あなたには治療せずに放置している虫歯はありませんか。虫歯で欠けた歯の先が頬にずっと当たり続けているなど、口腔内の環境が悪いまま放置していると思わぬ病気を引き起こしかねません。ここでは、口腔がん(口の中や唇にできるがん)について、その症状と原因についてみてみましょう。

目次

口腔がんとは?

口腔とは、口の中全体をさします。そして口腔がんは、歯肉口腔底(舌と接している口の中の底部分)、頬粘膜(頬の内側の柔らかい部分)、口蓋(上あご)、口唇にできるがんの総称です。

口の中は自分自身でも確認できる場所なので、他の臓器に比べ異常が確認しやすい部位です。しかし、口腔がんはがん全体の1~3%日本歯科衛生士会より)と患者数が少ないために一般的に知名度が低く、口の中のできものと軽く考えて治療しないままにされることもあります。

早期に発見すれば比較的予後も良いがんなので、定期的に自分の口の中をチェックすることと気を付けるべき症状を知っておくことが大切になります。では、どのような症状があれば専門の病院(かかりつけの歯科医院や耳鼻咽喉科、歯科口腔外科など)で診てもらうべきなのでしょうか。

口腔がんの種類と症状

口腔がんはがんの発生部位により、舌がん歯肉がん口腔底がん頬粘膜がん口蓋がん口唇がんの6つに分類されます。日本人に一番多いのは舌がんで、口腔がんの約50~60%を占めます。

(舌がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん情報サービス|舌がん

口腔がんのほとんどが粘膜表面から発生する(扁平上皮がん)タイプになり、粘膜が隆起したり潰瘍ができたように陥没したり表面に変色(赤いただれ、白いできもの)がみられます。初期では痛みや出血、しこりの確認できないものが多くあり、色が少し変色しているとか、治りにくい口内炎だとかと思われ見過ごされることもあります。症状を見過ごして悪化させないためにも、セルフチェックによる早期発見の心がけが大切です。早期発見のために、チェックする際には以下の点に気を付けましょう。

  • なかなかひかない腫れしこりはないか
  • 頬の裏や舌の下などの粘膜が赤くなったり白くなったりしていないか
  • 治りにくい口内炎はないか
  • 合わない入れ歯などが当たっている箇所はないか、違和感はないか
  • 舌がしびれて食べ物が食べにくかったりしゃべりにくかったりすることはないか
  • ひどい口臭があるか
  • 原因不明の歯のぐらつきがあるか

病気が進行するにつれ、痛みや患部からの出血、食べ物がしみたり、舌を動かしにくくなったりと症状として強く表れてきます。また、がんがリンパ節に転移している場合には、くびやあごの下などリンパの通り道に触れると、しこりが確認されることがあります。

口腔がんにつながるリスク

灰皿-写真

口腔がんの最大のリスクは喫煙です。喫煙は、口腔がんの全原因の8割といわれています。喫煙をする人は喫煙をしない人に比べて、口腔がんになるリスクが約7倍日本歯科衛生士会より)であるという調査の結果もあります。しかし、口腔がんの原因は喫煙だけはありません。

がんのリスクを上げる原因について、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「がん種別リスク要因と予防法」

飲酒時に喫煙をする人はさらに注意が必要です。これは、アルコールがたばこに含まれる発がん性物質の有害な効果を高める作用をもつと考えられるためです。また喫煙は、口腔から奥につながる咽頭にできるがん(咽頭がん)を引き起こす原因にもなります。咽頭がんの種類や症状については「風邪の症状かと思ったら…喉のがん、咽頭がんについて」を参考にしてください。

ほかにも、熱い食べ物や飲み物をとる習慣が口腔がんのリスクを高めます。熱すぎる食べ物が口腔への刺激となり、刺激が過度に続くことで細胞ががん化することがあります。また、合わない入れ歯や詰め物の取れた歯を放置することも、食習慣と同様に一カ所に集中して刺激が続く原因になります。口の中の軟らかい部分に継続的に異物が当たり続けることで、がんができることがあるのです。虫歯を未治療のままにしておくことも、歯が欠けている部分が知らぬ間に頬の内側に当たり続けることで、口腔がんを引き起こす原因になりえます。

まとめ

口の中は自分で確認できる場所ですので、鏡を使って定期的にチェックをしていれば早期発見、早期治療ができる可能性が高くなります。虫歯は放置せずきちんと治療し、虫歯が無くてもかかりつけの歯医者にて定期検診を受けるのもいいでしょう。もし口腔がんと疑しき症状を発見した場合には、すぐに専門の病院にて検査と診断を受けましょう。