風邪をひいて咽頭(のど)がズキズキ痛んだり、食事のときに痛くて食べ物が通らないなど、喉の痛みで辛い経験をしたことがある人は多いと思います。

咽頭は空気の通り道(気道)と食べ物の通り道(食道)という2つの役割を果たしています。そのため常に外部と接しており、空気中に漂うさまざまな細菌やウイルスに常にさらされています。

この咽頭に何らかの原因で炎症が起きることを「咽頭炎」といいます。今回はこのズキズキして辛い咽頭炎に悩む方のために、その痛みの原因と対処法について解説します。また、記事後半で幼児の咽頭炎についてもふれています。

目次

咽頭炎は咽頭部分の炎症、原因による分類

咽頭炎は、いわゆる「のどかぜ」ともいわれます。喉の粘膜は外部からのウイルスの侵入を阻止する役目を持っています。しかし、疲労やストレスが蓄積されると、喉の粘膜に付着する粘液の分泌量が減少し、空気中に存在するさまざまなウイルスをブロックすることが難しくなります。

粘膜に付着したウイルスに反応することで炎症を起こし、痛み出したり、腫れた状態になることを「咽頭炎」といいます。特に季節の変わり目など、気温が大きく変化する時期も、ウイルスに感染しやすいとされています。咽頭炎には炎症が発生する原因により、3つの種類があります。

急性咽頭炎

ウイルス(アデノウイルスやコクサッキーウイルス)や細菌溶連菌)が原因でのどに炎症を起こすものをいいます。

慢性咽頭炎

急性咽頭炎をくり返し慢性化した状態を慢性咽頭炎といいます。また、タバコやお酒の刺激も原因となります。最近ではPM2.5や黄砂などの大気汚染や逆流性食道炎も原因のひとつといわれています。

咽頭特殊感染症

クラミジア梅毒など(性感染症)がのどへ感染した場合や結核菌などの特殊な細菌が感染した場合にそう呼ばれます。

この症状は咽頭炎?疑うべき症状

次のような症状が出る場合には咽頭炎が疑われます。

喉の症状については、慢性咽頭炎・急性咽頭炎・咽頭特殊感染症いずれの場合にもほぼ共通しています。喉の症状以外にも、発熱や身体のだるさといった全身の症状が出る場合があり、特に咽頭特殊感染症の場合には原因となっている疾患の症状が出ます。

ウイルスや細菌が原因となる急性咽頭炎や、性感染症が原因となる咽頭特殊感染症の場合には、周囲の人にうつしてしまう可能性があるため、早めに気づいて対処する必要があります。

繰り返さないために!咽頭炎の治療とセルフケア3つのポイント

基本的な治療について

細菌性の急性咽頭炎の場合には抗生剤が処方されますが、ウイルス性の場合には特効薬はないのでのどの痛みを抑える薬が処方されます。他方、慢性咽頭炎の場合には、炎症を抑えるようなうがい薬や内服薬が処方されます。

いずれも、のどの痛みによって、仕事や学校など普段の生活に支障が出たり、声を出すのも一苦労だったり、痛みのせいで不眠気味になった場合は、解熱鎮痛剤を飲んで痛みを和らげるのも一つの方法です。

なお、咽頭特殊感染症の場合には、原因疾患の治療を行います。

咽頭炎の痛みを和らげる「うがい」の効果

のどの粘膜が炎症を起こし、赤くなったり腫れたりした場合は、うがい薬によるうがいが、咽頭痛の症状を和らげるのに有効であるといわれています。うがい薬の中でも、特にポピドンヨードと呼ばれるものには、ウイルスに抵抗する作用や殺菌作用があるといわれています。ポピドンヨードなどのうがい薬を使ってうがいすることは、のどを守るためには非常に重要と考えられています。

また、咽頭炎を「予防」するという意味でも、日頃からうがい薬を使用してうがいをすることは、とても有効な方法であるとされています。もちろん、咽頭痛になった場合、うがいだけでなく、室内環境を適切な湿度に保つことに心がけ、タバコやお酒も控えなければなりません。

セルフケア3つのポイント

急性咽頭炎を何度も繰り返すと、慢性咽頭炎に移行するケースがあります。繰り返さないために、病院での治療と同時にセルフケアも重要となります。

1.手洗いうがいをする

菌はドアノブや蛇口など、日常生活で触れるところに存在しています。人は生活する上でそれに接する機会があり、手洗いをすることで感染を防御する必要があります。また、うがいは先に述べたとおり、のどに付着した菌を除去し、防御力を高める働きがあります。

2.タバコを吸わない

タバコの煙は正常な粘膜機能を低下させ、ウイルスなどの侵入を簡単にしてしまいます。のどの痛みを感じる場合ばかりではなく、からだの免疫機能(防御機能)が低下しているとき(疲れているときなど)はできるだけ禁煙しましょう。

3.アルコールを飲み過ぎない

大量のアルコールも免疫機能を低下させる原因となります。適度な量の飲酒を心がけましょう。

発熱も?幼児の咽頭炎の症状

診察で喉を診られるこども-写真

幼児の咽頭炎も、大人と同じようにウイルスや細菌が原因となって発症します。幼児の咽頭炎は喉のいがらっぽさという症状が特徴です。喉の症状だけにおさまる場合には、しばらく安静にすることで自然と回復します。

しかし、周囲の器官にも感染が拡大することがあり、扁桃が腫れた場合には扁桃炎といいます。咽頭炎が治った後も扁桃炎の症状(扁桃の炎症や肥大など)が残る場合があるので、この点は注意が必要です。

また、鼻かぜの一部としての咽頭炎レンサ球菌性咽頭炎の場合には、発熱が伴います。そのうちレンサ球菌性咽頭炎はとても稀ではあるものの、リウマチ熱糸球体腎炎・壊死性筋膜炎・毒素性ショック症候群など重大な症状を引き起こす場合があるので注意が必要です。

喉の症状といっしょに高熱が出ている場合には、早めに医療機関にかかるようにしましょう。

まとめ

疲労やストレスで体の抵抗力が弱くなると、咽頭炎にかかりやすくなります。普段から規則正しい生活を心掛けること、また日頃からうがいを心がけることが咽頭炎からの予防につながります。もし痛みがひどい場合は、解熱鎮痛剤の服用も良いですが、まずは医療機関を受診し、原因をつきとめることをお勧めします。