「血栓性外痔核」という病名は聞いたことがないかもしれません。血栓性外痔核は、肛門の外側のいぼ痔が急に腫れて、痛みを伴ったものです。個人差はありますが、痛みが強いとまともに歩けなくなったり、座れなくなったりします。
ある日、突然に血栓性外痔核になったとき、どうのように対処すれば良いのか、また、再発して繰り返すことのないよう、予防法も一緒に押さえておきましょう。
血栓性外痔核とは?
痔には、いぼ状に腫れる「いぼ痔(痔核)」、肛門の皮膚が切れる「切れ痔(裂肛)」、肛門にトンネルができる「痔ろう(あな痔)」の3種類があります。
よく聞くいぼ痔の特徴といえば、ある日トイレで排便していたら出血した、いぼ痔が肛門から出てきた、というものです。しかし、血栓性外痔核は、そのような症状のいぼ痔とは異なります。
血栓性外痔核は、いぼ痔の一種ですが、血栓(血豆)が原因で腫れ上がった状態をいいます。一般的に強い痛みを伴い、表面に傷が付くと出血を伴うこともあります。しかし、多くは腫れあがったいぼの部分を切除するような手術をしなくても、血栓が溶け、吸収されれば消えてなくなります。
血栓性外痔核ができる仕組み
血栓性外痔核は簡単に言うと「肛門の静脈に血液が固まって肛門の静脈が詰まり、腫れ上がってしまった状態」のことです。
これを脳血栓で例えると、脳血栓は脳に行く血管(動脈)が血栓によって詰まってしまい、脳に血液が行かなくなった状態です。血栓性外痔核の場合は、動脈ではなく、静脈に血栓ができます。つまり、心臓から肛門に血液は送られるのですが、心臓へ戻る血管(静脈)が血栓によって詰まってしまいます。肛門に血液が送られるばかりで、心臓に戻りにくいために血液が溜まり、腫れ上がってしまいます。
なぜ血栓性外痔核になってしまうのか?
肛門に、急激に負担がかかると血栓性外痔核ができてしまいます。多い原因としては以下の通りです。
いったん血栓性外痔核が治っても、肛門に負担をかけるようなことがあると、血栓性外痔核を繰り返してしまいます。
いつも同じところが腫れるとは限らず、どこに血栓が出来るかによって腫れる場所が異なります。一度できてしまったからといって、癖になってしまうというわけではありません。
発症後、どのような経過をたどる?
痛みは1週間程度で良くなる
血栓はすぐに溶け始めます。すると完全に詰まっていた静脈に血液が流れ始め、痛みが徐々に軽減してきます。痛みは2~3日間がピークですが、だんだん楽になり、1週間でほぼ消失します。また表面の一部が破けて、出血を伴うこともあります。
腫れは1~2ヶ月でなくなる
腫れは血流が改善し、血栓が吸収されれば引いてきます。それには1~2ヶ月くらい要します。稀に、肛門の外側に皮膚のたるみが残ってしまうことがあります。
血栓性外痔核の対処法
1.肛門の専門医を受診する
肛門の専門医を受診し、正しい診断を受けて下さい。
2.お尻を冷やさない
血栓性外痔核は冷えが原因の場合もあり、 かえって症状を悪化させることがあります。温めるようにして下さい。 すると血液の循環が良くなって血栓が早く溶けて痛みも楽になります。 お風呂にゆっくりつかることをお勧めします。冬であればカイロを当てるのも良いでしょう。ただし、肛門が腫れて痛みが出るものに、肛門周囲膿瘍というものがあります。この場合は温めてしまうと余計に悪化してしまいますので、まずはきちんとした診断を受けるようにして下さい。
3.無理に押してお尻の中に入れない!
肛門の外側のいぼ痔が腫れているので、基本的に肛門の中に押して入れる必要はありません。仮に入ったとしてもまた外に出てきますし、押すことによって、かえって腫れ上がって痛くなることもあります。
血栓性外痔核の治療法
痛みがある期間は、軟膏や腫れを引かせて痛みを和らげる効果のある薬を内服します。 痛みがなければ薬を必要としないこともあります。
軟膏を使用しても血栓が溶けるわけではないので、軟膏は根本的な治療にはなりませんが、使用することによって痛みが軽減されます。
軟膏や坐薬を肛門に挿入すると刺激で逆に痛みが強くなったり、腫れあがったりすることがあるので、 薬を使用する際は、腫れているところに刺激しないようにそっと軟膏を塗るのが良いでしょう。
多くは手術の必要はありません。一方、痛みが強いもの、表面が破けて出血しているもの、薬を使用しても治らない場合、「血栓除去術」という局所麻酔下での手術を行うことがあります。しかし、「切らなくても治る」と聞いて喜んで帰っていかれる患者さんが殆どです。
まとめ
血栓性外痔核に限らず、肛門に関するトラブルは恥ずかしさから受診が遅れることもたくさんあります。しかし、無理に自分で処置しようとしては、却って悪化を招きます。「痛み」や「腫れ」といった症状を早く取り除き、また治療後も何度も症状を繰り返したりしないよう、肛門科の専門医・専門クリニックに相談をしましょう。