お尻から血が出ていることに気づくと、まず痔の発症を疑う方が多いのではないでしょうか。しかし、痔と似た症状を持つ病気は他にもあります。お尻からの出血だからといっても、痔ではない可能性があるのです。ここでは、痔と似た症状がある病気について、痔の基本情報とあわせて説明します。間違った判断をしてしまうと命の危険もあるので、要注意です。
痔の症状とは
痔とは、肛門や肛門付近に引き起こされる病気です。
痔には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3種類があります。この中で、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)は出血を伴います。また、痔は年齢に関係なく起こります。年が若いからといっても、決して他人事ではないということなのです。
痔の症状についてさらに詳しくは、「開放されたいおしりトラブル!痔の基本」をご覧ください。
痔に似た症状の病気とは
「肛門付近から出血しているから」ということで、自分自身で痔を患っていると思い込んでいる方もいます。しかし、肛門付近の出血を痔の症状だと思っていても、全く違う病気を患っていることもあるのです。したがって、勝手な症状の思い込みは別の病気の発見が遅れることにつながります。
痔に似た症状を持つ病気としては、大腸がん、直腸がん、直腸炎、そして大腸ポリープなどがあります。
これらの病気の症状の共通点は、肛門からの出血があることです。つまり、排便時において便に血液が付着しているということですが、これは痔の場合にもみられます。そのため、痔だと思って放っておいたら実は他の病気だったということにもなりかねません。
ここからは、それぞれの病気について簡単に解説します。
大腸がん
大腸に発生するがんです。大腸のどの部分にどの程度のがんができるかによって症状は異なりますが、多く見られる症状としては
などがあります。特によくみられるのは血便ですので、血便がみられたら早めに消化器科・胃腸科・肛門科などを受診してください。
大腸がんを発見するためには、便潜血検査を行います。これは、便の中に血液が混じっているか調べる検査です。手軽にでき、精度も高い検査だといわれています。大腸がんは早期発見が大切な病気であるため、検診を受けることが何よりの予防となります。
大腸がんは死亡数が多い病気です。2013年の大腸がんでの死亡数はがんのなかでも3位に位置しています。また、女性の場合は死亡数1位となっています。したがって、血便などの症状が見られたときは、早急に病院で症状を診断してもらった方が良いでしょう。
大腸がんについてさらに詳しく知りたい方は、「大腸がんの5つの原因と9つの初期症状」の記事や、国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」をご覧ください。
直腸がん
直腸は大腸の最後の部分で、最も肛門に近いところにあります。症状としては、
- 下血
- 便が残る感じがある
- 便が細い
- 便に血液が混じる
- 便が出にくい
- 食欲がなくなる
- 原因不明の体重減少
といったものがみられます。
痔だと思い込んで市販薬を使っていてもなかなか良くならず、病院を受診したら直腸がんが見つかった、というケースも少なくありません。少量でも出血があれば、必ず受診するようにしましょう。
直腸がんかどうかを調べるためには、医師が肛門から指を挿入して確認する直腸指診や、観察のために細い管状の器具を入れる直腸鏡検査などがあります。
直腸炎
直腸が炎症を起こす病気です。
- 下部腹痛
- 痛みを伴わない出血
- 下痢
- 粘液の流出や粘液便
といった症状がみられることがあります。
原因は様々ですが、細菌やウイルスなどによる感染症や、クローン病や潰瘍性大腸炎など他の消化器疾患が原因となる場合もあります。
大腸ポリープ
結腸壁・直腸壁の組織が増殖し、腸の中でいぼ状に飛び出したものです。悪性のものは、がんになる可能性があります。ほとんどの場合、特に症状はみられませんが、直腸からの出血があることもあります。
直腸や結腸にできたポリープはがん化する可能性もあるため、発見された場合、5mm以上のものは大腸内視鏡を用いて切除することが一般的です。大腸内視鏡で切除できない場合は、開腹手術や腹腔鏡手術などを行うことになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。お尻から出血していることが発覚した場合は、決してその症状を軽く見ないようにしましょう。その出血が痔によるものだったり、それに加えて、大腸がん、大腸ポリープ、直腸ポリープ、直腸がんなどを引き起こしている可能性があります。思い込みで自己判断をせずに、医師の診断を仰ぐことが重要です。手遅れにならないように気をつけてくださいね。