サルコイドーシスは、「肉芽腫(結節)が全身に発生する「サルコイドーシス」って?症状と原因は?」の記事で紹介したように、謎の多い病です。病気の発見から139年経過しても原因はいまだに解明されていません。全身の様々な部位に小さな肉芽腫(細胞が集まって硬くなった結節)ができるのが特徴です。

肺・眼・皮膚・心臓・神経など発生場所の範囲は広く、その場所によって違う症状が起こります。一般的に予後は良好ですが、肺や心臓などに合併症が発症した場合には難治性となるために厚生労働省の指定難病に挙げられています。

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「自然に治る人が多い」不思議な難病

サルコイドーシスは「肉芽腫(にくげしゅ)」と呼ばれる0.2ミリほどの小さな結節が、肺・眼・皮膚・心臓・神経・肝臓・脾臓などに無数にできる病気です。多くの患者さんの予後は良好ですが、一部の患者さんは再発、再燃を繰り返して慢性の経過をたどります。

自覚症状がほとんどなく、健康診断や人間ドックなどの胸部レントゲン検査で偶然発見されたり眼科でたまたま診断される患者さんが増えています。そして、多くの患者さん(約28~70%)が自然治癒するという不思議な病気です(日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会より)。

一方で、肉芽腫が心臓に発生すると不整脈や心不全が起こり、ペースメーカー植え込み術が必要となり重症となることもあります。また、約50%の患者に眼の症状が出現しますが、なかには視力が低下したり失明するなど恐ろしい側面を持っています。また女性は、出産後に症状が悪化することがあり、注意が必要です。

呼吸器系を中心に、複数の検査が必要

レントゲン写真を持つ女性-写真
胸部レントゲン検査からサルコイドーシスが疑われ、体のなかのどこかの部位で肉芽腫が発見されると診断は確定されます。

肉芽腫の発生部位は範囲が広く、全身の臓器に異常が起こる可能性があるため、眼・心臓・皮膚・神経系など、さまざまな検査が必要です。

患者さんの約90%以上に、肺や胸門部の腫れているリンパ節から「肉芽腫」が見つかっているため、一般的に、呼吸器系検査として胸部レントゲン検査や胸部CT(コンピュータ断層撮影)から行われます。その後、次のような検査から医師の判断でいくつか実施され、総合的に判断されます。

血液検査

約60%の患者さんでアンジオテンシン変換酵素(ACE)や血中や尿中カルシウムの値が上昇します。

気管支鏡検査

気管支鏡を使って肺のなかを生理食塩水で洗浄し、免疫細胞の種類を調べたり、気管支粘膜の組織を採取したりして肉芽腫を証明します。

組織検査

肺、皮膚、リンパ節などの組織を採取し、顕微鏡などで肉芽腫の有無を観察します。

ツベルクリン反応

サルコイドーシスになると、約50%の確率で「陰性化」します。

ガリウムシンチグラフィー検査

アイソトープが病変に取り込まれることを利用して全身を観察することで体内の炎症部位を確認します。

蛍光眼底造影検査

眼底検査でブドウ膜炎が起きていないか確認します。

心電図と心臓エコー

重度な不整脈や心不全が起こっていないかなどを確認します。

治療は「ステロイド薬」と「免疫抑制剤」「生物学的製剤」の治療

自然治癒する人が多いため、症状がないのであれば、あえて治療はせずに6ヶ月〜1年の単位で経過を見守ります。一方、

  1. 肺病変の進行
  2. 心病変(重症の不整脈)
  3. 神経病変(顔面神経マヒ、聴覚神経マヒ)
  4. 眼病変(ブドウ膜炎)

などの重篤な合併症が見られる場合はすぐに治療を始めます。

一般的な治療は、「副腎皮質ステロイドホルモン」の投与です。ステロイドにより炎症などの異常な免疫反応を抑えます。眼や皮膚には、ステロイド点眼薬や軟膏を使います。ステロイドの長期服用は副作用を考慮して分量などのコントロールに慎重さが必要です。

最近では「免疫抑制剤」を併用してステロイドの量を少なくする治療も試みられていて、メトトレキサートなどの免疫抑制剤を、1週間に1〜2度内服したり、急速に進行する場合には「生物学的製剤」やステロイドパルスなどの適応となります。

また、ニキビの菌に対する抗菌薬の投与が有効とされる報告もあります。

メトトレキサートや生物学的製剤は関節リウマチでは治療の効果が認められ「保健適応」されていますが、サルコイドーシスでは現在のところ適応外です。

まとめ

サルコイドーシスの発見には定期検診での胸部レントゲンや眼科診察が有効です。治療は、自然治癒を期待した「経過観察することが多くありますが、サルコイドーシスの死亡例の約70%は心臓に関係しているから、定期的な通院と心電図の検査が大切です(東北大学大学院・医学系研究科より)。とにかく、無理をしない・ストレスを避ける・規則正しい生活を心掛けるなどの配慮で心身を休めましょう。また、ステロイド薬や免疫抑制剤の使用は、専門医とよく相談し、治療方針を決定します。