高血圧は放置していると脳梗塞や脳出血などの脳卒中、心筋梗塞、腎臓病などを引き起こす恐れのある怖い病気であり、日本ではおよそ4300万人(高血圧治療ガイドライン2014より)の高血圧患者が存在しています。
高血圧の薬には作用機序が違う何種類かの薬が存在し、その人の持病や血圧などによって医師が使い分けたり、併用したりしています。今回は高血圧の薬の中でも良く用いられているカルシウム拮抗薬について詳しく見ていきます。
「カルシウム拮抗薬」ってどんな薬?
カルシウム拮抗薬は血圧の薬の中でも最も効きが良いとされ、また副作用も少ないため第一選択薬としてよく用いられています。
有名なカルシウム拮抗薬としては、以下のようなものがあります。
- アムロジン・ノルバスク錠(成分名:アムロジピン)
- アダラート錠(成分名:ニフェジピン)
- アテレック錠(成分名:シルニジピン)
糖代謝・脂質代謝などにも悪影響を及ぼさないため、糖尿病や高脂血症などの合併症の多い高齢者にも使われやすく、狭心症への適応があるものも多いです。
1日1回の服用で効果が表れるものが多いため、症状のない高血圧患者にとっても負担が少なく続けられます。
「カルシウム拮抗薬」はなぜ血圧を下げるのか?
次にカルシウム拮抗薬の作用機序(どうやって薬が効くのか)についてみていきましょう。
血管は平滑筋という筋肉からできており、この血管平滑筋が縮むと血管は収縮されて血圧が上がり、また血管平滑筋が緩むと血管が拡張され血圧は下がります。
この平滑筋細胞膜にはカルシウムチャネルというものが存在して、このチャネルを通して細胞外から細胞内へカルシウムイオンが侵入すると、細胞内のカルシウムイオンの濃度が上がり、平滑筋が縮み、その結果血圧が上がるとされています。
カルシウム拮抗薬はこのカルシウムチャネルに作用し、平滑筋細胞内にカルシウムイオンが入るのを防ぎ血圧が上がるのを抑えます。
「カルシウム拮抗薬」の副作用は?
カルシウム拮抗薬には様々な種類があり、その薬によって副作用も様々です。ここでは、一般的にいわれるものを紹介します。
- 顔面紅潮・頭痛(血圧拡張作用によるもの)
- めまい・ふらつき(過度の血圧降下作用によるもの)
- むくみ・利尿(動脈拡張による末梢うっ血、腎血流量増加によるもの)
- 便秘(消化管の平滑筋弛緩作用によるもの)
- 歯肉肥厚(歯茎のはれのこと)
歯肉肥厚は服用数か月後から症状が出ることが多いですが、ブラッシングをしっかりと行い、歯垢を除去することで予防できます。
「カルシウム拮抗薬」との飲み合わせが悪いものは?
カルシウム拮抗薬として一般的に飲み合わせが悪いものをあげていきます。
薬の種類によって飲み合わせに注意するものも違ってきますので、ご自身が処方された薬について詳しく知りたいときは医師・薬剤師に聞いてみましょう。
処方薬で注意すべき相互作用
血圧を下げる薬
血圧が下がりすぎる恐れがあります。しかし医師が計画的に併用している場合がほとんどですので、ふらつきなどがひどい場合は医師に相談し、自己判断で服用を中止しないようにしてください。
抗真菌薬シメチジン等
爪水虫の飲み薬としてよく使われる真菌薬、また胃薬として使われるシメチジンですが、カルシウム拮抗薬と併用することでカルシウム拮抗薬の作用が増強し、副作用が出やすくなる恐れがあります。
日常生活で注意すべき相互作用
グレープフルーツジュース
カルシウム拮抗薬が初めて処方されたときに、グレープフルーツジュースとの飲み合わせが悪いため避けるよう言われた方は多いと思います。
これはグレープフルーツの中にカルシウム拮抗薬の作用を増強する成分が入っているため、カルシウム拮抗薬の副作用が出やすくなる恐れがあるからです。ほとんどのカルシウム拮抗薬にはグレープフルーツジュースが併用注意とされています。
グレープフルーツジュース以外の柑橘類は併用してもいいの?
カルシウム拮抗薬との相性を悪くする原因として、グレープフルーツの中のフラノクマリン類という物質があげられます。他の柑橘類の中にはこのフラノクマリン類が含まれたり含まれていなかったりするため、すべての柑橘類が併用注意といったわけではありません。
フラノクマリン類がほとんど含まれない柑橘類としては、温州みかん・レモン・カボス・オレンジなどがあり、またフラノクマリン類が含まれる柑橘類としてはスウィーティー・ダイダイ・ブンタン・夏みかんなどがあります。
つまり、オレンジジュース等は併用しても大丈夫ですが、スウィーティー等は注意したほうが良いということになります。
セントジョーンズワート
気持ちの落ち込みを緩和させる心のサポートハーブとして用いられますが、カルシウム拮抗薬と一緒に服用するとカルシウム拮抗薬の効果が薄れる可能性があるといわれています。
まとめ
たくさんある血圧の薬の中で、カルシウム拮抗薬を服用している方も多いのではないかと思います。そのため日常生活においても薬の効果がしっかりと発現できるように、飲み合わせの悪いものは避け、そして食事・運動なども一緒に行い血圧を下げる努力をする必要があるでしょう。