急性候頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)という病気をご存知でしょうか?風邪だと思って放っておいたら「息ができない…苦しい、助けて、救急車を呼んで!」。こんなことになる場合があります。急性喉頭蓋炎とはいったいどんな病気なのでしょうか?知っておくといざというとき役立ちます。
気道をふさいでしまう病気
急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)は、病名からも察しが付くように喉の奥の気管との境目にある喉頭蓋に急性の炎症が起きる病気です。喉頭蓋は、食物がのどを通過して食道に入るときに、隣接する気管に間違って食べ物が入り込まないよう蓋(ふた)をして保護する役割をしています。ですから喉頭蓋が炎症し腫れると気道を塞いでしまう可能性があり危険です。
急性喉頭蓋炎は大人も子供もかかる可能性があり、その原因はほとんどが細菌感染です。原因となる菌の多くはインフルエンザ菌b型で、ヒブ(Hib)とも呼ばれます。名前は似ていますがインフルエンザウイルスとは全く関係がありません。
風邪に似ているけど風邪じゃない。初期症状は?
急性喉頭蓋炎の初期症状は風邪と似ています。初期の段階で普通の風邪との鑑別するのは難しいかもしれませんが、急性喉頭蓋炎の場合、のどの痛みが強いわりにくしゃみや鼻水・咳などの症状が無いか、あったとしてもそこまで強くありません。
初期症状
- のどの痛み
- 唾を呑み込んだときに痛い
- よだれ
- 話しにくい
- 食べ物が呑み込みづらい
- 38.0℃以上の発熱
急激に重症化。すぐに病院へ!
急性喉頭蓋炎の特徴は、急激に重症化する恐れがあることです。約半数近いケースで発症から24時間以内に症状が重くなり、医療機関の受診をしています。呼吸困難がある場合には、病院まで座った姿勢(半坐位)で行くよう勧められています。横になった状態では、気道の閉塞が悪化し窒息する可能性があり危険です。
急性喉頭蓋炎を専門に扱うのは、耳鼻咽喉科のドクターです。病院では、耳鼻咽喉科または救急担当の医師が、喉頭鏡や内視鏡で喉頭蓋の腫れを確認したり、X線で喉頭蓋の腫れを写し出し診断と重症度の分類をしたりします。血液検査で白血球数やCRP(炎症の程度を測る)の増加が確認できます。
急性喉頭蓋炎の合併症に深頸部膿瘍(しんけいぶのうよう)という病気があります。深頸部膿瘍になると、喉頭蓋の炎症が頸部の組織に広がり膿瘍(膿が充満した状態)をつくり、敗血症を起こし死亡することもあります。
重症化したときの症状
- 激しいのどの痛み
- 息が吸いづらい
- 吸気時にヒューヒューと音がする
- 意識が薄れる
- 声がくぐもる
- 話しにくい
- 口が開けにくい
- 唇や手が紫色になる
- 顔色が蒼くなる
重症度の分類
I期 喉頭蓋の軽度腫脹(腫れが他の部分に広がっていない)…薬で対処できる段階
II期 喉頭蓋の中等度腫脹(炎症が広がり声帯や気道にも及んでいる状態)…入院を必要とする段階
III期 喉頭蓋の高度腫脹(腫れが気道をふさぎ、窒息する恐れのある状態)…緊急に気道を広げる必要がある段階
治療はまず気道を確保すること
薬物により炎症を抑える
治療は、喉頭蓋の炎症を抑えるために、セフェム系・ペニシリン系・クリンダマイシンなどの抗生物質や抗炎症効果のステロイドが投与されます。早期に薬物による治療を開始できると重症化を防ぐことができます。
気道確保
唇や手足の先が紫色になったり、明らかな呼吸困難が見られる場合には、気道を確保するため緊急にメスで気管を切開します。また、気管内にチューブを挿管して気道を確保する方法もあります。気道の確保が間に合わないと、脳に酸素が行き渡らず低酸素脳症を起こしたり窒息して死に至ることがあります。
急性喉頭蓋炎はワクチンで予防できる
急性喉頭蓋炎の原因菌のひとつであるインフルエンザ菌 b型は、ワクチンで予防できます。ヒブワクチンの接種により、小児が急性喉頭蓋炎にかかるリスクは年々少なくなっています。日本では、小児は自治体によりヒブワクチンの接種を無料で受けられますが、有料の地域もあります。
まとめ
のどの痛みには風邪として対処するのが普通ですが、急激に症状が重くなった場合には、急性喉頭蓋炎の可能性もあることを思い出してください。呼吸困難があるときには、命に関わりますからすぐに救急を受診してください。