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社会不安障害、という病気をご存知でしょうか。昔は「あがり症」「赤面恐怖」「対人恐怖症」と言ったそうで、こちらの名称の方に馴染みがあるかもしれません。

人前に出ることに強い抵抗を感じ、極度に緊張してしまう。それは元からの性格だけでなく、精神疾患が関わっている可能性があります。思い当たる方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。

社会不安障害とは

現在は社交不安障害社会恐怖とも呼ばれていますが、示す病状は同じで、対人コミュニケーションに極度の恐怖や不安を覚えてしまう疾患です。

もちろん初対面の人に対して身構えてしまったり、注目を浴びると赤面してしまったりすることは、誰しも多かれ少なかれ経験することです。それ自体が病気ということはありません。

しかしその程度が強く、日常生活に支障をきたしてしまう状態、自身の緊張による身体症状に苦痛を感じている状態を社会不安障害と呼びます。

原因は何?

窓と男性

社会不安障害の明確な原因は解明されていません。

脳の神経細胞間の情報伝達に関わる「セロトニン」という物質の働きに異常があのではないかという説や、恐怖反応に関与している大脳の「扁桃体(へんとうたい)」が過敏に反応してしまっているという説があります。また、発症は10~20代であることが多いです。

社会不安障害の診断基準

精神疾患の診断は、慎重に行う必要があります。DSM(米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル)では、その診断基準を以下のように定めています。その一部を引用してご紹介します。

  1. 他者の注視を浴びる可能性のある一つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安。
    例として、社交的なやりとり(例:雑談すること、よく知らない人に会うこと)、見られること(例:食べたり飲んだりすること)、他者の前でなんらかの動作をすること(例:談話をすること)が含まれる。
  2. その人は、ある振る舞いをするか、または不安症状を見せることが、否定的な評価を受けることになると恐れている
  3. その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する。
  4. その社交的状況は回避され、または、強い恐怖または不安を感じながら耐え忍ばれる。
  5. その恐怖または不安は、その社交的状況がもたらす現実の危険や、その社会文化的背景に釣り合わない。
  6. その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的に6カ月以上続く。
  7. その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  8. その恐怖、不安、または回避は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。
  9. その恐怖、不安、または回避は、パニック症、醜形恐怖症、自閉スペクトラム症といった他の精神疾患の症状では、うまく説明されない。
  10. 他の医学的疾患(例:パーキンソン病、肥満、熱傷や負傷による醜形)が存在している場合、その恐怖、不安、または回避は、明らかに医学的疾患とは無関係または過剰である。

社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)について (PDF)より抜粋

社会不安障害に伴う主な身体症状

社会不安障害には、強い不安だけでなく身体症状が伴うこともあります。

  • 赤面
  • パニック
  • 発汗
  • 動悸
  • 手足や声が震える
  • 声が出にくくなる(どもる)
  • 腹痛、胃腸の不快感
  • 下痢
  • すぐに排尿したくなる

など

まとめ

人の視線が気になり、恥ずかしい思いをすることに不安を感じてしまう。ありきたりな経験でもありますが、その緊張が苦痛になっているのであれば、一度精神科を受診してみてもよいかもしれません。

医療機関で治療をすれば、症状が軽くなる見込みはあります。もともとの性格や、個人差の問題として片付けてしまわないことが大切です。