排便は、習慣化しやすい反面、いつもの時間にトイレに行けなかったり、環境が変わったりすると、あっという間に便意を消失し気が付くと便秘になってしまっていることがあります。便秘になると腹痛硬い便を排泄する際に肛門痛を伴うこともあります。今回は、そんなつらい便秘の原因や病気について解説します。

目次

便秘とは?

便秘とは個人の生活歴や捉え方により異なりますが、一般的には便が滞った、または便が出にくい状態と定義され、排便回数や排便量については、個人差が大きく食事の内容や食べた量によっても変動します。

便秘の状態を一言でいうと、

  • いつもの頻度で排便がない(一般的に3~4日以上排便がないと便秘と言えます)
  • 便の量が減った、便が細い
  • 硬い便、兎糞(とふん:うさぎの糞のような硬さと形)

等と表現される方が多いです。

口から食べた食物は食道→胃→十二指腸→小腸→大腸へと送られ、大腸内に届いた食物残渣(しょくもつざんさ:カス)は、水分を吸収しながら最後は直腸に行きます。

そこで普通であれば便意を催しますが、我慢してしまうと一旦便意が消失します。

そうすると、大腸は水分を吸収し続けてしまいますので食物残渣は更に硬くなって、便秘になります。

小腸と大腸の役割って?

経口から摂取した食物は、胃でかゆ状にした後、胆汁・膵液・腸液などの消化液を混ぜ込み完全に消化して、小腸で栄養分を、大腸では水分を吸収し全身に血液を通じて送っています。

さらに大腸には、驚くほどの細菌が生息しています。大腸内の細菌の集団は細菌叢(さいきんそう)と呼ばれ、免疫に関与したりビタミンを作ったりといった重要な働きをしています。この細菌叢は便通にも影響を及ぼしており、現在も研究が進められています。

腹痛はどうして起きる?

腹痛は、胃や腸に異常事態が起きているというサインの一つと考えます。

硬い便が通過したり、もしくは内臓の働きを便やガスが圧迫したりした時に神経が刺激され大脳に痛みとして伝達されます。

悪い物を食べた時には、早く身体の外へ排泄しようとして下痢による腹痛が起きます。

便秘であっても下痢であっても、身体にとって異常時のサインとして痛みが出現します。

便秘にくわえて腹痛…この原因は病気?

お腹をおさえる女性-写真

普段便秘ではない方がなる「急性便秘」といつも便秘が続いている場合の「慢性便秘」があり、さらに「器質性便秘」と「機能性便秘」とに大きく分類されています。

器質性とは腸の長さや形に問題があり通過障害を起こしてしまうものを言い、機能性とは長さや形には問題がないのに、腸の働きや機能が低下しているものを言います。

急性便秘(一過性便秘):いつもは便秘がない

普段は便秘がないのに、興奮や不安などの精神的影響や、旅行や友人宅に泊まるなど環境変化により起こるもの、または、水分摂取量が極端に少ない場合や、食物繊維を取らなかった時に機能低下を起こし一過性の便秘になります(一過性機能性便秘)。

肛門疾患や子宮付属器に炎症がある場合や腸や膵臓・胆道などに急性炎症を起こした場合には器質性便秘を引き起こします(一過性器質性便秘)。

一過性器質性便秘で恐ろしいのは、イレウスという腸閉塞(ちょうへいそく)です。

イレウスは、腸が狭窄もしくは閉塞してしまい便が詰まり、激しい腹痛と嘔気・嘔吐・発熱・ショック状態に陥る危険性があり、緊急手術を要する場合もあります。

この場合は、一刻も早く受診(内科・消化器科・外科のいずれか)が必要です。

慢性便秘(常習性便秘):いつも便秘がある

長期にわたり持続する慢性便秘のなかには、弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)とあり、大腸の機能低下により起きます。

弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)

いつも便意を我慢していたり、下剤を乱用したりすることにより排便反射が麻痺してしまう便秘をいいます。

痙攣性便秘(けいれんせいべんぴ)

大腸の局所が痙攣により便秘になり、精神的ストレスが原因である場合が多く、激しい腹痛を伴い下痢と便秘を交互に起こす、過敏性腸症候群が有名です。

過敏性腸症候群は、若い世代に多く発症し、腹痛の他、お腹の張り感食欲低下めまい頭重感などを訴えることが多く、原因は不明で便秘と下痢を交互に繰り返すのが特徴です。

慢性器質性便秘

そして慢性便秘の中にも器質性便秘があり、大腸癌や腸の癒着腹腔内の腫瘍、子宮や卵巣の腫大などが原因で便秘となり腸閉塞(イレウス)を起こす場合があります。

まとめ

今回、腹痛に伴う便秘について解説しました。「たかが便秘されど便秘」で、消化吸収の要である消化管に障害が起きると全身に影響を及ぼすことが分かったと思います。

一時的な便秘であり、排便することで腹痛が解消される場合はあまり問題とはなりませんが、慢性的な便秘で、便に血液が混じったり、激しい腹痛を伴う場合には、一度専門医に相談することをお勧めします。