洗顔のときや、肩が凝ってふと首筋に手をやったとき、しこりのようなものに触れ違和感がしたら、どのような病気を考えますか。すぐにその腫れはひくでしょうか。また、喉の痛みや声のかすれがある場合、どのような病気が疑われるのでしょうか。ここでは甲状腺がんの症状について見てみましょう。

目次

甲状腺がんとは?

甲状腺は右葉と左葉からなり、いわゆる「のどぼとけ」下付近の咽喉にあります。その形は羽を広げた蝶に似ていて、気管を外側から羽で包むように位置しています。重さは約10~20グラムの小さな臓器です。その役割は、ホルモンを分泌することです。甲状腺ホルモンは、子供の頃は成長に関わり、大人では新陳代謝を調整します。

甲状腺の病気は男性よりも女性に多く見られます。腫瘍ができるものもあれば、そうでないものもありますが、甲状腺の腫瘍のうちほとんどは良性のものです。しかし中には悪性の腫瘍もあり、それが甲状腺がんです。甲状腺がんの多くは他臓器のがんに比べ進行が遅く、比較的治りやすいがんといわれています。

甲状腺がんの初期症状

甲状腺がんの自覚症状は少なく、健康診断や何らかの検査のついでに発見されるケースがほとんどです。中には初期段階で、まったく症状や兆候が現れないものもあります。

主な自覚症状はしこりです。そのほか、嗄声(声のかすれ)のどの痛み嚥下障害(食べ物の飲み込みにくさ)呼吸のしづらさがありますが、これらの症状は甲状腺がん以外の病気が原因で起こる場合もあるため、まずは検査をして確かめることが大切になります。

甲状腺がんの種類

甲状腺がん2

甲状腺がんには主に4種類(乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がん)あります。

甲状腺乳頭がん

最も一般的なタイプの甲状腺がんで、甲状腺がん全体の約9割が乳頭がんともいわれています。発症が多いのは40~50代の女性で、高齢になるほど悪性度が高くなる傾向があります。進行は比較的ゆっくりしています。リンパ節への転移も多く起こりますが、リンパ節郭清(リンパ節を切除する手術)をすれば、予後(治療後の経過)は良好とされています。

甲状腺濾胞がん

甲状腺がんの約5%が濾胞がんになります。年齢別の発症を見ると、乳頭がんに比べやや高齢者に多い傾向があります。リンパ節への転移が少ない代わりに、血液に乗って肺や骨に転移(血行性の遠隔転移)することがあります。この遠隔転移がない場合は、乳頭がん同様に比較的予後が良いタイプになります。

甲状腺髄様がん

甲状腺がんの約1~2%が髄様がんになります。乳頭がんや濾胞がんは甲状腺ホルモンを作る細胞ががん化したものですが、髄様がんは傍濾胞細胞(カルシウムを調節するホルモンを分泌する細胞)ががん化したものになります。髄様がんは家族性(遺伝性)と遺伝に関係のない場合に分けられ、両者の比率は半々です。また、リンパ節や骨、肝臓に転移しやすい性質があります。進行は乳頭がんや濾胞がんより速いがんです。

甲状腺未分化がん

甲状腺がんの約1~2%に見られ、このタイプに関しては比較的男性にも多く発症します。上記3種類では自覚症状がほとんどありませんが、未分化がんでは痛みや嗄声があります。悪性度が高く、予後も悪いタイプになります。進行は速く、周囲への広がりや肺や骨への遠隔転移もしやすい性質があります。

※甲状腺にできるがんに、悪性リンパ腫が甲状腺腫瘍として生じるものもあります。

まとめ

喉に違和感があり、がんの疑いがあったとしても、甲状腺がんのほとんどは他臓器のがんと比べて進行が遅く、比較的治りやすいものです。過度な心配をせず、すぐに専門家に見てもらいましょう。

甲状腺がんの治療法については「甲状腺がんと診断されたら…検査と治療の方法」をご覧ください。
併せて、がん対策情報センターのサイトにも詳しく書かれています→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「甲状腺がん」(PDF)

なお、そのほか甲状腺の病気には、非腫瘍性(腫瘍ができないタイプ)のバセドウ病や橋本病(慢性甲状腺炎)があります。バセドウ病については「バセドウ病ってどんな病気?初期症状やメカニズムとは」「バセドウ病を疑ったら。受診・検査から治療の流れ」を参考にしてください。