元日本代表の柔道家・斉藤仁さん、女優・川島なお美さん、任天堂・岩田聡社長と、2015年は胆管がんで他界した有名人の訃報を多く耳にした年でした。自覚症状が少なく、診断時にはすでに進行していることも多い胆管がんとはどのような病気なのでしょうか。ここではその症状についてみてみましょう。

目次

胆管がんとは?

胆管は、肝臓で作られた胆汁(消化液)を十二指腸まで流す管です。胆管は肝臓から出て、その途中に胆汁を一時的に貯めておく胆嚢(たんのう)があり、十二指腸と繋がる乳頭部があります。また、胆管のうち肝臓内を通っている部分は「肝内胆管」、肝臓の外に出た部分は「肝外胆管」と呼ばれています。

胆管がんは、その胆管の上皮(胆管内側を覆う粘膜)に発生するがんです。胆管にできたがんで胆管の流れが悪くなり、胆汁を十二指腸に正常に送ることができなくなるほか、胆汁が血液中に溢れてしまうことで、体に影響を及ぼす原因となります。

胆管がんの兆候(初発症状)

では、どのような症状をもって胆管がんの兆候を知ることになるのでしょうか。胆管がんの初発症状には多くみられる順に、黄疸体重減少腹痛悪心嘔吐発熱があります。そのほか、肝機能障害によって胆管がんに気が付くこともあります。しかしながら、胆管がんの初期では無症状のことも多く、それ故に診断が遅れるケースがあります。以下は、初発症状で見られる主なものの説明になります。

黄疸

黄疸は胆管がんで一番多い症状になります。がんによって胆管から胆汁が溢れることにより、目や体が黄色くなる症状です。本人でなく周囲からの指摘で気が付くこともあります。また、胆汁が正常に十二指腸に流れず血液中に溢れることによって起こる症状としては、他にビリルビン尿、白色便、かゆみがあります。

黄疸の詳しい症状については、「黄疸ってどんな症状?原因となる病気って?」を参照してください。

ビリルビン尿

血液中のビリルビン量が多くなることで、尿の色が茶色っぽくなります。また、この尿中ビリルビン量を測定することで黄疸の検査ができます。

白色便

食物が消化される際に十二指腸で胆汁が混ざることで便の色は黄色くなります。そのため胆汁が腸内に流れてこなくなると、便が白くクリーム色になります。黄疸よりも先に気が付きやすい症状です。

かゆみ(掻痒感)

胆汁中の胆汁酸がビリルビンと共に血管内へ流れるため、黄疸に伴い皮膚症状としてかゆみが出ることが多くあります。

腹痛(疼痛)

痛みは右脇腹やみぞおちあたりに出ます。がんが進行し骨に転移している場合は、骨に痛みを感じることもあります。

体重減少(食欲不振)や発熱、倦怠感

胆管がんに限った症状ではありませんが、黄疸が高度の場合は食欲不振が多くみられます。

その他検査による発見

病院の待合室

無症状の場合でも、近年は精度の高い画像検査や血液検査によって胆管がんが発見されることもあります。画像検査では、従来の体外から機器をあてる超音波検査ではなく、内視鏡を使い体内で胆管の近くから画像を撮る方法も導入されています。

また血液検査の値からも胆管がんが発見されるケースがあります。胆道系酵素(ALPやγ-GTP)が正常値よりも高い場合は、胆管が詰まっていることもあり得ます。その原因が腫瘍であるか否かの検査は必要となるでしょう。

胆管がんの種類

胆管がんはがんの発生部位により、肝内胆管がんと、肝外胆管がん肝門部領域胆管がん遠位胆管がんに分類されます。肝内胆管がんは胆管細胞がんとも呼ばれ、肝細胞がんと一緒に原発性肝がん(他の臓器からの転移ではなく、肝臓内に発生したがん)として扱われます。

肝門部領域胆管がん

がんの発生部位は、肝門部から胆管、門脈、肝動脈が分岐していく複雑な構造になります。浸潤性発育が最も多くみられます。浸潤性では発生部位の胆管上皮(表面)から浸み込むように広がっていきます。また胆管内発育の場合は、逆に管の内側に向かって腫瘍が盛り上がっていきます。

遠位胆管がん

遠位胆管に発生するがんは、膵臓へ広がりやすい性質があります。肝門部領域胆管がん同様、浸潤性発育または胆管内発育でがんが広がっていきます。

肝内胆管がん(胆管細胞がん)

肝臓の中に通っている胆管に発生するため、その肝臓の部位(左葉や右葉を越える場合や肝門に近いか否か)で手術による切除範囲が決まってきます。腫瘤形成性発育(腫瘤と呼ばれるかたまりをつくりながら大きくなっていくこと)でがんが成長していくことが多い傾向があります。中には浸潤性発育または胆管内発育のこともあります。

胆管がんに繋がるリスク

胆管がんは、50歳を超えると年齢とともに罹患率が上がっています(Cancer Net Japan「もっと知ってほしい胆道がんのこと」(PDF)より)。また、慢性的な胆管炎や胆石のある人で罹患率が上がり、これらが胆管がんと強い関係にあることが報告されています。

加齢により胆石はできやすくなりますが、コレステロール胆石にならないように脂質の多い食事や野菜不足に気を付けることで胆石の予防を考えることは、胆管がんのリスクを下げることにもなるでしょう。胆石についての詳しい説明は「胆石って何?体内に石ができる原因とは?」と「胆石といわれたら…どんな治療を行うの?胆石に効く食べ物はある?」を参照してください。

まとめ

胆管がんは膵がんと並んで治りにくいがんと言われています。自覚症状があまりなく、初期の段階でがんの診断を受けていないケースも多く、進行がんとなっているために生存率が低くなることも一因と考えられています。

一見小さな腫瘍でも浸潤して胆管に広がっていることもあり、胆管がん複雑な様相がうかがえます。また、肝臓や膵臓などの生命活動を担う臓器に近く、併せての処置は難しく高リスクになります。