胃がんでは胃痛や食欲がなくなる、肺がんであればせきや痰…といったように症状をイメージしやすいかもしれませんが、腎がんはいまひとつイメージがつかないという方も多いのではないでしょうか?腎がんの種類や原因、症状についてご紹介します。

目次

腎臓ってどんな臓器?

腎臓は、ちょうどわき腹の位置辺りに左右ひとつずつあり、成人の場合は握りこぶし程度の大きさです。肋骨に囲まれており、からだの奥深いところにあります。血液をろ過して尿を作る臓器であると同時に、血圧の調節や造血(血を造る)に関与するホルモンの生成などを行う内分泌器です。

尿を作る腎実質(じんじっしつ)と、腎実質で作られた尿が集まる腎盂(じんう)という組織からできています。腎盂に集まった尿は、尿管(にょうかん)を通って膀胱(ぼうこう)に送られて、体の外に排泄されるしくみです。

どんな種類がある?

腎臓に発生するがんは、発生する部位によっていくつかの種類があります。そして、部位によって細胞の性質が異なるため、がんが持つ特徴や治療法が異なります。主なものについて紹介します。

腎細胞がん

腎実質に発生するがんです。成人に発生しやすく、腎臓にできる腫瘍の約80%を占め、発症は男性の方が多い傾向にあります(家庭医学大辞典より)。放射線治療や化学療法が効きにくいという特徴を持ちます。

ウィルムス腫瘍

ウィルムス腫瘍は主に5歳以下の小児に発生しますが、ごくまれに成人にも発生します。ウィルムス腫瘍の原因は不明ですが、両眼の虹彩がないなどの特定の先天異常の合併が多いといわれています。

腎盂尿管がん

腎盂・腎杯に発生したがんを腎盂がんといいます。

腎盂から尿管、膀胱、尿道へとつながる尿路の内側は尿路上皮(にょうろじょうひ)と呼ばれる粘膜からできています。この粘膜から発生するがんは尿路上皮がんという種類のがんです。

尿路上皮がんは、尿路に多発したり、再発を繰り返すことがあります。腎盂・尿管がんと同時に膀胱がんがみつかるケースや、腎盂・尿管がんの手術後に膀胱がんが発生するケースもあります。

腎がんはどんな人がなりやすいのか?

腎がんは比較的、男性に発生しやすいがんで男女比は約2:1です。また、年齢では50~70歳代に多く、一部例外を除けば高齢者に発生しやすいがんです(ノバルティスファーマ株式会社より)。

性別、年齢以外に、腎がんを発生しやすくする要素はあるのでしょうか。

生活習慣

生活習慣による原因として明らかになっているのは、肥満高血圧たばこです。腎細胞がんになるリスクは、著しい肥満では約4倍に、高血圧では約2倍に増加し、たばこを吸う本数が多いほど腎細胞がんが発症するリスクが増加すると考えられています(日本泌尿器科学会より)。

反対に、適度のアルコール野菜・果物を摂るとリスクが下がる、という報告もあります。

職業

腎細胞がんは、カドミウムなどの重金属(じゅうきんぞく)、トリクロロエチレンなどの有機溶媒(ゆうきようばい)を用いる職業の方に多いといわれています。有機溶媒は尿細管への障害作用が強く、トリクロロエチレンには発がん性があることがわかっています。

遺伝子異常

腎細胞がんの多くに、VHL遺伝子(いでんし)という遺伝子の異常が関与していることがわかっています。VHL遺伝子には、がんの発生を抑えるたんぱく質をつくる役割が備わっていますが、この遺伝子に傷がつくと、腎細胞がんが発生しやすくなります。

この場合、遺伝的に腎細胞がんが発生する可能性があるので、家系内で腎がんが続いている場合は健康診断をうけるなど注意が必要です。

長期間の人工透析

長期間にわたって人工透析を受けている場合、腎細胞がんを発症しやすいことがわかっています。人工透析を受けている患者さんは、早期発見のために年に1回、超音波検査やCT検査を行うことが推奨されています。

腎がんの症状にはどのようなものがあるのか?

腰を抑える男性-写真
腎がんは、初期段階では無症状であることがほとんどです。健康診断や人間ドックなどの検査で偶然発見されることが多い病気といえます。

何らかの症状がみられる場合、腎細胞がんでは以下のような症状が生じることがあります。

  • 血尿(けつにょう):尿に血液が混じり、尿が赤みがかった色になる
  • 腹部のしこり:わき腹のあたりを触ると、こりこりとしたかたまりに触れる
  • 痛み:わき腹、もしくは腰、背中にあらわれる、ズキズキ、シクシクとした持続する痛み

腎臓はからだの奥の方にある臓器で、無症状のままがんが進行することも多く、自分で発見することは難しい病気のひとつです。

尿検査をすればわずかな血液でも検出されるので、健康診断は早期発見に有効な手段となります。毎年定期的に健康診断を受けることをおすすめします。

逆に、症状があって腎細胞がんと診断された場合では、すでにがんが進行している可能性があります。気になる症状がある場合は、泌尿器科を受診しましょう。

まとめ

腎がんは高齢化に伴って、今後ますます増えていく可能性のあるがんといえます。早期には症状がないことが多く、早めに発見し、治療につなげるには定期的に健康診断や人間ドックを受けることが大切です(人間ドックのここカラダのページが開きます)。