万全の対策をとっていたつもりでも、なってしまうのが旅行者下痢症です。何をするべきかを具体的に挙げていきますので、とりあえず脱水に十分気をつけ、緊急度を見極め、必要なら病院を受診しましょう。ここでは同伴者がいることを前提に説明しますが、いない場合は容体の急変も念頭において、現地の日本大使館、領事館、契約している保険会社などすぐに電話できる状況を確保しましょう。

目次

まず脱水予防をする

脱水とは体内の水分と塩分が不足している状態で、下痢の重症度に関わらず脱水を予防することが重要です。下痢や嘔吐に気を取られがちですが、実は脱水でも命を落とすケースがあります。

補給液を少しずつ飲ませる

市販のスポーツ飲料(ポカリスエット、アクエリアス)が手に入る場合は充分量を確保し、多量を一度に飲むのではなく、少しずつ頻回に飲ませましょう。特に、吐き気を伴うときは沢山の量を一度に飲むと嘔吐を促してしまいますので、はじめは5cc(5ml)くらいから少しずつ飲ませることがポイントです。

スポーツ飲料は電解質が少なく、糖分が多めになっていますので、もし経口補水液(OS-1やスムーズイオンなど)を入手できるようでしたら、そちらを飲ませましょう。海外では経口補水液の粉が売られていることが多いので、市販のミネラルウオーター、または湯冷ましで作りましょう。

市販の飲料が手に入らないときは、WHOから補水液の作り方が紹介されています。下記3つの材料を混ぜるだけなので、是非作ってみてください。

  • 食卓塩4g(ティースプーン1杯)
  • 砂糖20~40g(ティースプーン4~8杯)
  • 一度沸騰させた水1リットル(ティーカップ5杯)

脱水になっていないか、こまめにチェックする

脇の下、唇、口の中が乾いたり、腕やお腹の皮膚をつまんだとき(持ち上げて離したとき)シワができたままである、というときは脱水の可能性があります。寝ているだけでも皮膚や呼吸から水分は奪われていきますので、適度に水分補給をしましょう。

日本から持ってきた薬を飲むときの注意

多くの旅行者下痢症は整腸剤と水分補給、安静によって回復しますので整腸剤は積極的に使用してください。ただし、整腸剤はビオフェルミンのように乳酸菌由来のものもありますので、牛乳アレルギーのある人は要注意です。

また、下痢による腹痛は、バファリンやロキソニン、セデスなどNSAIDsとよばれる解熱鎮痛剤では改善することができません。それどころか、これらの薬は胃腸に悪影響を及ぼしてしまうため、下痢による腹痛の場合は服用を避けてください。

下痢は、O157のような細菌から出る毒素や下痢の原因となるウィルスを体外に出す体の防御機構なので下痢止めのむやみな使用はやめた方が良いでしょう。明らかに冷えやストレス性の下痢とわかっている場合には、下痢止めが有効です。

現地の病院を受診するときの注意

病院の待合室-写真

3日たっても良くならない、激しい嘔吐で水が飲めない、猛烈な下痢、高熱、強い腹痛、血便の場合は受診をおすすめします。また乳幼児、高齢者で高血圧や糖尿病の持病がある方も危険を伴いますので、早めに受診する方が良いでしょう。

受診する場合、一旦は高額な医療費を負担する必要がありますので、クレジットカードの使える病院が望ましいです。またパスポートは必ず携行しましょう。

海外療養費制度

海外での急な病気や怪我で現地の病院を受診したとき、申請すると医療費の一部が返ってくる制度のことです。気をつけたいポイントは支給対象が「日本で保険適用と認められている医療行為や薬のみ」というところで、美容整形などは認められていません。また治療目的の旅行にも適用されません。

支給額は、日本で同じ医療行為をした場合にかかる額(海外診療の方が安い場合はその額)から患者の負担額(一般的には3割、高齢者だと所得に応じて1~2割)を差し引いた額です。

提出書類を病院に記入してもらう必要があるので、予め用意しておくと手続きがスムーズです。日本に戻ってからでも可能ですが、1ヶ月以上経つと記入してもらえなかったり、医師の診断書をもらうまでに時間がかかったりするので、なるべく現地にいる間に記入してもらいましょう。一部の健康保険ですが以下に紹介します。

民間の保険会社

旅行に行く前、日本であらかじめ東京海上日動や損保ジャパン日本興和など、民間の保険会社と海外旅行保険の契約をしている場合は、病院に行く前に保険会社に連絡を取ってください。携帯電話をもっていないときはホテルの部屋の電話から、もしくはフロントから電話できます。

連絡先は、契約したときに渡される紙に書いてあることがほとんどです。連絡の際、契約番号や契約時に伝えた電話番号を伝えると、話がスムーズに進みます。出発直前に契約して契約書が無い場合でも、契約番号だけは渡してもらえるはずです。

保険会社によっては24時間、日本語サービスが受けられるところもあります。海外の保険会社では出国後でもネットで保険に入れるところもありますが、英語対応になります。

使える英会話

英語が出来ない人でも、以下の文字を指さすだけで通じます。

  • I have a stomachache.
    (お腹が痛いです。)
  • I have had pain in my abdomen and a fever for two days.
    (2日間、腹痛や熱があります。)
  • I am chilly.
    (寒気がします。)
  • I feel like throwing up.
    (吐き気がします。)
  • I threw up everything I ate.
    (食べると全部吐いてしまいます。)
  • I’ve got diarrhea.
    (下痢をしています。)
  • I sometimes have bloody stools.
    (血便がでます。)
  • They’ve been like water.
    (水のような便です。)
  • I took a fever reducer.
    (解熱剤を飲みました。)
  • My daughter is two years and four months old.
    (娘は2歳と4ヶ月です。)
  • I give him mother’s milk and formula.
    (息子は母乳と人工乳の半々で育てています。)

まとめ

真面目な人ほど周りへの迷惑を考えて言いだせないものですが、事態が深刻になればなるほど、周囲への影響も大きく、自分自身の治りも遅くなります。体調の異変を感じたら、早めに休息をとる、早めに同伴者や添乗員に報告する、早めに病院を受診する、を心がけてください。