魚鱗癬(ぎょりんせん)という名前を聞いたことがありますか?
魚鱗癬では皮膚の表面が硬くなり、魚のうろこのように剥がれ落ちる皮膚症状がみられます。10種類以上の病型があり、先天性魚鱗癬は難病にも指定されています。魚鱗癬とはどのような病気なのか、治療法などを一緒に見ていきましょう。

目次

魚鱗癬とは

魚鱗癬とは皮膚の表面が乾燥し、厚くなって剥がれ落ちる病気です。皮膚の様子が魚のうろこのように見えるため魚鱗癬と名づけられています。

ひとことに魚鱗癬といっても原因となる遺伝子や症状、部位などによって10種類以上に分類され、症状の重症度も軽度のものから命に関わるものまで様々です。

症状は加齢とともにある程度まで進行してから軽快する場合もありますが、多くは継続して症状が認められます。

指定難病:先天性魚鱗癬とは

数ある魚鱗癬の分類の中でも、生まれつきの異常である先天性魚鱗癬は厚生労働省の指定難病です。先天性魚鱗癬として登録されている方は日本では約200人難病情報センターより)ですが、実際にはこれより多い患者さんがいると考えられます。

先天性魚鱗癬は、症状の特徴・発生の頻度・重症度・遺伝の形式・多臓器の症状の有無などによって、以下6つに分類されています。

  • 尋常性魚鱗癬
  • 伴性遺伝性魚鱗癬
  • 先天性魚鱗癬様紅皮症
  • 葉状魚鱗癬
  • 道化師様魚鱗癬
  • 魚鱗癬症候群(ネザートン症候群、シェーグレンラルソン症候群、KID症候群など)

魚鱗癬の原因

特に先天性魚鱗癬の原因として、遺伝子異常の関与がわかっています。

人間の皮膚には外界からのウイルスや菌、刺激となる物質から身体を守り、身体の中から水分が出て行ってしまわないようにするためのバリア機能がありますが、魚鱗癬の患者さんではそのバリア機能に異常がみられ、皮膚の状態が損なわれてしまうと考えられています。
それぞれの魚鱗癬の種類ごとに特定の遺伝子の異常があり、遺伝形式も魚鱗癬の種類によって異なります。

また、後天性(生まれつきの異常ではない)の魚鱗癬の場合には、橋本病などの甲状腺機能の低下、透析治療によるもの、内臓の悪性腫瘍、サルコイドーシスハンセン病など、他の病気が背景にあることも多いです。

魚鱗癬の検査

皮膚の一部を切り取って顕微鏡で詳しく調べる検査や、遺伝子を調べるための血液検査などが行われます。
魚鱗癬症候群は他の臓器の障害を伴うので詳しく検査することもあります。

魚鱗癬の治療法

現時点では完全に治すことはできません。
皮膚のバリア機能が失われている状態のため、毎日の入浴で皮膚を清潔に保ち、保湿剤やワセリンを塗って十分な保湿を行う治療を行います。
ビタミンA誘導体(レチノイド)の投与を行うこともあります。

出生時に重症の場合は呼吸の管理や輸液の投与、体温調節の維持、感染治療などの治療が行われます。

家庭でのケアとしては、毎日の保湿ケアと、体温調節が行いにくいので部屋の温度着る服の調整なども必要となります。
皮膚の表面が剥がれ落ちるものを鱗屑(りんせつ)といいますが、鱗屑によってたんぱく質が失われやすいので毎日の食事でたんぱく質をしっかり摂ることも大切です。

まとめ

魚鱗癬は病型によってアトピー性皮膚炎の症状を示す比較的軽症のものから、生まれた時から呼吸管理などの全身管理が必要な重症なものまでたくさんの種類があります。

症状と向き合いながら日常生活を過ごせる患者さんが多い一方、重症な魚鱗癬では赤ちゃんの時に死亡することもあります。

先天性魚鱗癬は難病に指定されており、原因や治療法の解明のために研究が進められている病気です。インターネットなどで新しい情報などを目にすることもあると思いますが、気になることがあれば、主治医に伝えてよく相談しましょう。