海外旅行者の3~5割が経験するといわれている旅行者下痢症(日本医師会より)。症状や、緊急度、発症しやすい国、そして旅行者下痢症を予防するポイントを紹介します。海外旅行を楽しむためにも是非、旅行前にチェックしておきましょう。

目次

どんな症状が出るの?

一般的な定義

旅行中、または帰国後10日以内の下痢を旅行者下痢症といいます。多くの場合は腹痛を伴います。原因により経過は異なり、ほとんどの人は3~5日以内に良くなりますが、10%の人は1週間以上の下痢に悩まされます(海外邦人医療基金より)。その他には吐き気、嘔吐、胃痛、発熱、倦怠感、しぶり腹(便意はあるのに出ない)、粘性便、血便などの症状があります。腸チフスのように便秘になる感染症もあります。

すぐに病院に行った方がよい場合

38度以上の高熱便の色の変化がみられる(米のとぎ汁の様な白い便、赤い血が混じったような便)、1日に10回以上の下痢が3日以上続く場合や、脱水症状として「ふらつき」「喉の渇き」がひどいときは重篤な感染症の可能性があるので、ホテルや保険会社などから医療機関を紹介してもらい、検査と治療を受けましょう。

どのようなことに注意すれば予防できるか

旅行前の準備

1.情報収集

旅行先の流行っている病気、予防法、もし体調が悪くなってしまった時の対応方法をチェックしておきましょう。海外で自分の携帯電話が使えるように契約している場合は、ブックマークに入れるとすぐに見ることができます。または印刷して旅行カバンの中に入れておくだけでも安心感からストレス性の下痢を防ぐことが出来ます。

2.常備薬、補水液を携行

胃腸薬、整腸薬、便秘薬、解熱鎮痛薬、風邪薬、酔い止め薬など、全ては必要ありませんが飲みなれている薬があれば持っていきましょう。

小児の場合は嘔吐で服薬できない場合がありますので、座薬が便利です。ただし抗菌薬、抗生物質をむやみに服薬すると耐性菌が発生しやすくなり、いざというときに効果が無くなるばかりか、服薬したことによる腸内環境の変化から下痢になる場合がありますので、予防的に飲むことは止めましょう。

もし下痢症になってしまった場合、脱水を予防する必要があります。もし日本から経口補水液を持っていける場合はバッグの中に入れましょう。飛行機内に手荷物として持ち込める液体は100 ml以下ですが、スーツケースなどに入れてチェックインカウンターで預けた場合は100mlを超える量も認められています。重いのが嫌な人は経口補水液のパウダー(粉)も市販されているので、そちらをお勧めします。旅行前の準備は不安による心身の負荷を取り除くためにも重要です。

旅行中の注意点

3.ストレス

旅行中は緊張や不安、過密スケジュールなどストレスフルな日が続き、ストレスが下痢を誘発する場合があります。体調を崩したときはスケジュールの再調整をし、休む時間をつくることも重要です。

4.冷房

ホテル、レストラン、バスなど公共の場所は寒いくらい冷房が効いていることがあります。冷えは下痢につながりますので、上着やシャツなど体温調節できるものを一着携帯すると良いでしょう。

5.食事

の多い食事、香辛料の多い食事は胃に負担がかかり、個人差はありますが下痢になる人もいます。また旅行中はつい多めに食べてしまいがちです。食事つきのツアーだと自分で食べるものや量を選べず、残してしまうことに罪悪感を抱いてしまいがちですが、割り切って体調管理を優先しましょう。

6.水

生水、水道水は病原菌が含まれている可能性がありますので飲んではいけません。衛生環境の良い日本で育った日本人と現地の人とでは体内環境が違いますので、「現地の人が飲んでいるから大丈夫」という基準は通用しません。

またジュースに入っているや、サラダを洗った水が感染源になる場合もありますので、飲料は氷無しにするかペットボトルを購入し、生サラダは控えましょう。

さらに日本の水道水は軟水ですが、海外はミネラルの多い硬水であることが多く、カルシウムやマグネシウムの多い硬水を急に沢山飲むと下痢につながります。飲みなれている硬度の水を選びましょう。

7.肉、魚介

生肉、生魚は病原体に汚染されている可能性がありますので避けましょう。また魚介類は、素材そのものにが含まれている場合もありますので、あまり見たことも聞いたこともないような食材の場合は、やめた方が賢明です。

8.果物

自分でむく果物は食べても大丈夫ですが、カット済みの果物は包丁やまな板が汚染されているときがありますので、避けましょう。

9.乳製品

日本とは殺菌や保存温度の基準が異なります。また一部の乳製品は殺菌されていない牛乳でつくっている可能性もありますので注意が必要です。

どんな国に行く時に注意が必要か

パスポートと世界地図-写真

先進国より途上国、短期間より長期間の滞在で旅行者下痢症になるリスクが上がります。例としては、タイのバンコクに2週間滞在した日本人旅行者の26%が旅行者下痢症を発症したというデータがあります。アメリカ疾病予防管理センター発表している「世界各国の衛生的な危険率」の高リスク国である、アジア、アフリカ、中東、中南米に行くときは細心の注意を払って予防しましょう。

中南米

水道水が硬水であるうえに微量な泥が混ざっていることがあります。水道水は煮沸してから使用するか、ミネラルウオーターを購入しましょう。農村部では上下水道が完備されていない場所もあります。

屋台で売られている物は避けた方が無難です。消化器系の感染が一年中見られますので、十分加熱されたものを食べましょう。

アフリカ

水道水は濁っていることが多くメジナ虫が混入している場合があります。ミネラルウオーターを購入しましょう。食品や飲料を介した病気が多発していますので、日本のガイドやツアーの紹介など信頼できる店で食事をしましょう。

沼や川には皮膚から体内に入り下痢を引き起こす虫(住血吸虫、メジナ虫)がいますので、水に入らないようにしましょう。

中東

海水を淡水処理された水が水道水として供給されていますが、供給用のパイプに問題があることがあります。市販のミネラルウオーターを飲料にしましょう。

5月~11月は気温が上昇しますので食中毒が発生しやすくなります。充分加熱された料理を冷めないうちに食べましょう。

地中海沿岸はチーズや牛乳からブルセラ症 (別名:波状熱、地中海熱、マルタ熱)に感染する例が多くみられます。安全性の確認できる食品を食べましょう。

アジア

インド料理は香辛料が多いので、食べ過ぎないようにしましょう。ラッシーには砕いたが入っている場合がありますので注意が必要です。トイレは排泄後に拭くためのトイレットペーパーが無く、手を使って水で洗う場合がありますので、食事前の手洗いは徹底しましょう。

ネパールはトイレ普及率が20%と衛生状態が悪いうえに、市販されているミネラルウオーターも汚染されている可能性があります。購入する場合は大手メーカーのものを選び、製造日を確認しましょう。医師が不足していますので、危険があることを念頭に置いて旅行計画を立ててください。

ラオスの淡水魚には寄生虫がいることもありますので、地元料理を食べるときは安心できるものを選びます。

タイは気温の高い暑気はもちろんのこと、湿気の多い雨期も食中毒の発生率が上がりますので、外食は衛生状態の良い店にしましょう。

子供は特に注意

子供は大人と違って臓器が未発達です。大人なら問題ない程度の香辛料や油でも、子供の胃には刺激が強すぎますし、大人なら解毒できてしまうくらいの菌も、子供の肝臓、腎臓では対応できません。

特に乳幼児はもともと排便回数が多く、意識して水分を多く摂ることが出来ないので、下痢になると脱水に至る時間経過が早く、危険を伴います。子供と一緒の旅行は最初からハイリスクであることを念頭にして、旅行先の選択、スケジュール調整をしましょう。

まとめ

楽しい海外旅行になるかどうかは体調管理が重要です。冒険しなさすぎる旅行も味気ないですが、体調が整っている旅行の方が楽しいですよね。それは貴方も、貴方の周りも同じです。是非旅行を共にする人と一緒に、旅行前に一読してください。