蕁麻疹は多くの人が経験するありふれた病気ですが、原因や症状は多岐にわたります。皮膚の赤み、痒み、場合によっては痛さや熱さも感じることがあり、集中力が欠けたり精神的ストレスがかかったりと、患者さん自身が辛い思いをすることも少なくありません。適切な治療を早期に受けるために、今回は蕁麻疹が出たときの治療方法を紹介します。

蕁麻疹の症状や原因については、「かゆすぎる蕁麻疹、その原因として考えられること8つ」 をご参照ください。

目次

蕁麻疹は遺伝する?

蕁麻疹はごく一部の例外を除いて遺伝することはなく、他の人にうつることもありません。

様々な物質に対してアレルギー反応を起こしやすい体質であれば、その体質は子供に遺伝する傾向はあります。しかし、具体的な物質に対してアレルギーを起こすかは、生活する環境の中でも決まります。例えば、両親のどちらかに花粉のアレルギーがあるとその子供も花粉症を発症するというわけではないのです。

一方、遺伝する蕁麻疹としては、血管性浮腫の一部が知られています。

受診の目安は?

軽い蕁麻疹でも何日か続いた場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。特に気を付けたいのが、蕁麻疹がアナフィラキシーの始まりとなることです。

唇、まぶたなどに蕁麻疹ができて地図状に広がっていく、喉が苦しい、吐き気がする、口の中に蕁麻疹ができたときはアナフィラキシーの疑いがあります。大至急、救急病院などを受診しましょう。

蕁麻疹の治療方法は?

寝室で寝る女性-写真

蕁麻疹の症状が現れたら専門医に実際に皮膚を見てもらいましょう。症状が現れたときの様子を写真に撮っておくと診断に役立ちます。医療機関では蕁麻疹の原因・悪化因子の除去と薬物療法を行います。

 

1.原因悪化因子の除去と回避

蕁麻疹の多くは原因不明ですが、検査の結果、原因、悪化因子が分かれば生活から取り除いていきます。

例えば洋服が刺激となって蕁麻疹が現れるのであれば、木綿製などの生地がやわらかくゆったりとした着心地のものを選ぶようにします。汗が原因となる場合は、発汗を促すような刺激物を食べることを避けたり、激しい運動を控えたりして、汗をかかないようにします。このように蕁麻疹の原因が特定できれば、刺激を避けることによって発症を防ぐことができるのです。

2.薬物療法

発症してから1ヶ月以上経った慢性的な蕁麻疹だと、皮膚以外に異常がみられなくても原因を特定するのが難しいことがあります。しかし多くの蕁麻疹はヒスタミンによって症状が現れるので、抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法を主体として行われます。

他の薬剤と組み合わせたり、量を調整したりしながら自分に合う薬を見つけることを目指します。内服療法を続けることで症状が徐々に治まっていくことが期待されているからです。

抗ヒスタミン薬は蕁麻疹の治療の基本となる薬剤ですが、それだけでは治療が進まない場合があります。その時は、補助的治療薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬COX-2高選択的阻害薬と呼ばれる薬剤を使います。

3.日常生活の注意

蕁麻疹は様々な原因が影響して症状が現れますが、原因は分からなくても普段の生活に気を付けることで蕁麻疹になりにくい体質を作っていくことができます。ストレスや疲れがたまっていたり、風邪をひいたときに蕁麻疹になりやすいので、規則正しい生活を送ることが大切です。

特に、心と身体のストレスは、限度を超えると様々な病気の原因となったり症状を悪化させることがあります。睡眠をよく取り、過労に気を付けて適度にストレスを発散させましょう。

熱いお風呂に入って身体をごしごしこすると、その時は気持ちが良くても後で悪化するので避けるようにします。

食事の面では、以下のようなことを意識してください。

  • 肉類や魚介類はできるだけ新鮮なものを食べるようにする
  • 防腐剤や色素を含む食品を控える
  • 過度の飲酒も蕁麻疹には悪影響を及ぼす恐れがあるので、アルコールはほどほどに楽しむ

蕁麻疹はいつ治る?

蕁麻疹の症状は個人によって差があるので、完治する時期を予測することはできません。しかし、症状を引き起こす明らかな誘因がない特発性の蕁麻疹の90%以上は、1年以内に治るものだと考えられています。

蕁麻疹を発症してからの日数が長いほど、また、子供より大人の方が治るまでに時間がかかる傾向がありますが、蕁麻疹の重症度と治るまでの日数に関係はないと考えられています。原因がはっきりしているものに関しては、蕁麻疹を起こす刺激を避けている限りは症状は起こりませんが、原因が分からない蕁麻疹の場合は、自分自身では症状を抑えることが難しく、出没を繰り返すことも珍しくありません。

多くの場合は、薬を飲んでいれば症状が落ち着きますが、薬を止めればまた症状が出るようになります。そのため、発症後一か月以上続くような慢性的な蕁麻疹の多くは長期にわたって薬を飲み続け、症状をコントロールしながら少しずつ薬の量を減らし、薬を中止できることを目指して治療を続けます。

まとめ

蕁麻疹はごく一部を除いて遺伝する病気ではなく、人に移る病気でもありません。蕁麻疹の症状が現れたら皮膚科を受診して、原因物質の除去と薬物療法を行います。蕁麻疹はストレスや過労によって発症することがあるので、規則正しい生活を心掛けましょう。

蕁麻疹が完治する時期についてを予測することはできませんが、医師の指示に従いながら治療を継続して行うことが大切です。