暗くて狭いお口の中。自分では見にくいですし、普段じっくりと観察することはあまりないですよね。何だか痛みを感じるな、そう思った時に初めて覗いてみる、なんて方も少なくないのではないでしょうか。
ふと口の中を見た時に、「あれ?何だか白くなっている…?」「口の中が痛いのだけれど、口内炎とは少し違う気がする…」こんなことがあったら、もしかしたらそれは、「口腔カンジダ症」かもしれません。
口腔カンジダ症の原因とは?

口腔カンジダ症は、口腔内に存在する常在菌“カンジダ菌”という真菌(カビ)による口腔感染症です。これは、約100種類あるカンジダに属する真菌のうち、カンジダ・アルビカンスという真菌(カビ)が起こすと言われています。その病原性は弱く、健康な場合に発症することはあまりありません。
どんな症状があるの?
口腔カンジダ症の症状にはどんなものがあるのでしょうか。
口腔カンジダ症には偽膜性カンジダ症と萎縮性カンジダ症があり、それぞれ症状が異なります。
1.偽膜性カンジダ症
- 口の中の頬・舌・唇に点状や線状、斑紋状の白色の苔(コケ)のようなものが現れます。
- 痛みは殆どありません。
- 苔(コケ)の部分をガーゼなどで拭うようにすると剥がれ、剥がれた後の粘膜面に発赤やびらんが見られます。放置すると口全体に広がります。
2.萎縮性カンジダ症
- 白い苔(コケ)のようなものは認められず、粘膜が赤くなります。
- 舌乳頭が萎縮することにより味覚障害が起こります。
- 義歯の下の粘膜に発生することが多く、義歯性口内炎とも呼ばれています。
- 口腔内に触れたり、お茶など熱いものを飲んだりするときなどヒリヒリとした痛みが強くなります。
このように口腔カンジダ症にも種類があり、それぞれ症状が異なりますが、その多くは偽膜性カンジダ症です。
他にカンジダ菌が原因となる口腔周辺の病気として、カンジダ性口角炎(発赤、びらん、亀裂を認める口角炎)や、 肥厚性カンジダ症(病変が慢性に経過したもので、苔は剥がれにくく上皮が厚くなる)などもあります。
口腔カンジダ症のメカニズム
ここまでで、口腔カンジダ症は“カンジダ菌が原因”ということはもうお分かりいただけましたね。
しかしカンジダ菌は口腔内常在菌で、健康な時にも存在しています。
「え?じゃあ気が付いていないだけで、私も口腔カンジダ症だったりして!?」なんて思った方はいませんか?
その心配はありません。健康な時はカンジダ症を発症しないのです。
それではなぜ口腔カンジダ症になるのでしょうか?ここではそのメカニズムについて見ていきましょう。
口腔常在菌であるカンジダ菌は、普段は他の菌とのバランスを保って増殖しないようになっています。しかし、免疫力が低下するなど体が菌に感染し易い状態になったり、常在菌間のバランスが崩れたりする(=菌交代現象:抗菌薬を使用した場合に他の常在菌が減少し、抗菌薬が効かないカンジダ菌が生き残ってしまう)と異常に増殖し、病原性を示すようになります。こうして発症するのが「口腔カンジダ症」です。
また、このようにして起こる感染症を「日和見感染症」(=免疫力が低下したときにかかる 、様々な感染症のこと)と言います。
こんな時は気を付けて!!

カンジダ菌が存在するだけでは口腔カンジダ症は発症しません。
次のようなリスク因子がある場合は、口腔カンジダ症を発症しやすくなります。
1.全身的因子
- 乳幼児、高齢者、妊婦、病中・病後などの体力や抵抗力の弱い場合
- 長期間にわたるステロイド剤、抗生物質の服用(=菌交代現象によるもの)
- 悪性腫瘍(放射線治療や抗がん剤治療)、血液疾患、免疫不全症、結核、糖尿病など
- HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症
なんらかの病気がある場合や、抵抗力が低下しているなど全身的なことが要因となることがあります。
2.局所的因子
- 口腔乾燥症(唾液分泌量低下)…唾液が少ないとカンジダ菌は粘膜に付着しやすくなります。
- 口腔粘膜の損傷、不適切な義歯の使用、口内炎…粘膜表面に傷が付くと、カンジダ菌が付着しやすくなります。
- 清掃状態不良…口腔内環境が悪化し、カンジダ菌が増加しやすくなります。
このような口腔内の環境が要因となることもあります。特に清掃状態に関してはコントロール出来ることですので、日頃から清潔に保つよう気を付けましょう。また介護をされている方は、介護を受けている方の口腔内と義歯を清潔にしてあげてください。清掃状態が悪く口腔内環境が悪化すると、カンジダ症だけでなく他の病気にも繋がりかねません。
まとめ
いかがでしたか?口腔カンジダ症の大部分は、命を脅かすことはありません。また、適切な治療により比較的簡単に治すことが出来ます。もし、舌・頬・唇などの粘膜が白くなったり、義歯性口内炎などがなかなか治らないような場合には、口腔カンジダ症の可能性があります。またその場合、背後に何らかの病気が隠れていることも有り得ますので、「何だか変だな」と感じるような時には一度、かかりつけの歯科医院で診てもらって下さいね。