『痔』って聞くと恥ずかしい事あるいは恥ずかしい病気と思う人が多いのではないでしょうか?実は、痔はとっても身近で、赤ちゃんからお年寄りまで、どの年代の男女でも起こる可能性があるのです。今回、痔の基本的なことを紹介し、生活習慣からどういうお薬で対応されるのかについてまでご紹介したいと思います。

目次

原因は、便の異常!生活から見直しを

痔の主な原因は、便秘下痢などで肛門に大きな負担がかかることです。

便秘では、トイレでのいきみが強くなり、肛門部の血管に負担をかけ、うっ血して痔核、いわゆるいぼ痔ができてしまったり、肛門部の上皮が裂けたり切れたりする裂肛、いわゆる切れ痔になったりします。また、雑菌が入り込んで炎症をおこす原因になることもあります。

下痢では、とくに水のような水様便や慢性的な下痢になると、一時的に肛門に圧力をかけていることになり、肛門部の上皮に負担がかかりやすくなります。そのために、痔核(いぼ痔)裂肛(切れ痔)が起こりやすくなります。さらには感染して炎症を起こし痔瘻(あな痔)も起こる原因となります。

つまり、便秘や下痢になるような生活をしていると、痔になる確率も高くなってしまうというわけです。痔の発症や再発には、普段の生活習慣が大きく関わっているといえます。

痔の種類は?

①痔核(いぼ痔)

内痔核

痔の中でいちばん多いのは、痔核(いぼ痔)です。肛門を閉じる役割をするクッション部分には静脈血管がたくさん集まっています(静脈叢といいます)。その静脈がうっ血してふくらんだものが痔核です。この痔核が歯状線(肛門縁から約2cm~3cm奥にある肛門上皮と直腸粘膜の境界部分)より内側にできたものを内痔核といいます。なお、歯状線より口側は直腸と同じように自律神経によって支配されているので、痛みを感じることはありません。

原因

いぼ痔の原因の一番多くは、便秘、すなわち排便習慣です。その他、トイレ時間が長く排便時のいきみが強い、長時間同じ姿勢をとる、妊娠や出産等がきっかけで生じることがあります。

症状

歯状線より直腸側では、痛みはありません。そのため、排便時に出血したり、肛門から痔核が脱出(飛び出してきて)したりして気がつくというケースが多いようです。肛門から脱出したときには、痛みを伴わないため、肛門から飛び出してくる感じや異物感で気がつくようです。

放置すると、脱出しても排便が終われば戻る状態から、進行すると常に痔核が脱出して指で押さなければ戻らない状態なります。さらに進むと、最終的には指で押しても戻らなくなります。

外痔核

肛門の歯状線より外側にできたものをいいます。肛門の外側に血まめができた状態で、血栓性外痔核といいます。歯状線より外側(肛門側)は皮膚と同じような神経(体性神経)によって支配されているため、敏感で痛みを感じます。

原因

便秘や下痢、長時間歩き回ることや座りっぱなしのことが多い、冷え、ストレスなどが原因となります。

症状

歯状線より外側(肛門側)のため、敏感に痛みを感じます。腫れて激しく痛むことが多いです。出血は少ないですが自壊すると出血します。

②裂肛〈切れ痔〉

肛門の上皮が切れたり裂けたりした状態をいいます。

原因

便秘などによって、硬い便を無理に出そうとして切れることが多いのですが、慢性的な下痢により負担がかかり起こることも。便秘がちな女性に多く見られます

 

症状

歯状線より肛門側の上皮に発生するため、敏感に痛みを感じます。排便時に激しい痛みと出血があります。排便後もしばらく痛みが続くこともあります。

裂肛を繰り返すと、裂け目が深くなって炎症が起き、潰瘍や裂肛の外側にポリープができたり、肛門が狭くなる(肛門狭窄)ことがあります。

③痔瘻(あな痔)

歯状線には肛門腺窩というポケット(くぼみ)があり、そのくぼみには肛門線という分泌腺が開いています。この肛門腺に便がたまって細菌感染し化膿し、膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍といいます。この症状が繰り返されることによって、膿を外へ出そうとして、歯状線にある入り口と皮膚に膿のトンネル(ろう管)が形成されてしまいます。これが痔瘻です。

原因

下痢やストレスによる免疫力の低下などが原因になります。

症状

肛門の周囲の皮膚が腫れて痛みを伴い、ときには熱が出ることも。また、膿が破裂して下着が汚れます。

痔瘻が形成されてしまうと、症状を繰り返すようになります。痔瘻の治療は手術になります。

痔から早く開放されたい!生活習慣ココに注意!

active-84646_640

痔の最大の敵は、排便時の習慣です。

痔の最大の原因である便秘や下痢は、生活習慣を見直すことで解消することが可能ですから、以下のような事柄に気をつけましょう。

①長時間同じ姿勢を続けない

ときどき姿勢を変えたりしましょう。デスクワークなどで同じ姿勢を続けている場合は、合間を見つけてストレッチなどで体を動かしましょう。

②ストレスを貯めない

疲れやストレスがたまると、便秘や下痢も悪化したり、免疫力が落ち、痔が悪化しやすくなります。なるべくリラックスして、趣味などでストレス発散をしましょう。

③適度な運動を

適度な運動は、ストレス解消に役立つだけでなく、腸の動きを活発にして排便を促す効果があります。

④冷えに注意

体が冷えると、肛門の筋肉が緊張したり、血液の循環が悪くなって痔に悪影響を及ぼします。毎日、入浴して血行をよくし、寒いときには、腹巻きや使い捨てカイロなどで体や腰の回りを冷やさないように。夏場の冷え性も増えています。クーラーで冷え過ぎないように注意しましょう。

トイレの注意点!おしりに優しく!

間違った排便習慣は痔の原因となります。痔にならないあるいは、痔を悪化させないために、まず大切なことは、おしりに負担をかけない排泄を心がけることです。

①便意が起こってからトイレに行く

便秘の生活改善ポイントで「毎日決まった時間にトイレに行く」というものがあります。これには条件があって、『いきみで余計な負担をかけなければ可』と考えられます。便が排便できる状態でないのに、同じ時間にトイレにいくことにこだわったため、無理やり出そうとして負担をかけると痔は悪化します。つまり、決まった時間にトイレに行かなくてもいいのです

②便意を我慢しない

これを守れずに痔になるタイプが多いかもしれません。便意の我慢を繰り返していると、便意を感じなくなり、腸に長く便がとどまってしまいます。そうなると、水分が腸に吸収されて便が硬くなり、排泄の際に肛門に負担をかけることになるのでできるだけ我慢しないようにしましょう。

③トイレの長居は禁物

トイレは排便をする場所です。新聞や本をゆっくり読む場所ではありません。便意があったらだいたい3~5分いきんで排便するようにしましょう。トイレで長い時間いきむのは肛門の負担になります。トイレに長居するのはやめましょう。

④おしりは清潔に保つ

排便後は、おしりを優しく拭き、シャワートイレを使ったり、座浴や入浴で肛門をきれいにしておきましょう。市販の肛門清浄剤を使ってもよいかもしれません。

man-624398_640

食生活を見直そう!痔と便秘の解消のために

①食物繊維を摂る

便秘を防ぐためには、食物繊維もバランスよく摂ることが大切です。食物繊維は、腸内で水分を吸収して膨らむので、便のかさを増やして適度に軟らかくしてくれます。野菜やいも類、豆類、海藻、きのこ類、ドライフルーツ、こんにゃくなどが食物繊維の多い食品です。

②朝食を食べる

朝、起きて空の胃の中に食べ物が入ると、腸が活発に動き出し、便意が起こりやすくなります。起床直後に、冷たい水や牛乳をコップ 1杯飲むのも腸への刺激となります。炭酸水も便秘には良いとありますが、胃が空になった状態で炭酸水を飲むと胃に刺激を感じる場合もあるので、刺激を感じるようであれば食後などが良いかもしれません。

③アルコールや香辛料は避ける

症状のあるときは、アルコールや香辛料は避けましょう。アルコールや刺激物は肛門を刺激してうっ血の原因となったり、症状を悪化させてしまいます。特に辛いものは避けたほうが良さそうです。

④乳酸菌を摂る

整腸作用のある乳酸菌や乳糖、オリゴ糖を積極的に。ヨーグルトや乳酸飲料に多く含まれています。

痔の治療~セルフケアでできること

痔核や裂肛の症状が軽いうちは、生活改善とあわせて市販薬を使うのも1つの方法です。痔瘻は病院での治療が必要になります。いくつかの種類がありますから、症状と使いやすさで選びましょう。

外用薬

軟膏:肛門付近から外側の痔である、裂肛、外痔核に適しています。

坐剤:内痔核のような、肛門内部の痔に適しています。

注入軟膏:内痔核、外痔核、裂肛など肛門内外の痔に適しています。

痔瘻について

痔瘻は、セルフケアではなかなか治りません。病院で治療をする必要があり、治療は基本的に手術になります。手術方法は様々で、最近では薬を含んだ糸を患部に通して治療するような切り開かない新しい方法もあるようです。

内服薬

鎮痛効果や止血作用、炎症を抑える作用のある成分を配合。生薬配合のものは、便通改善の効果もあります。

これは注意!痔と間違えやすい病気

肛門から出血があり、てっきり痔と思っていたが、受診したら大腸がんだった、というようなケースがまれにあります。肛門からの出血という点では、確かに痔の症状とも一致しますが、大腸がんや潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなど、別の病気の可能性も考えられます。肛門から出血がある、急に便秘になった、便秘と下痢を繰り返すなど、気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診してください。

最後に

痔は結構身近な存在だとわかったでしょうか?なんといっても排便のコントロールが予防の鍵になります。しかし、生活改善ポイントで書いてある痔の「便意が起きたらトイレへ」と便秘の「便意がなくてもトイレへ」と全く逆のアドバイスなんじゃないか?と疑問に思うかもしれませんが、なにも便秘のアドバイスが便意がなくても無理やりいきんで出せと言ってるわけではありませんので誤解のないようにしてくださいね。

痔になっちゃった!お薬は何を使ったらいい?」の記事では、痔の薬の選び方も紹介しています。お近くの方が悩んでいるようだったら、こっそりアドバイスをしてあげて下さい。