子供はよく風邪をひきます。高い熱が出たり、咳や鼻水がひどかったりと心配なことはたくさんあると思います。多くの場合には自然によくなっていきますが、その中でも注意したい症状がみられた場合は、医療機関の受診が必要です。ここでは、その注意したい症状について述べていきたいと思います。お子さんが風邪をひいた時の参考にしてみてください。

目次

子供の風邪とは

子供の風邪はよく「喉の風邪」や「おなかの風邪」と言われますが、ここでは最も多くみられる鼻や喉などの「上気道」の風邪(感冒)についてお話します。

風邪にかかった場合の症状は発熱、鼻水喉の痛み頭痛倦怠感食欲低下などがあります。

風邪の原因は、ウイルスによるものです。ウイルスには数万~数十万種があるといわれていますが、子供の風邪の原因になりやすいのは下記のようなウイルスです。

これらのウイルスは決して珍しいものではなく、至るところでみられます。症状のある人の咳からの感染(飛沫感染)や、ウイルスがついているものに触れ、そのウイルスが口に入ることによる感染(接触感染)が一般的です。

ウイルス?細菌?

人に感染して何らかの症状を引き起こす原因の多くは、細菌ウイルスです。ここでは、細菌とウイルスの違いをいくつかご紹介します。

まずは大きさです。細菌はµm(1000分の1mm)程度、ウイルスは10~数100nm(100万分の1mm)程度の大きさです。

また、細菌は条件が揃えば、人の体内に限らず環境中でも自分で増えることができます。しかしその一方、ウイルスは自身の力のみでは増えることができず、感染した細胞を巧みに操ることで増えていきます。

他にも細菌とウイルスの違いはさまざまあります。しかし本記事のテーマである「医療機関を受診するべきかどうか」という観点からの一番大きな違いは、細菌には抗生物質が有効である一方、ウイルスには抗生物質が効かないことです。ごく限られたウイルス(インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど)しか治療薬はなく、大部分のウイルスを退治できる治療薬はありません。そのため、ウイルスによる病気では対症療法(症状をやわらげる治療)をメインに行うことになり、後述する通り風邪の場合には医療機関への受診は必ずしも必要ではなく、自宅でのケアで充分対応可能です。

注意が必要な症状は?

子供の泣き顔

発熱・高熱

子供の風邪では、発熱そのものが大きな問題になることはありません。もちろん、発熱・高熱の場合には頭痛や倦怠感などを訴えますが、脳に影響を与えたり、後遺症を残したりすることなどはほとんどないと考えて良いでしょう。

発熱そのものよりも、発熱と同時にけいれんや意識障害を起こさないか注意する必要があります。また、発熱が続く場合には水分摂取が少なくなり、脱水を起こすことがあります。子供は大人と比べて体の中で水分が占める割合が多く、特に脱水になりやすいので注意が必要です。

発熱で注意しなければならないのは、生後3ヶ月頃までの小さいお子さんです。この頃はまだ母親からの免疫が体の中にあり、風邪にはかかりにくい時期です。その頃に発熱した場合には、風邪以外の重大な病気にかかっている可能性があるため医療機関への受診が必要です。

咳・鼻水

発熱もそうですが、咳や鼻水もウイルスから体を守るための働きの1つです。正常な反応であり、無理に止める必要はありませんが、注意が必要な場合もあります。

RSウイルスに感染した場合は、強い風邪症状が特徴です。呼吸困難喘鳴(呼吸の時にぜいぜいする)を認め、気管支炎肺炎に至ることもあります。また、生後数ヶ月の乳児がかかった場合には無呼吸発作を起こすこともあり、注意が必要です。また、心臓や肺に生まれつき病気を持っているお子さん早産児も風邪症状が重症化しやすいため、早めの医療機関への受診が推奨されます。

クループにも注意が必要です。クループは風邪の症状が出現してから数日後に、声がかすれたり嗄声/させい)、ケンケンした高い音の咳を認めたりします(「犬が吠えるような」「オットセイの鳴き声のような」と言われます)。これはウイルスに感染して、喉の一部がむくむことで起こります。稀ですが、クループになった場合、呼吸困難に至ることもあるので注意が必要です。

喉の痛み

喉の痛みを認める場合にも注意が必要になることがあります。

一般的な風邪でも喉が痛くなることはありますが、A溶連菌と呼ばれる細菌による感染でも喉が痛くなります。A群溶連菌による感染の場合にはウイルスによる感冒とは異なり、抗生物質による治療が効果的です。

また、突発的な高熱と共に突然声がかすれたり、何かを飲み込む時に痛み(嚥下痛)を認めたりする場合には急性喉頭蓋炎と呼ばれる緊急性の高い病気の可能性もあります。こうした症状を数時間の経過で急速に認める時には、注意が必要です。

医療機関を受診した方がいい?

 

風邪をひいた時に、必ずしも医療機関を受診する必要はありません。

ただし、先ほど述べたような注意すべき症状を認める場合には医療機関を受診した方がいいでしょう。

症状が長引いて、水分が十分に摂れていない場合にも受診しましょう。

また、インフルエンザウイルスやRSウイルス、アデノウイルスなどについては医療機関で検査ができます。兄弟や周りへの感染の可能性を考えると、検査を受けて分かっていた方がいいかもしれません。

平日に風邪をひいて、少し長引きそうな場合には週末や連休に入る前に一度医療機関を受診しましょう。

まとめ

子供はよく風邪をひきます。高い熱が出たり、咳が強かったりすると心配になりますが、心配になり過ぎずに、注意が必要な症状がないかを見ながら様子を見ていきましょう。