レジオネラ症は、レジオネラ属菌という細菌が原因で起こる感染症です。空調機などの冷却塔・加湿器などで繁殖した細菌が、目に見えない小さな水滴(エアロゾル)となって空気中を舞い、それを吸引することで感染します。

衛生管理が不十分な入浴施設や加湿器、冷却塔などの人工環境水が原因と考えられています。感染すると死に至るほどの重症肺炎を引き起こす恐れがあるため、日本で衛生管理対策の対象となっています。

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治療の遅れにより致死率が上昇、早めの診断を

レジオネラ症には、「レジオネラ肺炎」「ポンティアック熱」の2種類の症状があります。このうちレジオネラ肺炎は、医療機関への受診が遅れたり、有効な抗菌薬治療が行われなかったりした場合、致死率は約60~70%に増加します。適切に治療が行われれば、致死率は7%に低下するため(東京都感染症情報センターより)、早期診断・早期治療が必要です。

初期症状は、全身の倦怠感・疲労感・頭痛・食欲不振・筋肉痛などインフルエンザに似た様子がみられます。その後、3日以内に悪寒をともなって高熱を発します(東京都健康安全研究センターより)。潜伏期間は約2~10日(平均約4〜5日)(三重県感染症情報センターより)ですが、発病すると急激に重症化するケースも多いようです。この期間に入浴施設レジャー施設温泉などの公衆浴場を利用した空調機のきいた室を利用したという場合は受診の際に医師に伝えるようにしましょう。

治療は、ニューキノロン系、テトラサイクリン系、マクロライド系、リファピシンなどの抗生物質を用います。レジオネラ属菌は、マクロファージという食細胞のなかで増殖するため、細胞のなかで効果がでる抗菌薬を使います。

特に「乳幼児」と「高齢者」は感染しやすい

レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾルを吸引した人のうち、症状の重いレジオネラ肺炎を発症する人はほんの一部です。しかし、免疫力が低下している人に感染しやすいといわれており、次のような人は発生の危険性が高いです。

  • 乳幼児
  • 高齢者
  • 糖尿病を患っている人
  • 呼吸器の治療中である人
  • 喫煙の量が多い人
  • 大量にお酒を飲む人

感染発生が多く報告されている時期

欧米では、冷却塔の稼働時期である夏に発生報告が多いという特徴がありますが、国内の感染発生は冷却塔稼働時期との相関はなく、季節性はないと考えられてきました。

一方で、国立感染症研究所が公表する「IASR(病原微生物検出情報)」によると、7月に多く発生しているデータが示されており、この月は特に集団感染が発生しています。この点、国内外の研究によれば、相対湿度との関連があることが指摘されており、湿度が高くなる時期には菌が増殖・生存しやすいことが感染発生につながりやすいことが発生数を増加させていると考察されています。

家庭では「お風呂」や「加湿器」に気をつけて

加湿器-写真

レジオネラ症は、これまでホテル、病院、入浴施設、温泉、レジャー施設などで集団感染が発生しています。厚生労働省健康局は「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」を公表し、衛生管理を呼びかけています。また、各自治体も「入浴施設におけるレジオネラ症防止対策」などを配布し、防止に尽力しています。家庭内では、特にお風呂湿でエアロゾルが発生します。次のことに注意しましょう。

お風呂

  • お湯は、なるべく毎日入れ替える
  • 浴槽の清掃は、できるだけ毎日行う
  • 体の汚れを落としてから浴槽に入るようにする
  • 蛇口、シャワーヘッド、気泡ジェット器具の清掃を定期的に行う

加湿器

  • 水はこまめに取り替える
  • ノズルやタンクの洗浄を定期的に行う
  • 使用しない期間は、水を抜いてきれいにしておく

まとめ

レジオネラ症は、レジオネラ属菌を吸引したことが原因で、細菌が白血球内で増殖して起こる感染症です。重度の肺炎を起こす可能性があります。人から人へ感染することはありません。日本では、ホテル・温泉・公衆浴場などで集団感染する事故が発生し、死亡者がでています。

倦怠感・疲労感・頭痛・食欲不振から高熱を発したら、すみやかに医療機関への受診が必要です。有効な抗菌薬治療が行われない場合、死亡率は約60〜70%に上昇します。家庭内では、浴槽、シャワー器具、加湿器の定期的な清掃を心がけて予防しましょう。