鼻やのどに何らかの症状が出たとき、風邪や花粉症のせいだと決めつけていませんか。鼻づまりやのどの痛み、食べ物・飲み物をのみ込むときの違和感など、何気ない症状からのどのがん(咽頭がん)が見つかるかもしれません。ここではその症状についてみてみましょう。

目次

咽頭はどこにある?

咽頭と喉頭の構造-図解

人間ののどは喉頭咽頭からなります。喉頭は舌の付け根から気管につながる箱のような部分で、咽頭は鼻から食道につながる空気や食物の通り道です。咽頭はさらに上中下の3部分に分けられます。

上咽頭は、鼻の奥の部分で、空気の通り道で、鼻と耳がつながる場所です。鼻から空気の出し入れ(呼吸)をしたり、中耳の圧の調整したりする役割を果たします。中咽頭は、口の奥のほう、扁桃(腺)や舌の付け根のあたりです。言葉の発音の調節もここで行われます。中咽頭は、空気と食物の両方が通ります。下咽頭は、喉頭の後ろにあり、食道につづく部分で、食物が通ります。

なお、人体を正面前方から見て下咽頭の手前部分が喉頭になり、ここには声帯があります。咽頭とは別の部位で、呼吸や発声にかかわります。ここにがん(悪性腫瘍)が発生した場合は喉頭がんと呼ばれます。

咽頭がんの種類と症状

咽頭がんはがんの発生部位により、上咽頭がん中咽頭がん下咽頭がんに分類されます。咽頭がんの初期では、のどの痛みや違和感などわかりやすい症状が少なく、がんが大きくなった頃に自覚症状が出ることが多いため、発見が遅れることがあります。

主な症状は、上咽頭、中咽頭、下咽頭それぞれに近接する器官の機能に影響がでてくることによって生じます。

耳や脳に症状が出てくることもあります。また、頸部のリンパ節にがんが転移すると、頸部に腫れやしこりが出ます。

上咽頭がん

上咽頭がんではその場所から、鼻づまりや鼻血など鼻の症状がみられます。また、耳に近いため聞こえづらさ耳の中が詰まった感じがしたり、脳の近くを通る眼球を動かす神経(主に外転神経)に影響して物が二重に見えたりすることがあります。

上咽頭は口を開けても見えづらく、症状も鼻づまりと軽く考えてしまうことがあるため、気が付いたときには進行していることが少なくありません。手術的に切除することが困難な場所です。さらに、脳や耳(横を通るリンパ節)に近いため、局所が治っても転移があり、予後(治療後の経過)が悪いことがあります。

上咽頭がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「上咽頭がん」

中咽頭がん

中咽頭がんでは、食物を飲み込むときに違和感があったり、片方の扁桃が腫れていることで気が付く場合があります。がんが広がると口が開けにくくなることや、息が鼻に抜けて発音しづらくなることがあります。

中咽頭がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「中咽頭がん」

下咽頭がん

下咽頭がんはのどの食道に繋がる場所になるため、食物をのみ込むときの異物感や、声のかすれ耳の周りの痛みといった症状が出ることがあります。下咽頭がんにかかった人の25~30%に、転移ではなく食道に別途がんが見つかることもあります。

下咽頭がんについて、詳しくはがん対策情報センターのサイトをご覧ください→国立がん研究センターがん対策情報センター|がん情報サービス「下咽頭がん」

咽頭がんにつながるリスク

男性医師の手元-写真
咽頭がんでは、喫煙や過度の飲酒を長い間続けることががんになるリスクを高くしていると言われています。部位による固有のリスクについては、下記のものが考えられています。

上咽頭がん

そのほか、上咽頭がんはホルムアルデヒドの取り扱い作業との関連があるといわれています(ホルムアルデヒドとは建築資材や壁紙を貼る接着剤などに含まれている化学物質のひとつで、シックハウス症候群の原因にも挙げられています)。

また、中国南部や台湾、東南アジアで発生率が高いのは、伝統的に食されている中国式塩蔵魚(貯蔵用に塩を加えた魚)でリスクが高まっているという考えが有力になっています。また、EBウイルス(エプスタインバールウイルス)や遺伝も関係しているともいわれていますが、はっきりしていません。

中咽頭がん

中咽頭がんについては最近、子宮頸がんの発生の多くに関与しているウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)が関係することがいわれてきています。日本でもHPVに関係したタイプの中咽頭がんが20%程度あると報告されています。

下咽頭がん

下咽頭がんでは例外的に、輪状後部(声帯近くの背中側の部位)にできるがんについて鉄欠乏性貧血の女性にもみられることがあります。

まとめ

風邪や鼻炎、花粉症などで鼻やのどに軽い症状が出ることはよくあります。鼻づまり、のどの痛みなど、これが咽頭がんの症状だと思う人はそうはいないでしょう。そのような分かりづらいがんになるリスクを減らすためにも、タバコを吸う人や飲酒量の多い人は生活習慣を見直す必要があるかもしれません。