腎臓病というと、長くお付き合いをしなければいけないという印象があるかもしれません。確かにそうなのですが、中には治療をすることで治るもの、完治ではありませんが、寛解といって、治ったのと同じ状態になるものもあります。ここでは腎臓病の治療にはどのようなものがあるかを説明していきます。

ここに出てくる病気については「どんな病気があるの?わかりやすい症状はある?子供の腎臓病」を参考にしてください。

目次

腎臓病の治療その1~経過観察~

原因を探る間や、すぐに治療が必要という状態ではないとき、「様子を見ましょう」と言われることがあります。様子をみるだけ?ということを不安に思うかもしれませんが、大切な治療期間です。

定期的な受診・検査を重ねながら、お子様の変化にすぐに気付くことができるようにしておくのです。おうちでも、おしっこの回数や色や量、お子様の様子などを観察してくださいね、と医師から指示されることがあります。具体的に気を付けるべき症状(血尿、むくみなど)やその程度について、詳しく説明を受けるようにしましょう。

腎臓病の治療その2~病院で行う治療~

薬物療法

腎臓病の治療でよく使われるお薬は、次のようなものがあります。

  • ステロイド ・・・ ネフローゼ症候群
  • 抗菌薬 ・・・ 尿路感染症、膀胱尿管逆流症
  • 利尿薬 ・・・ むくみがひどいとき
  • 降圧薬 ・・・ 血圧が高くなったとき
  • 免疫抑制剤 ・・・ ネフローゼ症候群の再発、長期化の場合

小児のネフローゼ症候群は90%がステロイドで寛解します小児総合医療センターより)。ただ、再発率も高いという特徴があります。

手術

お子様の年齢や症状をみながら手術が有効と判断されるものがあります。手術が提案される病気は多くはありません。

  • 水腎症 ・・・ 尿の流れの悪い部分の一部を切除して、健常な部分とつなぐ手術があります。
  • 膀胱尿管逆流症 ・・・ 逆流そのものを止める手術があります。

透析腎移植

腎臓の機能がかなり悪くなった状態(腎不全)で、体の老廃物を尿の中に出す力がなくなってしまうと、命にかかわります。腎不全になったときには、透析や腎移植が必要になります。小児の透析は腹膜透析といって、おなかに透析のための管を入れて行います

腎臓病の治療その3~自宅で行う治療~

手のひらの上の家のオブジェ-写真

食事療法

腎臓には体の中の老廃物を処理するという仕事があります。食事に気を付けることで、老廃物を減らし、腎臓の負担を軽くすることができる、大切な治療です。食事療法のポイントは次のようなものがあります。

たんぱく質をとりすぎない

たんぱく質が多いと老廃物が多くなり、腎臓の仕事を増やしてしまいます。

塩分を控える

腎臓の機能が落ちていると、ナトリウム(塩分)を排泄する機能も落ちてしまいます。ですから塩分をとりすぎると、高血圧、むくみの症状が出て、腎臓の負担が大きくなってしまいます。「控える」目安は状態により3~6gの指導を受けることが多いです。

エネルギー量(カロリー)は、減らさない!

エネルギーが足りないと、体内のたんぱく質が壊されて、老廃物が増えてしまいます。せっかくたんぱく質に気を付けているのに、これでは意味がなくなってしまいます。カロリーを制限する必要はないので、1日の必要量を目安に、エネルギーはしっかりとりましょう。炭水化物を多く取ることを勧められます。

カリウム・リンをとりすぎない(とってはダメ、ではない!)

カリウムには神経の伝達をスムーズにしたり、心臓のリズムを整えたりするような働きがあります。しかし、血液中に多くなりすぎると、高血圧不整脈を引き起こすことがあります。腎臓の働きが弱いと、体の中の余分なカリウムを排泄できず、体に溜まってしまうため、注意が必要です。野菜や果物(バナナ・アボガド)、豆類に多く含まれています。

リンは骨や歯を作る成分のひとつです。カルシウムと結びついて仕事をします。腎機能が弱いと、前述のカリウム・リンの排泄がうまくできなくなります。リンが体に増えると、それに結びつくカルシウムが骨から出てしまうため、骨がもろくなってしまいます。

多くなりすぎたリンやカルシウムが血管に沈着して、動脈硬化の原因になることもあります。リンは乳製品に多く含まれています。また添加物としても使用されるため、外食や加工食品をよく使う方は取りすぎになりやすいので気を付けましょう。

また、症状が悪化すると貧血となることもあります。

安静

運動が制限されることや、「〇日間は安静に」と指導されることがあります。激しい運動は腎臓に負担をかけてしまうので、病気の様子によっては運動ができない期間があります。また、寝ている状態は腎臓の回復には一番良い状態です。お子様が自宅で安静にするのが難しい場合は、安静が必要な期間は入院することもあります

状態が安定した後の透析

透析となった場合、体の状態が安定するまでしばらくは入院します。小児で行われる腹膜透析は自宅でも行うことができます。入院中に、透析方法を教えてもらいながら、体の状態が安定して、ご家族やお子様自身が透析を安全に行えるようになると、退院して自宅で透析を続けることになります

治療をすれば、治るの?どう付き合っていけばいいの?

3人で手を合わせている様子-写真

尿路感染症、急性腎炎など、治療により治るものもあります。しかし、慢性のものでは「治る」というより、安定した状態を保ちながら、お付き合いするようなものも多いです

食事療法や、運動を制限されることもあり、お子様にはどうしてもストレスがかかります。そのような状況はご家族にもストレスのかかる状態でもあります。だからこそ、わからないことや不安なことがあれば、すぐに主治医に相談し、悩みを抱え込まないようにしましょうご家族の不安が少ないほうが、お子様も安心して治療を続けられることと思います。

まとめ

腎臓の病気はとてもたくさんありますが、治療としては今回みてきたものの組み合わせで進められます。病気とお付き合いしながら、気が付いたらよくなっていた、ということもあります。不安が先に立ってしまう病気ではありますが、目の前のお子様の状態に応じていくことが大切です。どうたらいいかな、と思ったらどんな小さなこと、と思っても、すぐに主治医に相談して、心配を大きくしないようにしたいですね。