「ゆさぶられっ子症候群」という言葉をテレビやニュースなどで聞いたことがある人もいると思います。赤ちゃんを強く揺さぶることによって起こるものですが、赤ちゃんをあやしたりする動作も危険なのでしょうか?また、意識的に赤ちゃんを揺さぶるつもりはなくても、起こってしまうことはあるのでしょうか?

赤ちゃんの保護者であれば是非知っておきたいゆさぶられっ子症候群について詳しくみていきましょう。

目次

ゆさぶられっ子症候群とは?

「ゆさぶられっ子症候群」はその名前の通り赤ちゃんを強く揺さぶることによって起こる頭の中の障害です。もともとは、乳児の虐待の一つとされており、頭部損傷のため重症例になることも多く、中には命を落としてしまう赤ちゃんも少なくはありません。

しかし、近年では虐待の意思がなくただ赤ちゃんをあやしていたつもりが、強めに揺さぶってしまった結果「ゆさぶられっ子症候群」を引き起こしてしまったという例もあり、次第に世間的にも知られるようになってきました。

原因は?

赤ちゃんは身体の全体のバランスからみて、頭が大きいという特徴があります。新生児~1歳ぐらいまでの赤ちゃんは、脳が未発達のため脳と頭蓋骨の間に隙間が空いています。
この時期の赤ちゃんを強く何度も揺さぶると、脳と頭蓋骨の間にある血管が切れてしまったり、脳が頭蓋骨の内側に打ち付けられたりしてダメージを受けてしまうのです。

特にまだ首のすわっていない赤ちゃんは首の筋肉が弱いため、揺さぶられても自分で頭を支えることができません。
そのため、首がすわっている赤ちゃんより、脳へ直接の刺激を受けます。そのためより多くのダメージを受けてしまうのです。「ゆさぶられっ子症候群」を引き起こした例をいくつかあげていきます。

  • 遊んでいるつもりで強めに「たかいたかい」をしてしまった
  • 喜んでいたので2人で赤ちゃんを放り投げてキャッチして遊んだ
  • 寝かしつけるつもりで、赤ちゃんの首を左右180度に数十分ゆらし続けた
  • 膝の上に座らせて急に手を離し逆さまにした
  • 泣きやまないのでイライラして何回か強く揺さぶった

上記の中でよく聞くのは、泣きやまないストレスなどからつい腹が立ちとっさに強く揺さぶってしまったという場合ではないでしょうか。他方、可愛いわが子と遊んでいたつもりがつい度を越して遊びがエスカレートしてしまい、「ゆさぶられっ子症候群」を引き起こしてしまったという不幸なできごともあります。

脳は知能だけではなく運動や聴覚・視覚など生きていく上で大切な機能を担うとても重要な部分です。
赤ちゃんの身体や脳の発達はとても早いですが、大人が思っている以上にとても繊細なものなのです。正しい知識を持たないで大人の感覚で接すると、良かれと思って行ったことが取り返しのつかないことになってしまう可能性があることを、しっかりと理解しておくことが大切です。

どんな症状があらわれるの?

「ゆさぶられっ子症候群」になった場合は次のような症状があらわれます。

  • 嘔吐
  • けいれん
  • 元気がない
  • 呼びかけても反応しない
  • すぐに眠ってしまう
  • 呼吸困難
  • ミルク・母乳を飲まない

嘔吐は胃腸炎などでも起こります。また、発熱があれば熱性けいれんが原因となることもあります。そのため、嘔吐がすぐに「ゆさぶられっ子症候群」に結びつくものでもありません。
しかし、けいれんをする、明らかに元気がない、顔色が悪い、様子がおかしい場合は、他の病気も含めて緊急性を要するものなので早急に小児科を受診するようにしましょう。

問診などから「ゆさぶられっ子症候群」の疑いがあれば、必要に応じて頭部のCT検査や眼底検査などをおこなうこともあります。
特に網膜に出血が起こる出血性網膜分離という状態は、強く揺さぶられることによってのみ起こる確率がとても高く、眼底検査は「ゆさぶられっ子症候群」の診断にとても有効です。

ゆさぶられっ子症候群は予防できる!

布を被った赤ちゃん-写真

「ゆさぶられっ子症候群」は命が助かっても聴力障害学習障害失明脳損傷麻痺など重篤な後遺症が残る可能性もあります。
新しい命が生まれ家族が増えることはとても喜ばしいことですが、自分の思ったようにことが進まないが育児の大変なところでもあります。泣きやまなくてイライラしてつい声を荒げてしまった、強くゆさぶってしまうこともあるかもしれませんが、そのつい行ってしまったことが取り返しのつかないことになってしまうのです。

赤ちゃんが泣いているのには必ず理由があります。お腹がすいた・眠たい・オムツが濡れただけではなく、暑い・抱っこしてほしい・甘えたいなどその理由は様々です。
ついイライラしてしまったときは、別部屋に移動する・少し1人になってみるなどしてまずは落ち付いて深呼吸してみましょう。1人で悩みを抱え込まず周りの人に相談したり、身内のサポートを受けたりするとことも一つの手段です。周囲と協力し助け合って育児を行うことが「ゆさぶられっ子症候群」の予防へと繋がります。

まとめ

「ゆさぶられっ子症候群」のニュースなどを耳にしても「私には関係ない」と思っている人もいるかもしれません。
しかし「ゆさぶられっ子症候群」は子育て中の人にとっては他人事ではなくいつ起こってもおかしくないことなのです。そのためにも赤ちゃんに触れるときは十分に注意を払い、赤ちゃんはまだまだ脳の発達も身体的にも未熟だということをしっかりと理解しておくようにしましょう。