目の悩みとして、目がゴロゴロする・ショボショボするという症状を訴える人が多くいます。このような症状があっても、疲れ目だろうと放置している人もいるかもしれませんが、実はその症状は「マイボーム腺機能不全(MGD)」かもしれません。マイボーム腺機能不全(MGD)のメカニズムや症状についてみていきましょう。

目次

マイボーム腺機能不全とは

目は涙の膜で覆われているため常に潤っている状態ですが、この涙がすぐに蒸発してしまわないようにしなければなりません。このとき、目の潤いに一役買っているのがマイボーム腺です。

涙は「油層」と「液層」の二層構造になっています。液層だけだとすぐに水分が蒸発して乾いてしまうため、液層の上に油層が覆いかぶさって涙の蒸発を防いでくれているのです。マイボーム腺は、この油層の油分を分泌する器官です。

マイボーム腺機能不全とはマイボーム腺の働きが低下することをいい、マイボーム腺から正常に油分が分泌できなくなった状態です。油分の分泌量が減少してしまう分泌減少型と、油分の分泌量が過剰になる分泌増加型の2つにわけられますが、日本では圧倒的に分泌減少型のほうが多いといわれています。

加齢によって体のいろいろな機能が低下しますが、マイボーム腺も加齢により働きが低下してしまうため、マイボーム腺機能不全は高齢者に多く見受けられます。実際に60~70代の約3割にマイボーム腺機能不全の症状が見られるともいわれています(長崎市医師会 長崎新聞健康欄より)。

どんな症状があるの?

マイボーム腺機能不全になるとどのような症状があらわれてくるのでしょうか。よくある症状としては次のような症状があります。

  • 目の乾き
  • ゴロゴロとした異物感
  • 目の充血
  • 目の灼熱感
  • 目の疲れ

涙は悲しいときなどに流れるだけではなく、常日頃から目の表面を潤すという役割をもっています。瞬きをすることで目の表面には涙の膜がはられ、目の乾燥を防いでくれています。涙の膜があることでゴミや異物や外からの刺激からも目を守ってくれているのです。

また、目の角膜(黒目)には血管がないためそのままでは酸素を取り入れることができません。そこで、涙を通して酸素や栄養を角膜の細胞に運んでいるという大切な役割も担っているのです。

さらに、マイボーム腺機能不全があると、水分の蒸発を防いでくれる油分の分泌が少ないために涙がすぐに蒸発してしまい、ドライアイの原因となります。

マイボーム腺機能不全の治療法

温泉とサルと湯気-写真

目の乾き・異物感・疲れ目などマイボーム腺機能不全の症状は実にさまざまですが、症状が出ているのであれば治療の対象となります。病院で処方されるお薬の他には、以下のようなマイボーム腺に対するケアがあります。

温罨法(おんあんぽう)

マイボーム腺の中で油分が固まってしまうと出口が詰まってしまい、油分の分泌が減ってしまいます。温罨法は、まぶたを温めることによって固まってしまった油分を溶かし、詰まりを緩和させるという方法になります。

まぶたを温めるためには、ホットタオルなどを使用するとよいでしょう。最低でも5分以上は温めるのがポイントです。さらに温めてから上まぶたは上から下に、下まぶたは下から上にとまぶたの縁に向かってマッサージをおこなうとより効果的です。

お風呂で行ってもいいですし、最近ではホットアイマスクなどまぶたを温める市販のグッズも販売されているので、そういったものも上手く利用するとよいでしょう。

眼瞼清拭(がんけんせいしき)

まぶたの縁が汚れているとマイボーム腺の出口が詰まってしまったり、ときには炎症や細菌感染をおこしてしまったりすることもあります。また女性では、アイメイクなどが綺麗に落とせていないとその汚れによってトラブルを引き起こしてしまうこともあるのです。

そうならないためにまつ毛の生え際などを洗浄したり拭きとったり(眼瞼清拭)して、まぶたを清潔にする必要があります。眼瞼清拭は、上述の温罨法と一緒におこなうとより効果があるといわれています。ただ、まぶたの縁はとても繊細な部分なので、自己流でおこなうのではなく眼科医の指導の元おこなうようにしましょう。

「ドライアイの治療のように、目薬で水分を補えばいいのでは?」と思うかも知れませんが、マイボーム腺機能不全は蒸発を防ぐ油層の問題です。点眼薬で涙の水層を補っても油層に問題があると水分は蒸発しやすいため効果が十分ではありません。こういったセルフケアでおこなえる温罨法や眼瞼清拭などを併用しておこなうことがマイボーム腺の機能を保つには効果的です。

まとめ

目の不快感を訴える人の中にはマイボーム腺機能不全が原因の場合がありますが、まだ広く認知されていないこともあり見過ごされているケースもあります。なんとなく目に違和感がある、疲れ目がなかなか治らないなどという場合は、一度眼科を受診してみるとよいでしょう。いつも感じていた目の不快感がマイボーム腺機能不全の症状だったということもあるかもしれません。