行われます。

吸入ステロイド

吸入ステロイドは、喘息の基本的な薬です。気道の炎症を抑えて過敏になっている気道を正常な状態に少しずつ戻していく働きがあります。ステロイドを使って喘息の治療をして、咳喘息から気管支喘息に移行するのを防ぎます。

気管支拡張薬

咳喘息は気管支が狭くなって咳が出るので、気管支を広げるために気管支拡張薬を使います。咳を止めることはできませんが、咳を軽くする効果が期待できます。

治療を適切に受けなかったり、途中で止めたりすると、咳喘息を再発したり気管支喘息に至ることもあります。重症化する前に、医療機関を受診して治療を受けるようにしましょう。

日常生活の注意

アルコール、タバコ

咳喘息にかかると、1カ月以上空咳が続き、夜中や明け方に激しく咳込んだり、寒暖の差やタバコの煙で咳が出やすくなります。治療と並行して咳に負けない身体作りを行いましょう。

風邪やインフルエンザにかからない

喉の奥の気道は、外の空気と直接接する場所なので、風邪やインフルエンザなどのウィルスが入りやすい場所です。

風邪やインフルエンザにかかると、気道の粘膜を荒らして敏感にさせて、少しの刺激にも反応して気道が収縮し、咳喘息が起こりやすくなってしまいます。特に冬場の空気が乾燥する季節は、風邪などにかからないように、うがいや手洗いを丁寧に行うようにしましょう。

タバコを吸わない

タバコの煙に含まれるニコチンなどの物質は、気管支を刺激して粘膜を荒らす原因となります。その結果として咳の回数を増やすことになるので、タバコは吸わないようにしましょう。

自分はタバコを吸っていなくても、周りにタバコを吸っている人がいれば、喉が炎症して咳喘息を悪化させてしまいます。タバコの煙には近づかないようにしましょう。

お酒を飲み過ぎない

お酒を飲むとアルコールが肝臓で分解されてアセトアルデヒドという物質を作ります。この物質は呼吸を早めたり、気道を収縮させて咳を起こしやすくさせるなどの生体反応を起こします。お酒の飲み過ぎには気をつけましょう。

アセトアルデヒドはその後、酢酸に分解され、炭酸ガスと水になります。

アレルギーの原因物質を除去する

ハウスダスト、花粉やペットの毛などはアレルギーを引き起こす原因となるものです。咳喘息を悪化させないために、アレルギー反応を起こす物質を取り除きましょう。

ダニは高温多湿を好むので、寝具をこまめに天日干しするとダニ退治には効果的です。また、ホコリやチリなどを取り除くために、室内をこまめに掃除するようにしましょう。

犬や猫、ハムスターや鳥などのペットは、ペット自体がアレルゲンとなる可能性の他に、ペットの毛にはダニが付着しますので、新たには飼わない方が無難です。しかし、現在飼っているペットを手放すのは難しいでしょうから、吸入ステロイドで治療を継続すること、こまめに掃除すること、寝室はなるべく別にすることなど工夫して、ペットを手放さないですむ方法をまずは考えましょう。

それでも咳喘息の発作が生じるときには、ペットを諦めなければならない場合もあります。

急な寒暖差に気を付ける

急激な気温の変化は気管支を敏感にさせるので、咳喘息の発作の原因となることがあります。春や秋などの季節の変わり目と朝晩の気温の変化の激しい時期は、特に注意しましょう。外出するときは、脱ぎ着ができる服装にして、洋服で温度調節ができるようにしておけば安心です。

ストレスを溜めない

忙しい仕事や睡眠不足などが原因でストレスが溜まると、気道を過敏にさせてしまいます。ストレスを上手に解消して、睡眠や休養を十分に取るようにしましょう。

バランスの取れた食事を取り、規則正しい生活を送り、ウォーキングや水泳などの運動を行うと身体の抵抗力がつきます。身体機能を高めて、咳喘息を予防しましょう。

まとめ

咳喘息は、喘息と違ってゼーゼーという呼吸音がせず、乾いた咳が長く続くのが特徴です。風邪などのその他の病気との区別がつきにくい病気でもあります。咳喘息と診断されたら、喘息と同じように薬物治療が中心となります。風邪などにかからないように気を付けること、タバコやアルコールを控えること、アレルギーの原因となる物質を遠ざけること、寒暖差に対応できる服装を心掛けること、などを意識して規則正しい生活を続け、咳喘息に負けない身体作りを行いましょう。