「最近、唾の量が減っている」、あるいは「目が乾燥しやすくなった」という方は、もしかしたらシェーグレン症候群という病気が原因になっている恐れがあります。シェーグレン症候群については「唾や涙の量が減る…シェーグレン症候群の症状って?」で詳しく説明しています。

唾の量が減っている、目が乾燥しやすくなるといった症状からシェーグレン症候群を疑いますが、どのような検査・治療を行うのでしょうか。この記事ではシェーグレン症候群の検査と治療方法について詳しく説明していきます。

目次

シェーグレン症候群の検査

シェーグレン症候群では、以下の3つの項目に関する検査を行います。

  1. ドライマウスの検査(唾液腺を調べる検査)
  2. ドライアイの検査(涙腺を調べる検査)
  3. シェーグレン症候群で見られる抗体の検査

1.ドライマウスの検査

唾液は唾液腺から出されます。シェーグレン症候群ではこの唾液腺が破壊されてしまうため、唾が出なくなり、口が乾燥しやすくなってしまいます。唾液腺の機能を確かめるためには、いくつかの検査方法があります。

唾液の分泌量を調べる検査としては、「ガムテスト」という検査を行います。この検査はその名の通り、10分間ガムを噛むことで出た唾液を集めます。健康な人であれば10ml以上の唾液が出るとされていますが、シェーグレン症候群の方では10mlに満たない結果が得られることとなります。

また、ガーゼを噛む「サクソンテスト」という検査でも、唾液の分泌量を確認することができます。この検査は2分間ガーゼを噛んでガーゼが唾液でどの位重くなるかを測定します。健康な人であれば2g以上ガーゼが重くなりますが、シェーグレン症候群の方では2g以下になり唾液の分泌が低くなります。

唾液の生成・排泄の様子を調べる検査として「唾液腺シンチグラフィー」という検査があります。唾液腺シンチグラフィーでは、核医学という物質を用いて耳下腺、顎下腺の機能を評価します。検査中にレモンエッセンスを口に含みその刺激で口腔内に唾液が分泌される様子を撮影します。正常な方は、レモンエッセンスにより良好な唾液分泌の反応が見られますが、シェーグレン症候群の方ではレモンエッセンスを含んでも唾液分泌は反応しません。

さらに、MRIという機械を用いて画像を撮ると、唾液腺という臓器が破壊されているか検査することも可能です。さらに、唾液腺の一部を取り、顕微鏡で観察する「組織検査」もあります。この組織検査では、シェーグレン症候群に特徴的な像があるかどうかを探します。

※MRI(Magnetic Resonance Imaging):磁気共鳴画像診断装置の略で、磁気の力を利用して体の臓器や血管を撮影する検査です。

2.ドライアイの検査

涙は涙腺から出ます。シェーグレン症候群では、唾液腺と同様、この涙腺が破壊されてしまうため、涙が出なくなり、目が乾燥しやすくなってしまいます。そこで、検査ではこの涙腺の機能を確かめる「シルマーテスト」あるいは「ローズベンガル試験」という検査を行います。

シルマーテストは下まぶたと目玉の間にろ紙を挟み、どれだけそのろ紙が濡れるかを見る試験です。健康な人であれば5分間で5mm以上濡れるとされています。一方、シェーグレン症候群では眼の角膜という構造が傷ついてしまいます。ローズベンガル試験ではこの角膜を特殊な液体で染め、シェーグレン症候群に特徴的な像があるかどうかを探します。

3.シェーグレン症候群で見られる抗体の検査

シェーグレン症候群では血液検査を行います。その結果で抗SS-A抗体抗SS-B抗体という抗体の結果が陽性になることがあります。この2つの抗体はシェーグレン症候群で高頻度に陽性となるため、その診断に有用な結果となります。

※抗体:異物を除去するため、異物の一部に結合する分子のこと。

 

以上、3つの項目に関する検査からシェーグレン症候群は診断されます。

シェーグレン症候群の治療方法

服薬-写真

シェーグレン症候群を根治する治療方法はありません。つまり、シェーグレン症候群の治療方法は症状に対する対症療法となります。

眼の乾燥に対しては点眼(目に薬液をたらすこと)を行い、涙の補充を行います。涙が蒸発するのを防ぐためにゴーグルを付けることもあります。また、「涙点プラグ」という治療があります。これは、目の涙液が鼻腔内に排泄される涙点というシリコンプラグで塞ぐ治療です。このシリコンプラグによって少ない涙液を目の中に溜めて乾燥症状を軽減します。

一方、口の乾燥に対しては唾液の分泌を刺激する、セビメリンピロカルピンといった薬を用います。

上記の治療に加え、シェーグレン症候群は自己免疫疾患であるため、ステロイド免疫抑制薬といった、免疫系を抑える薬を用いることもあります。

まとめ

シェーグレン症候群の患者さんは口の乾燥や目の乾燥を訴えますが、病気を治す治療方法は存在しません。そのため、シェーグレン症候群で見られる症状に対して治療を行うしかありません。また、約半数近くの患者さんは乾燥の症状のみですが、何らかの新しい病変が出る人もいます。ですから、定期的に健康チェックを受ける習慣を付けておくと良いでしょう。