脚気は、ビタミンB1の不足が原因で起こります。過去の病気と思われがちの脚気ですが、実は現代でもみられる病気の一つです。予防としては、ビタミンB1不足の原因を知り、その対処法を理解しておくことが大切です。加えて、どのようにしたらビタミンB1を効率良く吸収できるのかも理解しておくことが、予防や治療に役立つのです。ここでは、脚気の予防方法や、もしも脚気に罹患してしまった場合の治療法について解説します。
脚気がどのような病気か知りたい方は、「脚気は現在もみられる病気。症状や検査方法は?原因はビタミン不足?」をご覧ください。
ビタミンB1の吸収のされ方
ビタミンB1は、基本的に小腸から吸収されます。小腸は胃に近い方から順に十二指腸、空腸、回腸と呼ばれていますが、最もビタミンB1の吸収が良いのが十二指腸で、回腸に至る間にビタミンの吸収が落ちてきます。
また、胃の粘膜からも栄養が吸収されることが分かっています。つまり、腸の状態が悪くなったり、胃の状態に異常が出て腸での消化吸収に影響を与えたりする場合には、ビタミンの吸収が低下してしまうことがあるのです。
脚気を予防する4つのポイント

脚気の予防にはビタミンB1の補給や、生活の改善が必要です。気をつけるべきポイントを4つ、ご紹介します。
1.ビタミンB1を多く含む食事を心掛ける
食事を通じてビタミンを取ることが、脚気予防の基本です。そのために、ビタミンB1を多く含む食品を把握しておきましょう。
- 魚類:うなぎ、たらこ、いくら
- 肉類:豚肉、レバー
これらの食品を中心にしたおかずを毎日の献立に加えることで、ビタミンB1の不足を補うことができます。
よく、「ビタミンB1を多く含む食品」として大豆やきな粉が紹介されることがあります。注意したいのは、大豆がビタミンB1を多く含んでいるのは乾燥重量の場合だけだということです。茹でた大豆は水分を含むため、重さあたりのビタミンB1の含有量は減少しています。大豆やきな粉はビタミンB1を摂取する大元として選ぶのではなく、補助的に用いる程度に考えた方が良いでしょう。
2。食事のバランスに気をつける
ビタミンB1を多く含む食品を摂取したとしても、そのバランスが崩れてしまっては適切な摂取量を維持できなくなってしまいます。
例えば、おかずとして豚肉を使った料理を作った時には、おかずと主食のごはんのバランスが大切です。白米だけで満腹にならないよう、気をつけなくてはなりません。味付けが濃い食事では白米が進んでしまうので、薄味のおかずを作るとビタミンB1の摂取量を維持できるでしょう。
3.アルコール摂取を控える
アルコールを頻繁に摂取する人は、ビタミンB1が不足しがちになってしまいます。これは、アルコールが体内で分解される時にビタミンB1が使われているです。
さらに、アルコールを長期にわたって摂取している方は胃の粘膜にダメージを負っていることがあり、胃潰瘍や胃炎などにかかっている可能性があります。胃炎になっていると、胃からのビタミンB1の吸収も阻害されてしまうので、アルコールを控えることが予防の第1歩です。
4.調理法にも気を配る
ビタミンB1は水溶性ビタミンなので非常に水に溶け易く、調理の過程で失われてしまうことがあります。茹でるなどの調理を行った時には特に注意が必要で、茹で汁の中にビタミンB1が溶け出してしまうので注意しましょう。
また、重曹を使った料理の場合には、アルカリ性の重曹によって食材の中のビタミンB1が分解されてしまいます。こちらも、調理の時には気をつけておきましょう。
このほか、調理法で注意したいのが食材との組み合わせです。はまぐりや、ぜんまい・ワラビなどにはビタミンB1を分解してしまう成分(チアミナーゼ)が含まれています。チアミナーゼは加熱するとその活性を失いますが、食事の時には組み合わせに注意して料理を作るようにしましょう。
もしも脚気にかかってしまったら、治療法は?

単なる栄養分の偏りや栄養分の不足によって脚気になってしまった場合は、不足してしまったビタミンB1の補給を行います。
ビタミンB1を口から摂取した場合、腸や胃などで分解されてしまい、実際に体内に吸収される間に元の食材の中に含まれていた時よりも分量が減少してしまいます。そのため、経口投与(口から薬を飲む)の場合には1日に25mg~50mgのビタミンB1を、症状が改善するまで継続して摂取する必要があります。
症状が重い場合には静脈内に注射や点滴で投与を行うこともあります。基本的には、症状に応じた治療を行います。
栄養不足以外の原因でビタミンB1の不足に陥っている場合には、原因となった病気の治療を検討します。例えば、アルコール依存症によって長年アルコールを摂取し、胃の機能の低下やアルコールの分解でビタミンが不足してしまっている場合や、拒食症などによって極端に肉食を避けていることなどが原因の場合はこれらの治療を行うことが必要です。
脚気を疑った時には自己判断で栄養を補給するのではなく、一度病院で精密な検査を受け、何か病気を抱えていないか確認すると良いでしょう。
まとめ
脚気を予防するためには、栄養分だけでなくその摂取法や調理法に気を使うことが大切です。
ビタミンは、つい不足させがちな栄養素の一つです。食事の時に少しだけ気をつけて、脚気を遠ざける生活を送るようにしましょう。