肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、肝臓がんを発症しても気づかないことが多いといわれています。肝臓がんの進行はQOL(生活の質)を低下させ、さらには生命の危機につながります。肝臓がんの特徴を確認しておきましょう。

目次

肝臓の役割は?

肝臓は、その機能が低下してしまうと直ちに生命に危険が及ぶ重要な臓器です。肝臓は血液の塊のような臓器といえ、老廃物や毒素を分解して排泄する働きがあります。また、炭水化物、脂肪、タンパク質などの栄養素を蓄えたり、胆汁を作り出すことで脂質や脂溶性ビタミンの吸収を助けたりと、全身の栄養状態を調整する要といえます。

肝臓がんの大多数は肝炎ウイルスの感染が原因

薬瓶

日本における肝臓がんの約9割は肝炎ウイルスの感染によって引き起こされます(Minsdsより)。

肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型があります。A型、B型、E型は急性肝炎を引き起こし、B型、C型は慢性肝炎を引き起こします。肝臓がんを発症するのは、B型またはC型肝炎に何十年も感染した状態が続く持続感染の場合です。

肝臓がん全体のなかで、B型、C型の感染が占める割合は次の通りです。

このように、肝臓がんの約9割はB型またはC型肝炎ウイルスの感染を原因としているのです。

肝臓がんの症状は?

肝臓がんは、肝炎または肝硬変が悪化して発症するケースが多いです。倦怠感吐き気むくみ黄疸(目や肌が黄色くなる)腹水が溜まるといった、これらの疾患の症状を伴います。

しかし、初めにも書いたように、肝臓がんでは初期にはほとんど自覚症状がありません。進行した場合には腹部のしこりや痛み・圧迫感、お腹の張りなどがみられることもありますし、がんが破裂した場合には腹部の激痛血圧低下が起こります。しかし肝臓がんは健康診断でたまたま見つかることが少なくない病気なので、定期的に検査を受けることが重要です。

肝臓がん発症までのプロセス

腹痛女性

肝臓がんの大きな特徴は、肝炎肝硬変→肝臓がんの順に悪化していくという点です。肝硬変の進行を抑えれば肝臓がんの発症を防ぐことができます。さらに、肝炎の進行を抑えることで肝硬変の発症を防ぐことができます。なお、肝炎、肝硬変は肝炎ウイルスを原因とするものが大多数を占めますが、お酒の飲みすぎ肥満によっても引き起こされることがあります。

多くの肝臓がんは上記のプロセスで悪化・発生しますが、特にB型肝炎では、キャリアの状態(体内にウイルスを保有している状態)や肝炎の状態から、いきなりがんが出てくることがあります。早期に見つけることができれば治療を行うことができるので、腹部エコーなどで定期的に経過をみることが必要です。

肝炎

B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染や、お酒の飲みすぎなど様々な原因によって肝臓に炎症が起きた状態のことを「肝炎」といいます。慢性化すると肝臓の細胞が死滅して肝機能が低下し、肝硬変へと進行することがあります。

肝炎を発症しても自覚できる症状は発熱腹部の痛みなどごく限られたものです。これらの症状は風邪など他の病気と似ているため、肝炎に気づくのは難しいとされています。

肝硬変

肝炎による肝臓の障害が長期化(数年~数十年)することで、肝臓に線維化が生じます。これにより肝臓全体が固くなってしまうことを「肝硬変」といい、肝機能はさらに低下してしまいます。進行すると肝臓がんを引き起こします。

肝硬変になってしまうと、根本的に治療することはできなくなります。そのため、肝硬変に至る前に予防することが必要です。

まとめ

「沈黙の臓器」といわれる肝臓は自覚症状を感じにくいという特徴があり、気づいたときには進行してしまっていることが少なくありません。ただし、肝臓がんは肝硬変や肝炎から発症していることが多く、この段階で適切に治療や検査を行えば、早期に見つかり治療できる可能性が高くなります。肝臓の病気は、早期発見・早期治療が非常に重要なのです。