がんの治療中は、がんそのもののつらさだけでなく、がん以外の痛みのケアも大切とされています。がんそのもの以外の痛みとは、手術の傷によるものかもしれませんし、薬の影響によるものかもしれません。また、長くベッドに寝ていることで腰が痛くなることもあります。がんの治療中に起こる痛みにはどのような種類があるのでしょうか。

目次

がんによる痛みとは?

切り傷をつくったり骨を折ったりして痛いと感じることは、体からのSOSのサインで、その感覚は体の異変に気が付くために大切なものです。しかし、がんによる痛みはSOSのサイン以上に辛さを与え、悪化し続けていく痛みです。傷などの痛みと異なり、しばらく様子を見ても回復することはないため、しっかりとした治療が必要となります。

「がんそのものの治療とは関係が無いから」と我慢をしてしまう人もいますが、痛みにより眠れず体力が落ちたり、痛みがひどいために検査ができなくなったりしてはいけません。痛みを感じたら、まずは医療スタッフに伝えましょう。なぜならば、あなたが感じる痛みはあなた本人にしか分からないからです。どこが痛いのか、いつから痛いのか、どの程度痛いのか、どんな痛み方なのか、痛み止めを使って効果はあるか、など痛みの状況を伝えてくことが大切です。

痛みの程度をうまく表現できないときは、日常生活にどのような影響が出ているのか、具体的に伝えるのもいいでしょう。

例えば以下のように、あなた自身の言葉で説明をしてみてください。

  • 痛みで夜眠れない
  • 口の中に食べ物を入れると痛む
  • 手術の傷のあたりがズキズキする
  • トイレで腰を下ろすのがつらい
  • 痛みで歩けない
  • じっとしていても我慢できないくらい痛い

痛みの種類とその原因

がん性疼痛2

がんによる痛みは、専門用語でがん性疼痛と呼ばれます。下記の痛みの種類は、がんが直接的な原因になっていないものもありますが、それら間接的なものも含めてがん性疼痛といいます。

がんそのものが原因となる痛み

がん性疼痛の約7割が、がんが体の中で広がっていく際に起こる痛みです。がんが大きくなって周囲の臓器を圧迫すれば臓器が押されて痛みが出ます。また、神経を圧迫すればしびれも出ます。

がんが骨転移した(他臓器にできたがんが骨に広がった)場合は、骨膜が刺激されて痛みます。骨転移によって骨が壊されれば(骨折すれば)、それによる痛みも生じます。このように、がんが臓器や骨、神経に影響を及ぼしていることが原因となり、痛みが生じます。

がんと関連した痛み

がんの療養中は長い時間寝ている(体を横にしている)ことが多くなります。長く同じ姿勢をとることで、筋肉が硬くなって動かすたびに痛んだり、寝具との接触で床ずれになり皮膚が痛んだりします。

がんの治療に関連した痛み

外科手術後に傷が痛んだり、放射線治療後に皮膚がやけどした状態になって痛んだりすることがあります。また抗がん剤治療では、その副作用で口内炎ができたり、手足のしびれが出現することもあり、これらも治療による痛みのひとつです。

がんに関係しない痛み

頭痛持ち、腰痛持ち、といったように元々持っているものが治療中に強く出ることもあります。持病がある場合は、これまで自分が行ってきた対処法や服用している薬について、あらかじめ医療スタッフに伝えておきましょう。

まとめ

日本では我慢することが美徳と思われがちですが、病気の治療においては違います。あなたの感じている痛みの程度は、あなたにしか分かりません。きちんと医療スタッフに伝えることが大切です。それが痛みの治療のスタートになります。

痛みがコントロールできている状態でのがん治療は、ストレスも少なく、療養生活の質も上がります。痛みを取り除くことは治療に集中できたり、日常に近い生活を送る助けになったりするのです。

実際に痛みを和らげる方法については「我慢しないで!がんの痛みをやわらげる治療法とは」で紹介していきます。