肝炎は薬剤や細菌、寄生虫など様々な原因で発症します。大半の肝炎はあまり慢性化せず、一過性の炎症で終わってしまうのですが、ウイルス性肝炎には慢性肝炎に移行することがあり、適切な治療をしないと気付かないうちにほかの人にも感染させてしまう可能性があります。

ウイルス性肝炎については、その治療の流れや感染後の対応法などを知識として持っておくことがとても大切です。自分だけでなく、家族がもしも感染してしまった時にも、適切な対応が取れるようにしましょう。

肝炎の種類や症状については「A型、B型、C型…肝炎ってどんな病気?自覚症状はあるの?」をご参照ください。

目次

ウイルス性肝炎の潜伏期間と肝炎の診断

ウイルス性肝炎としてよく知られているのは、A型肝炎B型肝炎C型肝炎の3つです。これらの肝炎の診断は、一般的には内科で行われています。

肝臓が炎症を起こしたり、壊れてしまったりする場合には、血液検査によってASTALTという検査項目に異常が出てきます。この他にも様々な兆候・数値を確認するほか、血液中にウイルス抗体(ウイルスの本体)が見つかるかどうかを検査し、診断を下します。

ウイルス性肝炎では、実際にウイルスが体内に入ってから症状が現れるまで潜伏期間があります。

  • A型肝炎:2~6週間
  • B型肝炎:1~6ヶ月
  • C型肝炎:1~3ヶ月

上記のように、ウイルス性肝炎の潜伏期間はかなりの長期間にわたります。このため、気付かないうちに家族やパートナーに感染させている可能性があることを認識しなくてはなりません。

気づきにくい初期症状に注意

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ウイルス性肝炎は程度によって症状に差があり、発症してもなかなか気付けないことがあります。特に、B型肝炎とC型肝炎に注意が必要です。

これらのウイルス性肝炎の初期症状は主に全身の倦怠感発熱なので、初めは大半の方が風邪と勘違いしてしまいます。このため、B型・C型肝炎では発症後も、潜伏期間と同様に、周りの人への感染の危険が高いといえます。

肝炎になったら気をつけたい日常生活のポイント

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ウイルス性肝炎は、血液や唾液を介した感染の可能性があります。そのため、感染したら血液が付着する可能性があるものは共有しないように注意が必要です。例えばカミソリや歯ブラシなどには血液が付着するので、共有は避けるべきです。

しかし、お風呂やトイレの共有で感染する可能性はありませんし、食器なども共有して構いません。大げさな警戒心は治療する側にとっても家族にとっても負担になってしまうので、正しい知識を持っておくことが大切です。

もう一つ、気をつけたいのが体調管理です。C型肝炎などでは、肥満糖尿病など肝臓に負担が加わる要素に気をつけなければなりません。このために適度な運動を行ったり、健康を維持するために食生活の内容を見直すことが大切です。また、鉄分を体内に取り込みすぎると肝臓に負担がかかってしまうので、レバーや鉄分のサプリメントなどを服用する際は医師に相談してください。

また、アルコールの摂取にも注意しましょう。アルコールは肝臓に大きく負担をかけてしまうので、飲酒は避けるようにしましょう。

肝炎の治療法と予後

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肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎で治療方針が異なっています。A型肝炎・B型肝炎・C型肝炎のそれぞれのウイルスによって急性肝炎と慢性肝炎が起こるので、ウイルスに応じた治療というよりも症状に応じた治療を考え、その上でそれぞれのウイルスに対応した治療を行います。

急性肝炎

A型肝炎B型急性肝炎ともに、一般的に自然治癒する傾向が多く、特別な治療は行われません。保存的治療(安静にして栄養を補給するなど)が中心となります。

慢性肝炎

慢性肝炎は、無症状であることが多いです。あるいは全身倦怠感・食欲不振など風邪によく似た症状が見られることが多く、まずは無症状であっても感染させてしまう可能性があることをしっかりと理解しましょう。

B型肝炎の場合

核酸アナログ製剤インターフェロンという、ウイルスの増殖を抑制する物質の投与を行います。

また、肝庇護療法とよばれる治療法も用いられます。これは、内服薬によって肝臓の炎症を抑える治療で、肝炎ウイルスそのものを排除する治療ではありません。

C型肝炎の場合

従来、C型肝炎に対してはインターフェロンという注射薬による治療が行われていました。しかし現在、C型肝炎は飲み薬で治すことができる病気です。

2014年以降、インターフェロンフリーの治療薬が数多く承認されました。これらの薬によって、多くの患者さんの体内から肝炎ウイルスを排除することができるようになっています。インターフェロンが効きにくいタイプの患者さんにも、現在は有効な薬が存在します。

ただし、肝炎ウイルスを排除したとしても、悪くなってしまった肝臓は元には戻らないため、定期的な検査は欠かせません。主治医とも相談しながら、治療を続けていきましょう。

肝炎治療に対する医療費の助成

肝炎の治療について、自治体によっては医療費助成を行っているところもあります。以下の治療が助成の対象になっているので、該当する方はお住いの都道府県に確認してみてください。

B型肝炎の治療

  • インターフェロンまたはペグインターフェロン単剤
  • 核酸アナログ製剤

C型肝炎に対する治療

  • インターフェロンまたはペグインターフェロン単剤
  • インターフェロンまたはペグインターフェロン+リバビリンの併用
  • ペグインターフェロン+リバビリン+プロテアーゼ阻害剤の3剤の併用
  • インターフェロンフリー治療

さいごに

ウイルスによって生じる肝炎では、他者に感染させないことにも気を配る必要があります。感染経路をよく理解し、周囲の人にうつさないようにしてください。

繰り返しになりますが、ウイルス性肝炎は適切な治療によって治る病気です。感染後は定期的に医師の診断を受け、ご自身の状態を把握しておきましょう。