PTSDは回復する?治療と克服の方法

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PTSDは、津波や地震などの自然災害や重大事故、犯罪被害など、生死に関わるような危機を体験をすることで発症する病気です。重症の場合は症状が長期にわたって続くこともあり、回復への出口が見えずに悩んでいる方も数多くいます。どうしたらPTSDを効果的に克服することができるのでしょうか。ここではPTSDの治療と克服の方法について、医師・井口 俊大先生の監修記事で紹介します。

PTSDは回復する?

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命の安全が脅かされるような出来事や強烈な精神的ショック(外傷体験)が原因となり、それがトラウマ(心的外傷)となって、心身に様々な症状が出る病気です。こうした辛い記憶を完全に消し去ることはできませんが、「外傷体験について考えても苦痛に感じなくなった」、「絶えず恐怖を感じることがなくなった」、「ふとした時に外傷体験について考えなくなった」という状態になったとき、回復した、あるいは寛解したといえます(精神科の疾患では、ある程度安定した状態を保てていることを「寛解」といいます)。

PTSDは、数カ月程度で大半が自然に回復します。症状が重症化したり、数ヶ月経っても症状が続く場合は、専門的な治療が必要になります。

PTSDの治療について

PTSD_病院受付

PTSDの治療は、心の傷の回復を助け、苦しい症状を軽減して、健全な状態に戻すことを目的としています。心と身体の症状にあわせて、認知行動療法薬物療法など、場合によってはいくつかを組み合わせて行います。また、治療する際の環境づくりも大切です。可能な場合は、同居している家族や友人にも協力してもらい、精神的にリラックスできる環境をつくるよう心がけましょう。

<認知行動療法>

認知行動療法は、トラウマ(心的外傷)に焦点を当てた治療です。PTSD治療の専門家によって行われます。

1.認知処理療法

心に深い傷を受けると、自分が受けた外傷体験が何を意味するのか、それが自分の人生にどんな影響を及ぼすのか分からなくなり、思考が行き詰まります。そのため、外傷体験について思い出したり考えたりすることを避けるようになります。認知処理療法では、こうした考え方を見直して、別の視点で物事を見られるように適切に導きます。

2.持続エクスポージャー療法

安全な環境の中で外傷体験の記憶を思い出させ、その恐怖に慣れるとともに、思い出しても危険はないことや、言葉にすることによってトラウマを乗り越えられることを学習する治療法です。

副 作用として、外傷体験を思い出すことによって一時的に不安が強まり、症状が悪化する場合があります。一人きりで体験を思い出して不安になるのとは 異なり、治療の過程で生じる不安は、PTSDを乗り越えるための重要な手がかりになることが多く、有効な治療法となっていますが、実際にこの治療法を行える施設は限られています。

<グループ療法>

グループ療法は、同じような体験をした人たちがグループとなって、PTSDの原因となった体験について語り合う形で行われます。似たような経験をした人と一緒であれば、外傷体験について話しやすくなり、「自分だけが悩んでいるのではない」「自分の悩みは他の人よりも軽いかもしれない」等と、前向きに捉えられるようになります。グループ療法は通常、専門家や医師のもとで行われます。

<薬物療法>

薬物療法は、PTSDの症状を軽くするために行われます。具体的には、眠れない、不安が強い、うつ状態が続く、自殺を考える等の症状がある場合です。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)をはじめとする抗うつ薬や抗不安薬、気分安定薬等、様々な薬が症状に応じて処方されます。

PTSD克服のために、自分で心がけること

PTSD_海辺を歩く

PTSDを克服するには、治療が大切であることはもちろんですが、本人が「必ず克服できる」と強く思うことが重要です。そして、そのために自分でできることを明確にし、日々の生活に取り入れていきましょう。

 

<自分を責めないようにする>

PTSDでは、被害に遭ったこと、また他の人を助けられなかったことなどについて、自分を責めているケースが多くみられます。そのように自分を責めることで、症状の悪化を招きますので、なるべく自分を責めないようにすることが大切です。

<生活習慣をととのえる>

PTSDでは、生活のリズムが乱れるケースがよく見受けられます。できるだけ、普段どおりの生活に戻れるよう努力することが大切です。具体的には、睡眠のリズムをととのえる、バランスの取れた食生活を心がける、適度な運動を取り入れる、仕事に復帰する等が、PTSDの症状の軽減に役立ちます。

お酒やカフェイン(コーヒー、お茶等)、タバコ等の過剰摂取は避けるようにします。

<孤立しない>

家庭内暴力や性的暴行(レイプ)など、外傷体験の種類によっては人に話すこと自体、苦痛になることも珍しくありません。また、せっかく心を開いても、周囲から理解が得られず、かえって苦しむ場合もあります。

しかし、人間関係を閉ざし、孤立してしまうと、かえって症状の悪化を招きます。自分ひとりで悩まず、信頼できる家族や友人に助けを求め、休日などは一緒に過ごすよう心がけましょう。

まとめ

PTSDは、数カ月程度で自然回復することの多い病気です。また、適切な治療によって回復できる病気であることが分かりましたね。現在、様々な研究が重ねられていますので、更に効果的な治療法が開発される可能性もあります。大切なことは、必ず回復できると信じること。自分でできることもありますので、焦らずにひとつずつ実践してみてください。

 

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参照リンク

厚生労働省|PTSD

厚生労働省|専門的な情報|PTSD

日本トラウマティック・ストレス学会|PTSDとは

メルクマニュアル医学百科家庭版|心的外傷後ストレス障害(PTSD)

Royal College of Psychiatrists|Post Traumatic Stress Disorder(PTSD)(日本語)

U.S. Department of Veterans Affairs|National Center for PTSD (英語)

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