目次

突然、呼吸がしづらくなり、手先がつって気が遠のいていくような症状を経験したことはありませんか?肺や呼吸器系の病気ではないのに、このような症状が起こるおもな原因は過換気症候群です。

過換気症候群とはどのような状態なのでしょうか?過換気症候群の原因や症状について詳しく解説します。

過換気発作が起こるメカニズム

呼吸が頻回となると、換気しすぎること(過換気)により体内の二酸化炭素が低下します。

生理学的な話になりますが、人間の血液の酸性やアルカリ性を示す指標である水素イオン濃度(pH)は、正常時はpH7.4±0.05という狭い範囲に保たれています。これが酸性に傾いた状態(pH7.35以下)をアシドーシス、アルカリ性に傾いた状態(pH7.45以上)をアルカローシスといいます。

このpHの均衡には二酸化炭素が深く関与しています。過換気症候群は、頻回の呼吸が原因となって二酸化炭素が失われ、血液がアルカリ性に傾いた、一時的な呼吸性アルカローシスの状態です。

過換気症候群の主な原因はストレス

呼吸が頻回になる原因の多くは、不安、緊張、号泣などの情動性のストレスですが、発熱や痛みなど身体的なストレスによって起こる場合もあります。

比較的若い女性でストレスを感じやすい人に多くみられ、集団パニックや集団ヒステリーと言われる状態も、不安や恐怖の連鎖により集団で過換気症候群に陥った状態とみられています。

過換気症候群の症状とは?

 パニックのブザー

血液がアルカローシスの状態になると、手の震えや筋肉のしびれ、痙攣が起こり、ときに失神を起こすこともあり、過換気症候群の場合も、呼吸困難に加えてこうした症状が表れます。

多くの場合、不安が基調にあることから症状を強く感じやすく、呼吸困難感を解消しようとますます頻呼吸になる傾向があります

このような過換気症候群の症状は、一見重篤にみえます。しかし、下記のような重篤な疾患による過換気でなければ、生命にかかわることはありません

安易な判断は危険!ほかの病気との鑑別や関連も

過換気症候群を引き起こす呼吸性アルカローシスは、症状だけで診断することはできません。

医療機関では動脈血を採取し、pHとPaCO2(二酸化炭素分圧)を確認して、その診断を行います。また肺塞栓などの急性の呼吸器疾患や不整脈によっても、過換気を生じ、呼吸困難感や、失神を起こすことがあり、症状のみで判断することは適切な対処の遅れとなり危険です。

過換気症候群は、このようなほかの疾患がないことを確認したうえで診断されます

また、パニック障害などの不安発作のひとつとして過換気発作を起こすことがあります。過換気発作を繰り返して起こす場合には、このような病気が潜んでいることがありますが、その区別は難しく、服薬治療をしながら経過を観察する場合があります。

まとめ

過換気症候群は過剰な頻呼吸によって体内の血液がアルカリに傾くことによって起こる症状で、その多くは不安や緊張などの精神的なストレスが原因となって起こります。

生命にかかわるものではありませんが、発作が起こると不安によって症状が増幅しやすく、正しく対処することが必要です。