便秘と下痢は、いずれにしても苦しいものです。便秘はたえず腹部の膨満感や不快感を与え、倦怠感や食欲不振などの全身症状も強くなります。急性の下痢は激しい腹痛と便意に襲われて、たびたびトイレに駆け込むことも珍しくありません。今回は、多くの人を悩ます「下痢」「便秘」について見ていきましょう。

目次

体への悪影響の比較

下痢

まずは、急性の下痢についてです。悪い細菌に感染すると症状が長引き、著しく体力が消耗し、脱水症状を引き起こす可能性もあります。もし、経験したことのない下痢や腹痛に襲われた時は、病院で検査と治療を受けるようにしてください。特に、海外から帰国した際には要注意です。

その他、下痢に血が混じっている、長い間下痢が続いて体がやせてきた・腹痛が加わってきたなどの症状がある場合も、すみやかに病院で診察を受けるようにしましょう。

 

このようなひどい下痢はともかくとして、通常、便が緩かったり、ときどき下痢したりする程度であれば、健康上あまり支障はないことが多いです(ただし、たまに下痢をする程度であっても実は大腸がんや炎症性腸疾患だったということもあります)。

便秘

むしろ、心配が必要なのは急な便秘です。

もともと多少便秘だという程度であれば大きな病気が隠れていることは少ないですが、急に便秘になった場合には重大な病気が隠れている場合があります。その最たるものは大腸がんです。下痢と便秘を繰り返す、便に血が混じっているなどという場合、大腸がんである可能性があります。

また、急に便秘になってきた・変形した便が出るようになった・便に血が交じるようになったというような場合には、すぐに受診してください。直腸がんの可能性があります。

 

もう一つ、便秘の場合に疑われる病気として腸閉塞があります。便が出なくなり、強い腹痛が出てきたり吐き気が起こってきたりした場合、腸閉塞が疑われます。腸閉塞では、腸の内容物の通り道が完全に塞がれ、食べ物や消化液の流れが滞ってしまいます。通り道が完全に塞がってしまった時にひどい便秘が起こります。腸閉塞の疑いがある場合は入院し、ほとんどの場合は手術による治療が行われます。しかし、この場合の治療は困難なものとなります。

開腹手術の経験がある人の便秘は腸閉塞を起こしていたり、起こす原因になったりするため非常に危険です。

 

排便は単に体の老廃物を排泄するというだけではなく、栄養に体に取り入れるためにも不可欠です。もし便秘ぎみなら、現在の食習慣、運動習慣などを見直して、1日も早く改善してほしいものです。

便秘2

便の色には要注意

赤い血の混ざった便が出ると、あわてて病院に行く人はたくさんいます。しかし、黒い便が出たと言って病院に駆け込むケースは多くありません。血は赤い色をしているので、腸のなかで出血していると想像できますよね。しかし、黒色は出血を連想させません。イカスミなどの黒い食材を食べた際に、翌日の便が黒くなるといった経験からか、黒い便には恐怖心がないのかもしれません。

 

食べものは、胃から小腸を通過しながら栄養素を吸収され、大腸で便となって排泄されます。大腸ポリープや大腸がん、そして痔などの出口に近い部分からの出血はそのままの赤い色で、便と一緒に排泄されてきます。

しかし、大腸ポリープや大腸がんからの出血は微量である場合も多く、肉眼で赤い色として確認できないこともあります。とくに、早期の病変であればこの傾向が強いので、大腸がん健診では便潜血反応検査を行ない、微量の出血を検出できるようにしています。

 

一方、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍など上部の消化管から出血すると、血液は小腸、結腸、直腸、肛門までをある程度の時間をかけて降りていきます。その間、胃液やさまざまな消化酵素、腸内細菌と混じり合い、それらの影響で黒く変色して排泄されます。大量に出血すると、まるでタールのような便になることもあります。こうなると貧血も進み、めまいや倦怠感などの全身症状もともなうようになります。このほか、胃からの出血は口から吐き出される(吐血)こともあります。

 

胃腸の出血部位の痛みは、それほど激しいとは限りません。ただし血液は非常に刺激が強いので、大量の出血が見られる時は多くの場合、腸管が刺激され下痢の症状が表れます。しかし黒い便として体外に排泄されるまでの間、出血には気づきにくいのです。

まとめ

便秘や下痢の原因には、重大な病気もあることを忘れてはいけません。とくに、それまでの排便習慣と違って便秘や下痢ぎみになった場合、大腸がんも疑われます。黒いうんちが出た場合には、ぜひ胃カメラなどの内視鏡検査を受けてください。