甲状腺がんでは自覚症状があまりありません。何かの検査のついでに見つかることも多くあります。では、もしも甲状腺がんの疑いが見られた場合、どのような検査により診断がされ、治療はどのように行なわれるのでしょうか。記事で、詳しく見ていきたいと思います。

なお、甲状腺がんの初期症状や詳しい種類については「のどに違和感を感じたら注意!甲状腺がんの症状と種類」をごらんください。

目次

甲状腺がんの検査

問診、視診触診

問診では、自覚症状のほか、これまでに放射線の被曝がなかったか、家族に同じ病気の人がいたかを聞きます。そして、頸部、喉頭、リンパ節を視診・触診します。触診ではしこりの大きさだけでなく、硬さも確認します。

画像検査

画像検査とは、甲状腺の大きさやしこりの広がりなど、疾患が疑われる部位とその周辺について体内の様子を画像化して確認する検査です。

超音波(エコー)検査

機器を体の表面にあて、超音波の反射をコンピューター画像に映し出す検査です。皮膚に検査用ゼリーを塗り、その上で機器を滑らせていくだけなので、特に痛みはありません。画像より甲状腺の大きさや疑われるしこりの位置および性質を見ていきます。

CT(コンピューター断層撮影検査)、MRI(磁気共鳴画像検査)

CTやMRIでは、周辺臓器への転移の有無を調べます。CTではX線にて、MRIでは磁気にて体内の様子を連続した断面図として映し出すことができます。これらは必要に応じて甲状腺がんの検査に用いられます。

シンチグラフィー検査

検査用の放射性物質を服用または注射で体内に入れ、それが放出される量を測り画像化する検査になります。がん再発の有無や甲状腺の機能の検査といった、治療後検査にも用いられます。

病理検査

病理検査では、しこりを形成する細胞がどのような性質かを確認します。

エコー下穿刺吸引細胞診

超音波検査と同じ方法でしこりの場所を確認しながら、注射針を使用して直接しこりから細胞を採取します。甲状腺乳頭がんの場合は、この細胞診にて乳頭がんであることが9割方確定できます。

病理組織生検

悪性リンパ腫や甲状腺未分化がん、稀なタイプの甲状腺がんについては細胞診で診断しきれないこともあります。その際は、局所麻酔をしてしこりを部分的に切り取って顕微鏡で細かく調べる場合があります。

血液検査(腫瘍マーカー検査)

血液検査にて腫瘍マーカー(がんがある場合に上昇する血液の項目)を確認します。ただし、がんになることで必ずしも上昇するわけではないので、血液検査はあくまでも補助的な検査として用いられます。

遺伝子検査

甲状腺髄様がんの場合は、家族性(遺伝性)のものも多いので、遺伝子検査を行うことがあります。患者本人の検査結果から遺伝性か否かがわかり、また遺伝性の場合は家族に対して検査を行うことで将来がんになる可能性があるか調べることができます。

甲状腺がんの病期(ステージ)

病期とはがんの進行の程度を示す用語で、カタカナで英語のままステージと言われることもあります。病期の段階はローマ数字で書かれ、数字が大きくなるほど進行が進んでいます。その区分は、がんの広がり具合や転移の有無で決まります。甲状腺がんでは I期、II期、III期、IV期(更にIVA、IVB、IVCに分かれる)に分類されます。

さらに、甲状腺乳頭がんと甲状腺濾胞がんの場合は、年齢によって病期の区分が異なります。45歳未満では、遠隔転移(遠くの臓器へがんが転移しているか)でⅠ期とⅡ期に分かれ、がんの大きさやリンパ節転移の有無は関係ありません。一方、45歳以上では、がんの大きさやリンパ節への転移、および他臓器へ転移の有無で病気が分類されます。なお、甲状腺未分化がんは初めからIV期に分類されます。

がんの種類ごとの治療法

甲状腺がん4

甲状腺がんの治療の基本は手術で、その方法は切除範囲で下記となります。

  • 葉切除術:甲状腺の左葉または右葉のどちらか片方を切除
  • 甲状腺亜全摘術:甲状腺の約2/3以上を切除
  • 甲状腺全摘術:甲状腺をすべて摘出
  • リンパ節郭清:リンパ節の切除

治療法はがんの種類とその進行度合いによって異なり、手術、放射線治療、薬物療法(抗がん剤治療やホルモン療法)は、患者さんの状態に合わせて選択または組み合わせて行われます。以下は日本における甲状腺がん治療の目安になります。

甲状腺乳頭がん

がんが片側葉に限局している場合

  • 葉切除術+リンパ節郭清
  • 甲状腺亜全摘術+リンパ節郭清
  • 甲状腺全摘術+リンパ節郭清

上記いずれか。※周辺臓器の合併切除+放射線内照射治療を併せる場合あり

がんが両側葉に及んでいる場合

  • 甲状腺全摘術+リンパ節郭清

※周辺臓器の合併切除+放射線内照射治療を併せる場合あり

甲状腺濾胞がん

がんの広がりがわずかな場合

  • 葉切除術+リンパ節郭清

がんが広範囲に広がっている場合

  • 甲状腺亜全摘術+リンパ節郭清
  • 甲状腺全摘術+リンパ節郭清

上記いずれか。※放射線内照射治療を併せる場合あり

甲状腺髄様がん

遺伝性の場合

  • 甲状腺全摘術+リンパ節郭清

遺伝性ではない場合

  • 葉切除術+リンパ節郭清
  • 甲状腺亜全摘術+リンパ節郭清
  • 甲状腺全摘術+リンパ節郭清

上記いずれか。

甲状腺未分化がん

  • 化学療法、放射線外照射治療、手術の組み合わせ

まとめ

甲状腺がんは比較的予後が良いので、医療機関でしっかりと検査し、早めに適切な治療を受けましょう。多くの場合、進行が遅いのでリンパ節に転移していたとしても、がんをきれいに取ることができます。

手術後は不安もあると思いますが、甲状腺は少しでも残っていれば甲状腺ホルモンを分泌できます。もし全摘出した場合でも、甲状腺ホルモン薬で補充すれば問題ありません。日常生活や運動の制限もありませんが、何か不安なことがあれば担当医に相談してみましょう。

甲状腺がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「甲状腺がん」(PDF)